ここから本文です

岡山出身俳優・八名信夫が映画初監督 古里や家族への思い描く

7/17(月) 11:30配信

山陽新聞デジタル

 岡山市出身の俳優で、悪役商会代表・八名信夫(81)が、初監督した映画「おやじの釜めしと編みかけのセーター」の無料上映会を全国で行っている。主演、脚本も手掛けた本作は、古里や家族への思い、人を思いやる温かい心がテーマ。6月、上映会のため来岡した八名は「約60年の役者生活の中で出会った人たちへの恩返し」と作品に込めた思いを語った。

 ◇

 「あちいのに、ありがとな」。倉敷市での上映前、会場となった公共施設のロビーに立って観客一人一人と握手し、感謝を伝える八名。満員の約350人がスクリーンに注目する中、映画が始まった―。

 製作のきっかけは、東日本大震災から1年後の被災地・福島県南相馬市への慰問。津波で妹、祖母が行方不明、家も失ったという少年の「僕には古里がある。早く大人になって、古里のために役に立ちたいです」という言葉に心を打たれた。「自分にも何かできることはないかと考えたとき、映画しかないと思った」

 舞台は旅番組で訪れたことのある富山県南砺(なんと)市五箇山地区を選んだ。八名が演じるのは合掌造りの釜飯屋を営む元刑事。家出した一人娘が病死し、残されたまだ見ぬ孫娘を捜し回る。

 冬は2メートルもの雪が積もる五箇山地区。合掌造りの屋根にも雪が降り積もっていたが、撮影途中に解けてしまい、スタッフが屋根に雪をあげて撮影を続けるなど「天候には苦労した」と振り返る。

 製作費は自身の蓄えを取り崩してまかなった。昨年2月から約8カ月掛けて撮影、編集し、昨秋に完成。依頼を受けては、富山や徳島など全国17カ所のホールや公民館などで上映してきた。たくさんの人に見てほしいという思いから、鑑賞は無料。会場でDVDを販売して収益を被災地に寄付する。

 中央卸売市場など、なじみある岡山の風景も登場する本作。「帰ってくると大きく深呼吸したくなる、大切な場所」と古里への思いは強い。

 監督、主演の二足のわらじに「映像を見ると、役の顔ではなくて、監督の顔して演技してることもあったな」と笑う。苦労の連続だったと言うが、監督2作目への意欲も見せる。

 舞台は熊本。「熊本地震で大変な思いをした人たちが元気になれるような作品を作りたい」。悪役とはほど遠い、穏やかな笑顔で語った。

 岡山県内では11月12日、津山市で上映予定(時間、場所は未定)。上映依頼はハワード(03―3482―2336)。