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【甲信越ある記】安藤家住宅(南アルプス市)築300年、武田家の遺風が残る邸宅

7/16(日) 7:55配信

産経新聞

 畑や住宅に囲まれたのどかな田園地帯に、武家屋敷のような旧名主(なぬし)の家があると聞き、車を走らせた。細い道に入り50メートルほど行くと、左手に塀に囲まれた大きな屋敷が見える。

 江戸時代に建てられた「安藤家住宅」(南アルプス市西南湖)だ。農家の名主の家だが、敷地内に茶室や庭園があるので、武家屋敷の雰囲気がする。

 地元の西南湖自治会の会長で同家の歴史に詳しい今沢忠文さん(80)が、教えてくれた。

 「安藤家の祖先は武田家の家臣だった小尾家。甲府が徳川家の直轄地となり、約400年前に韮崎辺りからこの近くに移り住んだ。そのとき、徳川家に過去を悟られないように、妻の安藤姓を名乗ったと伝承されています」

 宝永4(1707)年の宝永地震で液状化などの被害があり、安藤家は翌5年、住宅を新築して転居したという。安藤家住宅は、甲斐国の名主の家の様式を伝えるものとして、昭和51年に敷地全体が国の重要文化財に指定されている。

 長屋門をくぐると左手に主屋がある。玄関は武家屋敷にみられる式台付玄関。主屋から玄関部分が突き出ている造りのものだ。

 安藤家住宅運営委員会委員で西南湖自治会副会長の安藤久さん(70)が解説する。

 「祖先が武田家の家臣だったので武家屋敷の雰囲気を取り入れたかったのではないか。室内の梁(はり)や柱を見てください。多くの古民家は大きさがふぞろいですが、安藤家ではきっちり製材されたものがほとんどで、上品な雰囲気がします」

 築後約300年。現在まで一度も火災に遭うことがないのも珍しい。

 江戸時代後期の経世家、二宮尊徳の教えを伝える報徳社という団体が全国に散らばる。今沢会長は「県内で唯一」という地域の報徳社の社長でもある。「安藤家は小作を自作農にするため土地を提供するなど、農民に好かれていた。報徳社の教えで勤勉な農家が多く、不満をもって放火するような人がいなかったからではないでしょうか」と推測する。

 主屋の東側には、樹齢350年を越えるクロマツ、茶室、コイが泳ぐ池がある。全国でも夏はとりわけ暑い甲府盆地に建つ安藤家住宅。ここでしばしの涼をとるのも風流だ。

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 ■安藤家住宅 南アルプス市西南湖4302。(電)055・284・4448。中部横断自動車道南アルプスインターチェンジから車で約10分、山梨交通バス古市場バス停から徒歩30分。休館は火曜(祝日は除く)と祝日の翌日(日曜、休日は除く)。開館時間は午前9時~午後4時半(入館は4時まで)。大人300円、小中高生100円。

最終更新:7/16(日) 7:55
産経新聞