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<日本財団>聴覚障害者向け電話リレーサービスをインフラに

7/17(月) 10:00配信

毎日新聞

 聴覚障害者に代わってオペレーターが電話をかける日本財団の「電話リレーサービス」サイトが7月に一新され、使いやすくなった。日本財団では「聴覚障害者支援にとどまらず、高齢社会を見据えたインフラとして電話リレーサービスを位置づけてほしい」と訴えている。【米田堅持】

【文字による電話リレーサービスのイメージ】

 ◇増え続けるニーズ

 電話リレーサービスとは、電話をかけたい聴覚障害者が、テレビ電話を通して手話や文字で相手先や通話内容をオペレーターに伝え、オペレーターが同時通訳するシステム。東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の聴覚障害者を支援するため2011年9月にスタートし、当初は2年間で302人、5732件の利用にとどまったが、13年9月からは全国展開。16年10月には1カ月で5061人、13872件の利用がある。ファクスを使った同様のシステムに比べ、即時性、双方向性に優れているという。

 日本財団によると、聴覚障害の障害者手帳保有者は約36万人だが、高齢者を含めた推定難聴者は1000万人以上いるとみられ、今後も増加が見込まれることから、さらに需要は高まると予測している。

 ◇足りない理解と支援

 聴覚障害者にとって、電話が使えないと仕事に制約が出るばかりでなく、日常生活における連絡や問い合わせ、予約サービスの利用など、常に家族や友人の助けが必要となり、心理的な負担も大きい。一方で、電話リレーサービスからの電話はセールスや就職あっせんなどと間違えられてしまうこともあり、世間一般の理解も不十分だという。

 電話リレーサービスへの公的支援も不足している。日本財団は今年度事業費を3億1000万円と見込んでいるが、厚生労働省の人件費に対する補助金は1000万円強。日本財団は「スウェーデンなどでは国が経費を負担しているし、ノルウェーやタイのように電話会社が負担する国もある」としている。

 ◇緊急通報への対応も課題

 電話リレーサービス自体にも課題はある。オペレーターを抱える民間事業者は全国に6カ所あるが、運用時間は長い事業者でも午前8時から午後9時までで、24時間対応ではない。また、通訳者やオペレーターの責任や立場が明確ではなく、すべての聴覚障害者をカバーできる体制にもなっていない。さらに、警察、消防、海上保安庁などと提携していないため、110番や119番など緊急通報には原則として対応しない。メールやウェブでの緊急通報を受け付けている警察、消防もあるが、電話リレーサービスのような利便性があるとは言い難いのが実情だ。

 6月3日に愛知県の三河湾沖で聴覚障害者4人が乗ったボートが故障、転覆した事故では、電話リレーサービスに海保への救助を要請する連絡が入った。この時は沖縄の事業者が取り次いだが、事故現場を管轄する第4管区海上保安本部へ連絡し、4時間後に全員が救助された。

 日本財団では「聴覚障害者が気兼ねなく生活するためのインフラとしてだけでなく、高齢による難聴者の増加で、電話リレーサービスのニーズは増えていく。民間のニッチな事業ではなく、公共サービスの一つとして位置づけてほしい」と話している。

最終更新:7/17(月) 10:00
毎日新聞