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「野沢菜」を食べる長野県民が「長寿」で「いぶりがっこ」が好きな秋田県民が短命の「ワケ」

7/18(火) 9:30配信

産経新聞

 長野県と秋田県、ともに日本酒と辛い漬物を好む県ながら、長野県民は長寿で秋田県民は短命-。厚生労働省が6月にまとめた、年齢構成の異なる地域間で、人口10万人に対する死亡率を比較した「年齢調整死亡率」でそんな実態が浮かび上がった。野沢菜を食べる長野が健康寿命で日本一の一方、大根の漬け物を燻製にした郷土料理のいぶりがっこを食べる秋田がワースト上位である理由とは。背景をひもとくと意外な県民性の違いが浮かび上がる。

 秋田市中心部の商業施設に開店して2年半の「あきたタニタ食堂」は、一食約500キロカロリーの健康ランチが売り物。だが本家の東京・丸の内タニタ食堂に今も長蛇の列ができているのに「秋田版」の客足はさえない。昼時こそ盛況だが多くは年配女性で最近、満席になることはない。「客足は想定の半分程度」と運営元・あきた食彩プロデュースの担当者は肩を落とす。「せっかく外食するなら健康に気を使うより、手の込んだ物を食べたいという県民性があるかも」と桐生晶子マネジャー。

 秋田は厚生労働省がまとめた平成28年の人口動態統計(概数)では出生率▽死亡率▽出生数から死亡数を引いた自然増減率▽婚姻率▽死因別死亡率のがん▽脳血管疾患▽自殺率-の7項目でワースト1である。県人口は4月、87年ぶりに100万人の大台を割り、少子高齢化と人口減少に歯止めがかからない。

 年齢調整死亡率をみると最低は男女とも長野で健康寿命が長い。秋田は男性でワースト2位。病名別で秋田はがん(悪性新生物)で男性ワースト2位、女性で3位だ。

 秋田でがん死亡率が高い理由を、秋田大医学部附属病院の羽渕友則院長は、「過疎化と高齢化に加え喫煙や飲酒、塩分摂取量の多さなど食生活の問題で予防ができていない。がんの生存率も低く、医療機関の検診レベルにばらつきがあり早期発見につながらないことや、過疎化で病院に通いにくい人が多いことも理由の一つ」とみる。

 秋田大のまとめによると、秋田県の成人喫煙率(2013年)は男性38・2%で全国5位、女性10・6%で全国14位だ。日本酒消費量は年間8リットルで2位(2012年)。こうした背景が肺がんや食道がん、胃がんなどの罹患率を上げている。さらに「深酒した翌朝は自己嫌悪に陥り自殺しやすい傾向がある」(羽渕院長)飲酒癖も、自殺率を引き上げてもいるようだ。

 では、長野県はどうか。県が2015年3月にまとめた報告書によると、記録の残る1920年代から、健康寿命が全国平均をはるかに上回る歴史がある。大正時代から昭和時代の初期に蔓延(まんえん)した乳児死亡率や結核死亡率が低かったのだ。

 長野県の食生活は自家栽培の主食や野菜、さなぎやイナゴ、川魚、鯉からヤギなどの動物性タンパク質、みそ・しょうゆ、豆腐など大豆といったさまざまな食材を食べていた。就学率も高く、そうした「栄養のある食材を食べる知識と工夫が功を奏した」(羽渕院長)という。

 さらに、戦後の復興期には、佐久市にある佐久総合病院による農村医療が、医師の若月俊一氏(1910-2006)年の指導のもとに始まり、演劇を使った健康教育などで県民に浸透した。また須坂(すざか)市を起源とした健康ボランティア「保健補導員」による、脳卒中予防ための食事の塩分調整指導や、冬季の室温調査などの取り組みも広がった。

 住民に寄り添った形での健康推進、病気予防運動の成果で、喫煙率は男性が全国44位(2010年)である一方、野菜摂取量は女性で全国1位(同)となる。秋田との違いについて、県健康増進課の担当者は「長野は山間地で平野が狭く、まじめで地道に生きる県民性がある。いっぽう秋田は平野が多く米は豊富にとれる。その分、刹那的に短く太く生きる県民性があるのでは」と分析していた。

(秋田支局長 藤澤志穂子)

最終更新:7/18(火) 9:30
産経新聞