ここから本文です

C型肝炎治療の不都合な真実 再発繰り返す肝細胞がん

7/17(月) 11:28配信

山陽新聞デジタル

 C型肝炎治療の不都合な真実について、天和会松田病院(岡山県倉敷市)の松田忠和院長に寄稿してもらった。

     ◇

 C型肝炎は4~5年前まではインターフェロンを中心とした治療が行われ、発熱やうつ症状など、つらい副作用と闘いながらSVR(ウイルス学的著効達成)となったのは、高いもので40~50%と残念な結果でした。

 しかし、2014年9月にDAA(直接作用型抗ウイルス薬、以下DAA)、飲み薬新薬の第1弾であるダクルインザ・スンベプラ(一般名ダクラタスビル/NS5A阻害薬、アスナプレビル/NS3阻害薬)が登場。さらに15年9月から飲み薬新薬第2弾ハーボニー(一般名レジパスビル/NS5A阻害薬、ソホスブビル/NS5B阻害薬)、15年12月から飲み薬新薬第3弾ヴィキラックス(一般名パリタプレビル/NS3阻害薬、オムビタスビル/NS5A阻害薬、リトナビル/作用増強剤)が登場し、C型肝炎は薬剤を適切に選択すれば95~100%SVRに持ち込める、すなわち治し切れる病気となったと言えます。

 しかし喜んでばかりはいられない注意すべきことがあります。C型肝炎はなぜ国民病として恐れられ、退治すべき病気と考えられたのかと言うと、放置すると肝硬変になり、多くの患者さんに肝臓癌(がん)ができるからです。確かにDAAは肝炎を鎮静化し新たに発癌することは制御可能と思えますが、すでに発癌している肝臓癌に対しての抑制効果は期待できません。それに対してインターフェロンは免疫を増強して癌の増大を抑制する効果が期待されます。

 肝細胞癌は最初の1個の癌細胞が発生して診断可能なサイズに成長するまで10年以上かかると言われています。とすれば現在C型肝炎を完治させても今現在成長中の目に見えない肝臓癌はいずれ出現してくるということになります。そこで大事なことは、C型肝炎が完治しても、最低半年に1回程度の超音波やCT等の画像診断を必ず受けていただきたいということです。

 また、昨年4月および本年4月の国際学会や専門誌で、スペイン・バルセロナのBCLC(Barcelona Clinic Liver Cancer)のMaria Reig博士は肝細胞癌切除後、DAAで治療完遂できたグループ77症例を12・4カ月経過観察したところ、驚くことに24症例(31・2%)に癌の早期再発が起こったと発表しました。DAAによりC型肝炎ウイルスが肝臓から消えることにより肝臓の免疫が抑制され、その結果肝臓にある肝細胞癌の芽が急速に増大するのではないかと推論しています。現在のところこの報告には、症例の少なさや観察期間の短さなどから懐疑的な意見が多いようです。

 実は私の施設でも図に示すように、C型肝炎による肝細胞癌根治切除後(上段)、すぐにDAA投与を行い、C型肝炎をSVRに持ち込んだ直後に初回よりも大きく個数も多い急速な再発をきたし(中段)、再切除し現在全く無再発生存中の症例があります。最近同様な肝癌切除後DAAによる肝炎治療後急速に再発した症例を3例経験していますので、今後慎重に症例を積み重ねる必要があると考えています。また13年前、私の患者さんでインターフェロンとリバビリンでSVRとなり、転居したため専門医にかからず放置していて直径10センチ以上の肝細胞癌で再診に来られた患者さんもいます。

 いずれにせよウイルス肝炎からの肝細胞癌は、再燃再発を繰り返しやすく、肝炎が制御されたからと言って安心して放置していてよいものではないことを知っていただければ幸いです。

     ◇

 天和会松田病院(086―422―3550)