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ラベンダーからシックなグレーに 特集・HACのサーブ340B新シート換装作業(後編)

7/16(日) 12:57配信

Aviation Wire

 1998年3月の就航以来、北の空で多くの人を乗せてきたラベンダー色のシートが、ひっそりと姿を消した。北海道エアシステム(HAC、NTH/JL)は、足もとが広くなった革製新シートに換装したサーブ340B型機(1クラス36席)の1機目(登録番号JA01HC)を7月9日に就航させた。12日に全3機が新シートになり、機内は少しシックな装いになった。

【新シートの取り付けが進むHACのサーブ340B初号機】

◆98年3月就航

 HACは、旧日本エアシステム(JAS、現JAL)と北海道による第3セクターとして、1997年9月30日設立。当時の持ち株比率はJASが51%、北海道が49%で、現在は日本航空(JAL/JL、9201)が57.2%、北海道が19.5%、札幌市が13.5%となり、2016年10月30日からはJAL便名で運航している。

 最初の路線は、1998年3月28日に開設した札幌(新千歳)-函館線。シートは就航以来、北海道をイメージしたラベンダー色のものだったが、初めて換装された。現在は、札幌(丘珠)-函館線を1日6往復、札幌(丘珠)-釧路線を同4往復、札幌(丘珠)-三沢線と札幌(丘珠)-利尻線、函館ー奥尻線をそれぞれ同1往復運航しており、季節運航の函館ー三沢線が1日1往復となっている。

 3機あるサーブのうち、今回新シートとなった初号機JA01HCは、1997年12月22日に受領。2号機のJA02HCは1998年5月7日、3号機のJA03HCは1999年4月27日に引き渡された。現在の塗装は初号機のみ旧HACカラーで、残り2機は鶴丸塗装となっている。

◆整備性が高い新シート

 従来のラベンダーシートは、B/Eエアロスペース製。シートピッチは30インチ(76.2センチ)で、シート幅は18インチ(45.7センチ)、高さは45.07インチ(114.5センチ)だった。

 一方の新シートは英アクロ社製で、これまで下部にあったシートポケットを上部に設置することで、ひざ元のスペースを確保。座席数は従来と同じ36席で、シートピッチも30インチのままだが、薄型シートになったことで足もとが約6センチ広くなった。革張りのシートカラーはダークグレーで、フライトが短時間であることから、リクライニングしない仕様になっている。シート幅は17インチ(43.2センチ)、高さは44.37インチ(112.7センチ)となる。

 通常新しいシートに載せ替えた場合、国土交通省航空局(JCAB)からSTC(Supplemental Type Certificate、追加型式設計承認)を取得する必要があるが、今回のシートは取得不要で、換装するだけで運航に復帰できる。

 HACのオペレーション本部の井上勝見整備部長によると、ラベンダーシートは特注で、HACが設立された際、北海道から強い要望があったという。北海道らしさはあるものの、「古くなっていたので、早く変えたかった」と話す。予備部品が手に入りにくくなるなど、整備面でも支障が出始めていたという。

 「アクロのシートが入るのは日本では初めて。シートの色は赤っぽいものや青みがかったものなど、いくつかあったが、JALのイメージを損なわないグレーを選んだ」と話す。JALは国内線新仕様機「JAL SKY NEXT(JALスカイネクスト)」を、2014年5月28日に就航させており、その後グループで導入する機材は、スカイネクストに近い機内仕様にしている。

 座り心地だけではなく、整備性も欠航を防ぐ上で重要な要素だ。「構造が比較的シンプルになっており、整備性が高い。従来はシートポケットが破けてくると縫っていたが、そうしたこともなくなる」と話す。「リクライニング機構も、フライト時間が短い割に装備してしまうと、故障した際にその席が利用できなくなるなど、かえってお客様に不便をかけてしまう」と、バランスを考えて決めたという。

 担当者がスウェーデンに実物を見に行った際は、雑誌類も持ち込んだ。「JALの機内誌『スカイワード』が入るかや、夏場に常備しているうちわが入るかも検証した」と話し、うちわがシートポケットに入るかどうかも重要だったという。

◆8人のJAC整備士が作業

 初号機の新シート換装作業は、7月4日から6日まで3日間かけて行われた。HACは現在、同じJALグループでサーブを運航する、鹿児島の日本エアコミューター(JAC/JC)に整備を委託しており、今回はJACの整備士8人がHACの拠点である札幌の丘珠空港で、作業にあたった。通常の運航に関する整備はHACの整備士が、換装作業はJACの整備士が担当し、JACのサーブが1機応援で入れることで、欠航を出さずに換装作業を終えることができた。

 作業中はシートを外すと機体のバランスが崩れることから、4日は胴体をジャッキアップして固定し、換装作業の準備が行われた。

 5日早朝から行われた作業では、機内で固定しているレールからラベンダーシートが外され、午前8時25分から45分までの20分間で、3人の整備士の手で機外にすべて運び出された。

 その後は、新シート搬入前の清掃や準備作業が行われ、午後0時30分ごろから搬入がスタート。格納庫の一角に並べられた新シートは、整備士により最後列12列目の3人掛け席から運び込まれ、2人掛けのシートは整備士2人がかり、1人掛けは1人で運び、30分ほどで搬入を終えた。

 シート換装作業中は、燃料をすべて抜いているため、エンジンやAPU(補助動力装置)が使えない。このため、機内の照明は外部電源を使った3つの照明器具のみ。整備士が頭部に付けたライトで手元を照らしながら、冷房が効かない暑い機内でシートを取付用レールへ固定する作業が粛々と行われた。

 換装作業が終わると、ヘッドレストにはJALの国内線新仕様機スカイネクストと同じく、ワインレッドのカバーが付けられた。

 9日に復帰した1機目に続き、2機目(JA02HC)が11日、3機目(JA03HC)が12日に運航を開始し、全機が新シートになった。

 写真特集の後編では、新シートの取り付け作業を写真に収めた。

Tadayuki YOSHIKAWA

最終更新:7/18(火) 19:00
Aviation Wire