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豊洲移転に新たな難問

7/15(土) 7:55配信

産経新聞

 ■小池知事「千客万来施設は必要」

 築地市場(東京都中央区)の豊洲市場(江東区)への移転問題で、小池百合子知事の豊洲移転・築地再開発の市場両立案が移転計画を揺るがしている。都が江東区に整備を約束した豊洲市場内の観光拠点の事業者が築地再開発で採算が取れない可能性があるとし、撤退を検討。小池氏は14日の定例会見で「必要な施設との認識は変わらない」と計画通り整備を進める考えを示した。豊洲市場に観光拠点「千客万来施設」を整備、運営するのは「万葉倶楽部」(神奈川県小田原市)。

 小池氏は会見で築地再開発の内容は検討中と説明。「事業者には計画通り事業を展開していただきたい。事業者に誠意をもって説明し、対応するよう市場当局に指示した」と述べた。

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 ■運営会社「総合物流センター」に困惑

 「分からないことだらけだ」。万葉倶楽部の担当者は困惑した様子で産経新聞の取材に応じた。

 ◆「撤退も含め検討」

 東京都が掲げる千客万来施設の整備目的は「築地特有のにぎわいを継承・発展させ、地域のまちづくりや活性化への貢献」。これに沿い、同社は江戸の街並みをイメージした飲食店や物販店の商業ゾーン、24時間営業の温泉・ホテルを整備し、市場本体施設隣接の立地を生かして新鮮な食材を販売する計画を立てた。

 しかし小池百合子知事の市場両立案は築地跡地を「食のテーマパーク」にする一方、豊洲を冷凍冷蔵・加工機能などを強化した「総合物流センター」と位置づけた。万葉倶楽部からみれば、千客万来と類似する施設が築地にできる可能性が出てきた。また、豊洲の「総合物流センター」化は計画の前提を変える恐れがあり、「撤退の可能性も含め検討せざるを得ない状況だ」(同社担当者)。

 ◆行政としての約束

 千客万来施設の整備は、都が江東区に約束。都幹部は「法的拘束力があるものではないが、行政としての約束であり重いものだ」。撤退した場合、都は業者を改めて募集するなどの対応を行うことになるが、都庁内では事業者を見つけるのは難航するとの見方が広がる。

 同区の山崎孝明区長は今月11日の記者会見で「同じような食のテーマパークが(築地にも)できたらどちらかがおかしくなる。そうならないよう要望していく」と述べ、築地再開発への懸念を表明。小池氏と連携する公明党のベテラン都議は「千客万来にマイナスの影響を与えない形の築地再開発の方向性を早急に示す必要がある」とし、早期の事態収拾を注文する。

 ◆顧問行政のひずみ

 市場両立案をめぐっては万葉倶楽部だけでなく、築地の業界団体からも疑問の声が上がっている。こうした状況に、都幹部は「顧問行政のひずみが形になった」と指摘する。

 小池氏は市場問題に関して、都幹部で構成される「市場のあり方戦略本部」で課題などを総点検し、自らの総合的な判断につなげるとした。しかし、ブレーンである都の顧問の助言を受け固めたとされる市場両立案について戦略本部で行政的な課題整理を行わないまま発表に踏み切った。

 都関係者によると、小池氏側が担当部局に市場両立案の資料を届けたのは発表会見の約1時間前。「築地再開発のための豊洲移転」という書きぶりで、都幹部が小池氏に「『豊洲が中央卸売市場』と明言しなければ移転話がつぶれる」と進言したとされる。

 小池氏は発表会見や築地の業界団体代表との面会で、「豊洲が中央卸売市場」と説明。一方で一部の顧問はインターネット上で「豊洲は築地市場を再整備するための種地」などのメッセージを発信しており、都幹部はこう漏らす。「知事の胸の内が分からない」

最終更新:7/15(土) 8:17
産経新聞