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米アンブリー買収はまだ第一歩 コニカミノルタの遺伝子戦略、攻めのM&A「やめない」

7/16(日) 13:00配信

日刊工業新聞電子版

■遺伝子診断、個別化医療で攻勢

 コニカミノルタは産業革新機構と共同で902億円を投じ、10月に遺伝子検査でがんを診断する米アンブリー・ジェネティクスを買収する。同社として過去最大の買収額となる。従来型の複合機ビジネスの収益性が落ちる中、同社はM&Aをテコに事業転換を加速しており、医療分野を重視している。アンブリーの取得は、ニーズが拡大している個別化医療への攻めの一手だ。

 コニカミノルタの米ヘルスケア販売子会社は、産業革新機構と共同で特別目的会社を設立し、同社を通じてアンブリーを買収する。コニカミノルタグループが6割、産業革新機構が4割を出資する。

 アンブリーは1999年に設立され、遺伝子診断企業の中では歴史が長い。カリフォルニア州に最先端の研究所を持ち、100万件以上の遺伝子診断を実施してきた。アンブリーの技術とノウハウを活用し、コニカミノルタは日本などで、まず保険対象外で遺伝子診断を始めるほか、製薬会社への創薬支援を行う。遺伝子診断などによって、その人の病気の特徴を知ることは、最適な治療法を選択する「個別化医療」の第一歩だ。

 また、コニカミノルタの持つたんぱく質高感度定量検出技術(HSTT)とのシナジー効果を引き出す。蛍光ナノ粒子を使ってがん細胞に発現する特定のたんぱく質の分布や量を分析することで、遺伝子診断と同様にがん患者の特徴がわかる。

 日本では18年度に個人向け遺伝子診断サービスを開始する予定で、国内に同サービス用のラボを設置する。個別化医療に必要なM&Aは今後も継続する。同日都内で会見した山名昌衛コニカミノルタ社長は、「個別化医療を必ずやり遂げる。治療や予防を変えていきたい」と意気込んだ。

 5年後にはアンブリーを母体としたバイオヘルス事業の売上高を現在のアンブリーの4倍の1000億円に引き上げ、営業利益率は現在と同等の20%を維持する。

■創薬の成功確率引き上げる

 患者の個人差に合わせて最適な医療を提供する「個別化医療」が脚光を浴びている。患者に有効な薬や治療法をあらかじめ判断して提供することで、高い治療効果が得られ、副作用の低減や医療費の抑制効果も期待できる。そのために判断の材料となるのが、個人の情報が書き込まれた遺伝子情報だ。

 個別化医療の一つとして、特定のがん細胞の遺伝子変異やたんぱく質の発現などを分子レベルでとらえて、がん細胞に選択的に作用する分子標的薬が次々と開発されている。従来、同じ病気や同じ臓器に同じ治療をするという標準化医療と比べ、患者一人ひとりに最適な治療や予防を選択でき、高い治療効果や副作用の低減といった生活の質(QOL)の向上が期待できる。

 患者だけではない。製薬企業にとっても優れたがん治療薬の開発を進める上で、新薬の認可の確率を高める。遺伝子診断とたんぱく質の解析により、薬の作用の仕組みの解明することで、薬を市場に出すまでの期間を短縮できる。「創薬の成功の確率を上げることが課題解決にもつながる」(山名社長)。

 個別化医療を巡っては、医療機器各社の取り組みが盛んだ。シスメックスは5月、遺伝子検査に用いる診断や試薬の開発を手がける英オックスフォード・ジーン・テクノロジー(OGT)の買収を発表。OGTが持つ細胞遺伝学検査領域の事業ノウハウや研究開発力を取り込む方針だ。

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