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活躍の場広がる臨床工学技士 医療機器のスペシャリスト

7/17(月) 11:34配信

山陽新聞デジタル

 臨床工学技士について、川崎医療福祉大学(岡山県倉敷市)の望月精一臨床工学科長・教授に寄稿してもらった。

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 臨床工学技士という国家資格をご存じでしょうか。医療現場にはさまざまな医療機器がありますが、それらを使って患者さんの治療に当たる医療機器のスペシャリストです。医療機器の普及と高度化に伴い、臨床工学技士のニーズが高まっています。

 臨床工学技士の養成校がわが国で最初に開設されたのは1988年に臨床工学技士法が施行された年です。川崎医療短期大学医用電子技術科(現在の川崎医療福祉大学臨床工学科の前身)もその時に開設されました。これまでに短大と本学を合わせると約1400人の卒業生を輩出しています。短大開設当時の養成校は少数でしたが、現在では全国に70校を超える養成校があります。

 臨床工学技士法では「『臨床工学技士』とは厚生労働大臣の免許を受け、臨床工学技士の名称を用いて、医師の指示の下、生命維持管理装置の操作および保守点検を行うことを業とする者をいう」と定義されています。「生命維持管理装置」と言いますと、意識がない寝たきりの患者さんに使う装置を想像されるかもしれません。しかしながら必ずしもそうではなく、腎臓の代わりに血液をきれいにする人工透析装置、心臓の手術中に心臓と肺の代わりをする人工心肺装置、呼吸を補助・代行する人工呼吸器などがあげられます。

 臨床工学技士が働いている主な場所は透析室、手術室、集中治療室、医療機器管理室などです。他の医療職と比べ、一般外来で病院に来られた場合、接する機会は少ないのですが、大きな医療機関では何十人もの臨床工学技士が働いています。

 皆さんの周りにも人工透析をされている方がおられるかもしれません。透析患者さんは、通常、毎週3回、1回につき約4時間の透析治療を行う必要があります。現在、全国で約32万人の透析患者さんがおられますが、透析治療の技術面を支えるのが、臨床工学技士です。

 安全に透析治療を行うために透析関連機器を点検するだけでなく、血液を体外に取り出し治療を行うために太い針を患者さんに穿刺(せんし)したり、血圧測定やさまざまなモニターを活用して安全に透析治療が行えるようにしています。

 また、患者さんとしっかりコミュニケーションも取りつつ、様子を見ながら治療を進めていきます。他の医療スタッフとも連携をとりながら、患者さんが安心して快適に透析治療を受けられるようにするのも大切な仕事です。臨床工学技士もチーム医療の大切なメンバーなのです。

 近年、臨床工学技士の活躍の場がさらに広がっています。例えば、心臓の筋肉に栄養と酸素を送っている血管の内側が動脈硬化のため狭くなってしまった場合、その部分を小さな風船で広げるカテーテル治療、心臓の不整脈に対する治療であるペースメーカーの体内留置、胸やおなかに小さな穴を開けて、小型カメラと特殊な医療器具を入れる内視鏡手術などです。これらの治療でも臨床工学技士が機器の操作や管理に携わっています。

 このように医療機器の操作だけでなく、使用前後の点検・保守管理、さらには、これらの機器の取り扱い方を他の医療スタッフに教えるのも臨床工学技士の大切な仕事です。また、今後拡大が見込まれる在宅医療においても、機器の管理や使い方の説明などを臨床工学技士が担うようになると考えられます。

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 川崎医療福祉大学(086―462―1111)

 もちづき・せいいち 早稲田大学大学院(博士前期課程)修了後、フルブライト奨学生として米国デラウエア大学(博士課程)でPh.D.(化学工学博士)取得。1992年川崎医療短期大学講師、2007年川崎医療福祉大学教授、15年より現職および大学院臨床工学専攻主任。17年から副学長補佐(大学院・研究担当)。日本生体医工学会代議員・中国四国支部評議員、日本バイオレオロジー学会理事・評議員。山梨県出身。