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本場NYの上をいく、新食感ベーグル/ブラフベーカリー

7/15(土) 11:50配信

朝日新聞デジタル

ブラフベーカリー 日本大通り店(神奈川県)

 横浜の名店ブラフベーカリーの最新店舗「日本大通り店」に歓喜感涙した。あこがれのNYスタイル。好きなベーグルと、冷蔵ケースの中の好きなスプレッドを選び、自由に組み合わせる。まさにNYのベーグルショップやデリスタンドがよりスタイリッシュに再現されている。

【画像】食感の魔術師によるベーグル

 食感の魔術師、栄徳剛シェフ。彼の手にかかれば、ありそうでなかった、なさそうでやっぱりなかった、そんな不思議な食感のパンができあがる。

 ベーグルの新食感。そのすごさを知りたいのなら持つだけでいい。指先で踊る異次元のもわんもわんぶり。

 噛(か)めばもっと驚く。低反発枕のような食感の生地に、顎(あご)の力は吸い取られる。上質なソファにもたれかかるように、見事なクッションでもわーんと沈んでいき、ぷりっとちぎれる。そしてまた、もわーんと逆回転して元の高さへと復元する。

 ちぎれた生地は見事にほどけつつ、とろとろと溶け、濃いめの麦の風味を滲(にじ)ませていく。やたら硬くて噛み疲れるものという、日本人のベーグルの常識は木っ端みじんに粉砕される。濃厚な麦をかためたおにぎりが口の中でほどけてぱっと飛び散っては液体に変わっていくようだ。実は本場のベーグルは意外にもやわらかくこんな感覚なのだ。でありつつも、口溶けのスピードにおいては本場すら上回ってしまうために、むしろひじょうに新しく感じるという、ハイパーリアリズム的ベーグルにまで突き抜けている。

 従来、日本でのNYベーグルの再現をはばんでいたのは、小麦粉の粗さのちがい。日本にある、あらゆる材料を熟知した栄徳剛シェフはとんでもない裏技を使う。

「アメリカの粉は、日本の粉より粒度が粗い。その感じに近かったのが、ピザ屋さんが使うイタリア製の粉。もうひとつ酵素(生地の性質を改良できる)の入った、フランスで挽(ひ)いた粉。消えていく感じとねちっとした感じを両方再現できるし、風味も乗っかるようになりました」

 ざくっと割れてとろとろ溶けて、濃厚な麦の風味がミルキーに広がる。だから、ベーグルにはクリームチーズが最高の相性。オニオンフェンネルパルメザンベーグルに、クリームチーズにサーモンとディルを混ぜたロックススプレッドを合わせてみた。麦とクリームチーズのとろとろランデブー。サーモンの癖はチーズに吸収され旨味と風味だけが広がる。ときどきディルやフェンネルを噛んで香りの爆発が起こる。

 もうひとつ衝撃のスプレッドが、抹茶と豆腐を混ぜたマッチャトーフ。これには糖蜜入りの黒いベーグル「プンパニッケル」を合わせた。プンパベーグルのキャラメルかココアかという風味と、抹茶の青い風味の超絶相性。余韻の中でほろ苦さと甘さが、無限に往復しながら響きあっていた。

 新店では、デリ的な要素も充実。ランチボックスには、注文後に作られるあつあつのホットサンドに、赤キャベツのマリネとキヌアのサラダが付く。グリルドマッシュルームとゴーダのホットサンドは、サワードーブレッド(いわゆるカンパーニュ)がプレスされ、表面ぱりぱり中ふにゃり。中から舞茸(まいたけ)やしめじたちが現れ、つるりくにゃりと身をよじらせながらちぎれていく。焼かれた耳の濃厚な香ばしさ、天然酵母の風味と、きのこたちの山っぽい香りが響きあうのも悶絶級(もんぜつきゅう)である。

 ランチボックスやベーグルを食べるのに最高の場所がある。歩いてわずか2、3分の山下公園。海、船、おいしいサンド。横浜の新名所が誕生した。

■ブラフベーカリー 日本大通り店
神奈川県横浜市中区本町1-5 西田ビル 1F
045-662-0181
11:00~19:00(土曜・日曜・祝日休み)

朝日新聞社