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アングル:動画配信サービス悩ませる若者の「パスワード共有」

7/17(月) 8:41配信

ロイター

Lisa Richwine, Jessica Toonkel

[11日 ロイター] - 「ゲーム・オブ・スローンズ」などの人気ドラマシリーズをストリーミング配信で楽しむヤングアダルト層の5分の1以上が、家族以外のパスワードを借用しており、ネット視聴者が爆発的に伸びるなか、メディア企業がかなりの収入を取り逃がしている実態が明らかになった。

最新のロイター/イプソス調査によれば、18─24歳のストリーミングサービス利用者のうち、21%が同居家族以外から教えてもらったログイン情報を使って、「ネットフリックス」や「Hulu」などの動画配信サービスにアクセスした経験があると回答。成人全体では12%だった。

業界各社の四半期決算が来週以降に予定されているが、視聴料金からの収入動向に厳しい目が注がれることになりそうだ。ストリーミング配信で先行するネットフリックスは10日、業績を発表している。

これまで、ネットフリックスなどのストリーミング動画サービスはある程度のパスワード共有を認めてきた。だが、新規加入者が大幅に減速するようであれば、そうした方針を改めるよう、投資家からの圧力がかかる可能性があるとアナリストは指摘する。

ネットフリックスの売上高は、今年第2・四半期に記録した伸び率31%から、来年同期には同19%へと鈍化するとトムソンロイターIBESは予想している。

「ネットフリックスの収益成長率が30%台から10%台に落ちるようなことになれば、取り逃がしている収入に対する関心が高まるのは確実だ」とレイモンド・ジェームズのアナリスト、ジャスティン・パターソン氏は語る。

ネットフリックスはコメントしなかった。

ロイター/イプソス調査によれば、視聴料金を節約するためにパスワードの貸し借りをしていると言う。料金自体はそれほど高くないものの、複数のサービスに加入すればバカにならない金額だ。

ジョージア州スマーナで住み込みのベビーシッターとして働くドニエル・ブラッドショーさんは、Huluの視聴には28歳の姉の、ネットフリックスには32歳の兄のパスワードを使っているという。

「家族だから問題ないと思っている」と22歳のブラッドショーさんは語る。視聴時間は平日の夜に4時間、週末は1日10時間程度になるという。

パスワード共有に対して各社が厳しく取り締まるようになったらどうするのか──。ブラッドショーさんは、ネットフリックスについては、自費で加入しようという気もあるが、複数のメディア企業が所有するHuluについては加入するかどうか分からないと語る。

「ネットフリックスで、たくさんの番組を観ている。これ無しの生活は考えられない」と彼女は述べた。

ストリーミングサービス各社は、潜在的な顧客に対する番組宣伝の一環として、ある程度のパスワード共有は黙認してきたが、あからさまな「ただ乗り」を抑制するための手は打っている。

多くのサービスで、同時に番組視聴できる人数を制限している。ネットフリックスの場合は、1つのアカウントにつき同時にストリーミング視聴できるのは、加入プランによって2本─4本に制限している。より多くの番組を同時視聴するには追加料金が必要となる。

タイムワーナー<TWX.N>傘下のHBOは、実は、若年層の視聴者が「HBO Now」と「HBO Go」サービスを無料で使うことを推奨している。約100の米国内の大学にサービスを提供しているのだ。

「わが社にとって、金銭的にそれほど自立していない年代のうちにわれわれのサービスを使う習慣をつけてもらい、いずれ有料顧客になりたいと思ってもらうことの方が大切だ」。HBOでグローバル配信を担当するBernadette Aulestia執行副社長はインタビューで語った。

ネットフリックスの幹部も、一部の視聴者がパスワードを共有していることは承知していると語る。

「取り締まることはできるが、そうしたからといって、彼らが皆、一斉に有料ユーザーになってくれるわけでもない」。ネットフリックスのデビッド・ウェルズ最高財務責任者は、昨年9月のゴールドマンサックス主催のカンファレンスで語った。

<収益機会の喪失>

アナリストは、各社が収益成長の機会を逸していると指摘する。パークス・アソシエイツが行った分析では、パスワード共有によるストリーミング事業者の損失は、2019年には5億5000万ドル(約620億円)に達すると試算している。

「そうした行為に対する一種の無頓着な姿勢が見られる」とパークス・アソシエイツのアナリスト、グレン・ハウアー氏は言う。「これまで優先課題ではなかった」

パスワード共有を取り締まろうと思えば、その方法はある。

例えば、シスコシステムズ<CSCO.O>では、普段と異なる時間帯や場所における使用など、アカウントの異常な活動を検知するための製品を販売している、と同社上級副社長コンラッド・クレムソン氏は語る。

こうした情報を単に監視のために使うのか、それとも利用者に警告を送ったり、アカウントを停止したりするような追加的な措置をとるのかは、ストリーミング事業者や有料テレビ事業者を含むシスコの顧客が判断することだ、とクレムソン氏は言う。

「今のところ、多くのサービス事業者やコンテンツ事業者は、大いに試行錯誤している段階だ」と彼は言う。

ストリーミング事業者は、アカウントの利用状況を追跡していると言うが、その具体的な内容は明らかにしていない。

今回のロイター/イプソスによる調査は、全米を対象にオンラインで英語を用いて6月8日─26日に行われた。4453人の成人から回答が得られ、そのうち3557人が、ケーブルTVサービスや、アマゾン・プライム、Hulu、ネットフリックスなどでストリーミング動画を視聴していると答えている。今回の調査の精度の指標となる信頼区間は2パーセンテージ・ポイントだった。

(翻訳:エァクレーレン)

最終更新:7/24(月) 3:59
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