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少女マンガ原作映画観てきたが……。合わなかった作品でも観どころを話せるのがアーティストの恐るべきところ?

7/16(日) 18:08配信

M-ON!Press(エムオンプレス)

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は、少女マンガ原作の映画化作品『兄に愛されすぎて困ってます』。『アオハライド』以降、少女マンガ原作ものを真摯にチェックしている小出部長ですが、本作は様子がちょっとおかしいです……。

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活動第36回[後編]『兄に愛されすぎて困ってます』

参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー)、世武裕子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

映画部部員が感想に困っている[前編]はこちらから

■原作は第1話で、兄妹じゃないってことを本人たちが知っているんですよ

レイジ 小出部長が「いろいろ考えすぎ」たことって、なんですか?

小出 本当に「いろいろ」(笑)。血は繋がってはいないとはいえ、それを知らない妹からしたら、お兄ちゃんに対して抱えている気持ちっていうのはタブー的な愛情じゃないですか。それって倫理観としてもそうだけど、まず動物的に、あるいは遺伝子情報的にどういうことでこういう感情になるんだろうなあ? って。妹がいる自分からすると、本当にわからない。

だから僕、せとか(土屋太鳳)が後ろから裸のお兄ちゃんに抱きしめられたときの、あの目を見開いた表情ね、これは最初恐怖だなと思ったのよ(笑)。普通に。

レイジ それこそ「困ってます」ってことですよね?

小出 そうそう。恐怖で硬直して動けなくなって……みたいなことかと思ったら、実はあそこのシーンって「お兄ちゃんにドキドキしてた」ってことらしく……マジかよ!? と(笑)。

映画の前日譚にあたるテレビドラマ版(映画と同じスタッフ・キャストで先に放送されたもの)で、兄が妹と血を繋がっていると知る前から、そんな感じの場面がちらほらあるんだけど、ふたりとも生理的に拒絶してないわけよ。ということは、好意的に解釈すればだよ。「この兄妹って血が繋がってないんだろうな」っていうことを、演出で観客に察知させようとしていたのかな? と……。

福岡 すごい、部長、頑張ってる!(笑)

小出 あっこがさっき「違和感」のこと言ってたじゃん。それって演出レベルで、表面的な出来事とは違う含みを持たせているせいかな? とも思ったんだよね。

──それは大変面白い指摘ですね。

小出 あと、この映画、中盤からは、妹がいつお兄ちゃんと血が繋がっていないことを知るのかっていうドラマに変わるじゃないですか。お兄ちゃんに恋愛感情を抱いてしまったことを「いけない、いけない、そうじゃない」って思いながら……。

で、この構成っていうのは、脚本の方(松田裕子)が随分頑張ったなと。どうしてかというと、原作は第1話の5~6ページ目でもう、兄妹じゃないってことを本人たちが知ってるっていうくだりがあるんですよ。

世武 えっ? せとかも?

小出 両方。最初からお互いに、血の繋がっていない兄妹ということを自覚しながらの話なの、原作は。まさかの。

福岡 ただの恋人……好き同士?

小出 そう。まぁ、せとかは兄妹であろうとしようとはするんだけど、兄がとにかく女としてしか見てないし(笑)、妹もそれにときめきまくってて。お風呂のシーン以上に踏み込む場面も多いし、家でも外でもイチャイチャしてるんで、「兄妹」っていうプレイを見てるような感じなんですよ。

だけどそれの映画化オーダーを受けて、血が繋がっていないことと、「家族じゃないかもしれないこと」に物語を見出して、全5話分のテレビドラマ版と、今回の映画版をちゃんと組み立てた監督と脚本の方は相当健闘したんじゃないかなあと思うんですよね。

■印象的だったのは、土屋太凰の自転車ガチこぎ

福岡 今の話を聞いていて思い出したけど、韓流ドラマってこういう感じやわ。例えば、男だと思ってたクラスメイトが実は女だった、みたいな設定。めっちゃあるんだよ。

小出 多いよね、倒錯的な設定のラブコメディ。

福岡 でも面白いものもあるのよ。だから、ちょっとそっち寄りのノリを狙ってるのかなあ。

──ちなみに小出部長は『アオハライド』(原作・咲坂伊緒/監督・三木孝浩)以降、少女マンガ原作の映画が大好きなんですよね。

小出 そう(笑)。あえて観てるんですよ。「ひどいな~……」っていうのが多かったりしますけど、その中では今回の映画ってきっちり作られている。シナリオとしても、画作りも。ロケーションもいいし。

レイジ 少女マンガ原作の映画といえば、俺、『俺物語!!』は好きでした。

世武 あれ、この『兄に~』と同じ監督じゃないの?

小出 そうだよ、同じ監督。

福岡 (パンフレットを読みながら)河合勇人監督だって。

小出 前作は『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(広瀬すず主演)だよね。あと『鈴木先生』シリーズも。

福岡 太凰ちゃんが出てるやつ。そうか、その繋がりなんだ。

──実はテレビ界と映画界を往来する腕のある職人監督さんなんですよ。

小出 組み立て方として巧いなあと思うところはいっぱいありましたよね。

レイジ NON STYLEの井上(裕介)さんのくだりだったり。

小出 そうそう(笑)。教育実習生として来ている、「イケメン風セクシーブサイク」とか言われている英語の先生役。

福岡 あの笑いのセンス、なんか懐かしい感じがする(笑)。

小出 NON STYLEの井上さん、ストーリー上の意味的に実はすごく重要な役でしょ。ただ笑わせるための噛ませ犬というか、コメディリリーフとして出されているのかなと思ったら、気の利いた伏線を張っている。せとかに恋の天啓を与えるキーパーソンなんですよ。

世武 そうだね。

小出 あの先生さんがいなかったら、最後せとかは踏ん切りを付けられなかったかもしれない。あと印象的だったシーンは、土屋太凰の必要以上の自転車ガチこぎ(笑)。

世武 本当に運動神経良さそうなこぎ方してた。

福岡 うん、あのシーンがいちばん光ってた(笑)。

──あれは監督の撮りたかった感じがすごい出てますね。この子の身体性を出したい! みたいな。

小出 良い「アクション」シーンだった(笑)。

世武 確かにね。せとかちゃんはかわいいんだから、付き合うならお兄ちゃんとか周りのイケメンより、あの先生のほうが絶対いいよ。

レイジ 賛成(笑)。

小出 井上さんの壁ドンのカット割り、最高だったよね。ダン・ダダダダダダン!何カメで撮ったんだよっていう。

レイジ あと、しゃべるときの「あン」っていう(笑)。

小出 あえぎ声がね(笑)。

レイジ 毎回同じサンプルを使っていて。

小出 先生の出てくるシーンは全部最高でした。NON STYLE井上さんの株がすごく上がる映画だったね(笑)。

TEXT BY 森 直人(映画評論家・ライター)

観賞中、何度か心が折れそうになっていたかもしれない……。感想会の場となる喫茶店へ向かう4人はもやもやした想いを早く話し合いたいがゆえに、その足取りはいつもより早い。

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