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自家製パンも味わえる2階の隠れ家 京都編

7/15(土) 11:10配信

朝日新聞デジタル

【ブックカフェ】

 「自分の部屋の延長線上のような、つかず離れずの距離感が心地いい」

 地下鉄烏丸線・烏丸御池駅から歩7分の静かなエリアに位置し、さらにはビルの2階という少しわかりにくい場所にある「cafe kocsi」を一言で表すとこんな感じだろうか。2000年11月にオープンしたこの店は、当時のたたずまいからそう大きく変わらないまま、同じ場所に在り続けている。

【写真】京都の隠れ家ブックカフェ

 店を営むのはパン職人の坪倉直人さん(41)と妻の美穂さん(42)。東京で出会って結婚した2人が直人さんの故郷の京都で焼き立てパンを出すカフェを作ろうと思ったのは20代半ば頃のこと。ようやく見つけた物件は、カフェ向きとは思えない不便なロケーション。しかし、坪倉さん夫妻は大きな窓のある空間に心惹(ひ)かれた。

 「周りにはカフェを2階でやるなんて、とものすごく反対されたんですけど、私たちは楽観的に始めたんですよね」(美穂さん)

 友人に手伝ってもらいながら床板を張り、壁に色を塗り、アーティストの友人に絵を描いてもらった。床板の隙間が今も少し空いたままなのも、「その時に自分たちのできることをした結果がこれ」ということで、それもまた店の味わいとなっている。

 「kocsi(コチ)」という不思議な響きの名前はハンガリー語。持っていたCDに入っていた曲のタイトルで、何の意味だか知らないまま、音の響きが気に入って店名にしたという。オープン1年後、友人がハンガリー人の留学生を連れて店に来た時に、それが初めて「馬車、車輪」という意味だということを知った。

 「今でこそ、“みんなが集まるような場所にしたいから”とそれらしい名付けの理由を言っていますが、実は意味を知らなかったんです。これが“悪霊”とか変な意味じゃなくて本当によかった(笑)」

 店の中央に、空間を仕切るように大きな本棚があるのが印象的だが、オープン当初から本を並べていたわけではない。

 直人さんが31歳になった時のこと、「パン作りの引き出しがなくなった」と感じるようになり、1年間フランスにパン修行に行くことを決意した。その間、美穂さんが切り盛りできるように、週末のみの営業にして、メニューと席数を絞りこんだ。

 「その代わりに突貫で本棚を作って、お客さんに本を読んでもらえるようにしたのがはじまりなんです」

 大半は美穂さんの蔵書で、約2000冊の本は小説を中心に、アートや建築、児童文学、漫画などと多彩な品ぞろえ。ただ、私物だけだけだと内容が偏ると思い、友人にも声をかけて本を借りることにした。その人の本棚からそのまま本を抜き取ったようにブロックごとに並べ、その横には持ち主のコメントを添えている。さまざまなコメントを眺めながら本を探すのも楽しい。

 3年前には店の前に面した姉小路通りを、西に10分ほど歩いた場所に、「Annee(アネ)」という姉妹店もオープン。パンを焼く機能をこちらに一元化し、直人さんが店を切り盛りしている。パンを買いに来る人や、軽食を味わう人でにぎわっている。「cafe kocsi」のショーケースに並ぶパンや、店内で供されるパンは「Annee」で作られているものだ。

 気がつけばオープンから17年が過ぎようとしている。居心地の良さやパンのおいしさが口コミで広がり、客足も増えた。一人でゆっくり時間を過ごす人もいれば、フードメニューを目当てに来る人もいる。また、夜になると、仕事帰りにコーヒーや軽く酒を飲んでから家路に着く人もいる。まさに自分の部屋のように思い思い過ごせるところが人々を引き付けるのだろう。

 「店にいない時でも、この店のことを思ってくれている人がいるとうれしいですね。もしかしたらここは今のカフェのスタイルより古くなってしまったかもしれないけど、京都に来た時にたまたま寄ってくれた人や、以前京都に住んでいて通ってくれていた人が『店はまだあるのかな』と来てくれた時に、変わらずに続けていたいと思うんです」

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■cafe kosci
京都市中京区福長町123 黄瀬ビル2F

(文 吉川明子 写真 太田未来子/朝日新聞デジタル「&w」)

朝日新聞社