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《高校野球群馬大会・白球の詩》4番らしく 貫いたフルスイング 桐生西・大塚龍平内野手

7/16(日) 6:03配信

上毛新聞

 強豪の健大高崎を相手に、4番打者らしく堂々と対峙(たいじ)した。4度巡ってきた打席は、いずれも終始フルスイング。「トラブルを起こし、迷惑を掛けたチームの仲間に恩返ししたい」との一心だった。

◎トラブル乗り越え復帰

 昨夏の大会後、新チームへの移行とともに4番を任された。打撃の柱に選ばれたことがうれしく、高田繁監督から「お前は足が遅いんだから、長打か三振でいい」と言われ、楽な気持ちで打席に臨んだ。昨秋、今春ともチームは初戦敗退と結果を残せなかったが、野球が毎日の楽しみだった。

 ところが、夏の大会が近づくにつれ、心境が変わってきた。重圧がのしかかり、試合でも練習でも打球が思うように飛ばなくなった。「自分自身が腹立たしい」と、グラウンドで声を出さなくなっていた。

 6月中旬のある日。心配した仲間が「プレーに集中しろ」と声を掛けたが、気持ちを整理できず反発し、やる気のない、ふてくされた態度を取った。それがチーム全体の反感を買い「グラウンドに立つな。出て行け」と言われた。用具置き場に閉じこもり、一人考え込んだ。「どうしてこうなってしまったのか」

 翌日から数日間、練習に打ち込む仲間を背に、グラウンド外の草をむしり続けた。「もう野球なんてやめてやる」と思いかけた時、仲間が周りに集まった。3年生全員で話し合い、張田宏樹主将が「お前がいないと勝てない。気持ちを入れ替えるなら戻ってこい」と声を掛けた。

 「こんな俺をもう一度信じて、チャンスをくれた。ありがとう。申し訳ない」。さまざまな思いを胸にグラウンドに戻った。

 春の初戦敗退後、チーム全体はぎくしゃくしていた。部内の決まりを守らない部員がいても黙認してしまう。よどんだ雰囲気に張田らは危機感を募らせていた。「トラブルをきっかけに、ようやく本音で話し合えた。チーム全体のきずなが強まった」と振り返る。

 復帰後、打撃は調子を取り戻した。今大会初戦の沼田戦は「仲間のために」と気持ちを集中させ、3安打2打点の活躍。健大高崎にも「負ける気はしない」と強気で臨んだ。自身のバットから快音は響かなかったが、迷いのないスイングはチームを鼓舞した。

 試合終了のサイレンが響き渡ると、むせび泣く仲間たちの中で唇をかみ、胸を張った。「気持ちでは負けなかったが、自分の技術が足りなかった。このチームで野球をできて良かった」と声を絞り出した。

 肩を抱き合う選手たちを見て、高田監督は「気持ちのずれを乗り越え、やっとスタートラインに立てたところだった。もう少し野球をやらせてあげたかった」と寂しそうに話した。(斎藤洋一)

最終更新:7/16(日) 6:03
上毛新聞