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5基が戦列復帰、原発再稼働の夏 新「安全神話」は作られるか

7/16(日) 8:10配信

日刊工業新聞電子版

■電気料金引き下げ、それだけで終わらせてはならない

 既存の原子力発電所が再稼働で生む利益を、安全対策の徹底と再生可能エネルギーなどの新技術開発に振り向けたい。

 本格的な猛暑を前に、関西電力高浜原発3・4号機が再稼働し、電力供給不足の懸念は和らいだ。九州電力川内原発1・2号機と四国電力伊方原発3号機と合わせ、5基の原発が厳しい新基準に適合して戦列に復帰したことになる。

 九電玄海原発3・4号機などもこれに続く見通しだ。安全対策が着実に進み、原発による電力供給が正常化しつつあることは産業界にとって望ましい。

 関電は8月から、再稼働に伴う燃料費の削減分などを原資に電気料金を引き下げる。競合する電力事業者には脅威だろうが、発電単価そのものの低減は家計にとっても、また業務用電力の需要家にとっても大いに歓迎すべきことだ。

 ただ再稼働のメリットを、電気料金引き下げだけで終わらせてはいけない。東京電力福島第一原発の過酷事故では、依然として多くの住民が帰還を果たせないばかりでなく、事故の収束もゴールが見えていない。旧来の「安全神話」に陥ることなく、事故防止と住民の避難と保護のための継続的な投資を惜しんではならない。

 同時に再生可能エネルギーの開発投資や、効率的なエネルギー使用のための技術開発も急がれる。地球規模の気候変動を抑制するためには、脱・原発より優先して化石燃料の消費の大幅削減が必要だ。二酸化炭素の排出が極めて少ない原発の活用は将来も欠かせない。現在は封印されている原発の新設・置き換えの議論も、遠からず再開しなければなるまい。

 電力自由化が進む中で、原発を持つ既存電力各社だけにこうした責任を押しつけることは難しい。政府には自由化による事業者間の競争と並行して、原発という長期・大型プロジェクトを安全を確保しつつ継続する難しいかじ取りが求められる。

 中期的な供給力確保と電気料金引き下げも重要だが、長期的な視点での安全対策と新技術開発を怠ってはならない。