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オリックスとイチローとトラックマン

7/16(日) 11:00配信

デイリースポーツ

 ナゴヤドームで行われたオールスター第1戦でも注目されたように、球界で話題の弾道測定器「トラックマン」。オリックスも昨年から京セラドームなどに設置している。活用法について取材を進めていくとなぜかイチロー(マーリンズ)の名前が現れた。イチローがチームに在籍した20年前には存在しなかったはずのハイテク機器とのまさかの一致を紹介する。

 弾道測定器「トラックマン」はパではロッテをのぞく5球団すべてで導入され、阪神も来季からの導入を検討しているとか。球界で流行するハイテク機器は走攻守あらゆる場面で可能だと聞いた。

 もともとが弾道ミサイル迎撃用の「パトリオットミサイル」開発で生まれたシステムを応用した装置。投球や打球の球速だけでなく、回転数や距離、角度など精度の高い数値が得られる。

 オリックスでは昨年から設置。昨季のデータを基に分析を進めている。この装置により、例えば打球の速度も分かるようになった。日本人ではT-岡田、中島に次いで若月が3位という意外な結果も得られた。

 今村チーフスコアラーに活用法を聞いてみた。

 「まだ手探りの状態です。ただ、初対戦の投手でもどこかで投げていればその情報を引き出せる。そこは大きいですね」

 どこかでとは「トラックマン」が設置された球場でという意味だ。そこでプレーしたデータは球団にかかわらずすべて共有される。つまり対戦がなくても、トラックマンのある球場で投げていれば回転数や変化球の角度などのデータを入手できるという。

 便利な世の中だ。かつてはスコアラーの目やビデオが頼りだった。スコアラーを長年務めた島袋査定担当が懐かしむ。

 「打球を一つ一つ判定してたんです。ちょい詰まりとか真芯とか。それを見たイチローが猛烈に抗議してきて。結局、判定しないことになったんです」

 イチローの主張はこうだ。「わざと詰まらせてその方向に打つことがある。芯かどうかは意味がない」。長い議論の末、スコアラー陣が折れた。だから、イチロー在籍期間のそのデータはない。

 もう一つと島袋氏が思い出を披露してくれた。

 「イチローがスコアラー室に相手投手のビデオを見にくることはなかった。もう頭に入ってるんでしょうね。その代わり、その日の球審のビデオを見せてと言ってきた。“やっぱりここストライク取るよね”と確認してました」

 トラックマンに話題を戻す。今村スコアラーは試行錯誤を繰り返す中、一つの活用法を教えてくれた。

 「審判のクセですね。トラックマンなら正確に出ますから。どこをストライク取るのか。これは選手にも伝えています」

 20年前にイチローが独自で行っていたデータ収集と現代のハイテク機器による数値化という思わぬ一致。イチローのすごさに思わずうならされた。(デイリースポーツ・達野淳司)