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<世界遺産>沖ノ島の一括登録 文化庁長官の水彩画が威力

7/17(月) 9:30配信

毎日新聞

 ◇一体性を各国に訴え、勧告を覆す

 宮田亮平文化庁長官が毎日新聞のインタビューに応じ、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録された福岡県の古代遺跡「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」について、自ら水彩画を描いて8件の構成資産の一体性を各国に訴え、諮問機関が勧告で除外を求めた4件を含む一括登録にこぎ着けた経緯を明かした。外国人客を呼び込むため多言語で宝物を紹介するなど、観光資源としての整備を急ぐ考えも示した。【伊澤拓也】

 東京芸術大学長も務めた金工作家の宮田氏が水彩画を描いたのは、6月下旬。世界遺産の登録を審議する世界遺産委が開かれるポーランドへ出発する直前だった。各国のユネスコ大使が事前に来日して長官室で話した際、九州本土と2島に分かれる構成資産のつながりや、島を巡る信仰の意味が言葉だけでは伝わらないと感じた。「芸術には言葉はいらない」。絵で表現することを思いついた。

 自宅に絵の具はあるが、画用紙がない。仕事を終えた後、10円玉を持って深夜のコンビニへ。コピー機の読み取り台に何も置かずスタートボタンを押して出したA3判の紙に、夜ごと絵筆を握って3日間で描き上げた。

 本土から大島、沖ノ島を望む構図にし、玄界灘の水色や木々の緑色を繊細なタッチで描写した。荒波は黒色を使い、無事になし遂げるためには「祈り」が必要だった古代の航海の厳しさを表現した。

 世界遺産委当日、会場入り口で原画を見せ、資産名をアルファベットで記したカラーコピーを委員国大使に手渡した。激励してくれる人もいて手応えを感じた。ただ、審議では一括登録に異論も出て、各国の意見に一喜一憂した。一括登録が決まった瞬間を「ハンマーのカンカンという音がうれしかった」と笑顔で振り返った。

 島そのものが神体とされ、神職以外は原則上陸できない沖ノ島を、観光資源としてどうアピールするか。「例えば本土や大島に沖ノ島を再現する完璧な複製品を置けば、本物以上の面白さを出せる」。宮田氏は宗像大社辺津(へつ)宮で公開されている約8万点の財宝について「沖ノ島は日本と大陸の交流を示す遺跡だから、海外の人にこそ知ってもらいたい」と強調した。

最終更新:7/17(月) 9:30
毎日新聞