ここから本文です

47歳ミケルソンが挑む2度目のクラレットジャグ

7/17(月) 21:07配信

日刊スポーツ

 先月行われた全米オープン。その男はキャリアグランドスラムをかけて、母国のナショナルオープンのティグラウンドに立つ「はず」だった。

 しかしその国で最も愛され結果を期待されるプロゴルファー、フィル・ミケルソンが選んだのは、いまだ手にしたことがない全米オープンのトロフィーではなく、長女アマンダさんの卒業式だった。

●PGAツアー随一の人気選手

 「全米オープンは一番勝ちたいと思っている大会だ。でも、家族とともに生きる人生の大事な瞬間がとても楽しみなんだ」

 全米オープンの2週前。ザ・メモリアルトーナメントの会場で、メディアに対して胸の内を明かしたミケルソン。アマンダさんの高校の卒業式と全米オープンの初日の日程が重なってしまった結果、全米オープンへの出場を取りやめる選択をした。

 長年世界ランク1位を保持してきたタイガー・ウッズは、腰の故障でここ数年ベストのプレーをできない状態が続く。そんな中フィル・ミケルソンはPGAツアーで最もギャラリーの歓声を集める選手の1人だ。

 特にメジャーともなるとミケルソンの組は「Go!フィル!」の声が途絶えることはない。

●キャリア晩年になって選んだコーチ

 そんな人気NO・1のミケルソンだが、意外にも全英オープンを制した2013年以降、4シーズン優勝から遠ざかっている。

 しかし47歳になる今シーズンに限ってみれば、14試合に出場し予選落ちは0回。体調や調子の波をうまくコントロールし、安定した成績を残せている。それを支えているのがコーチのアンドリュー・ゲットソンだ。

 ゲットソンとミケルソンはもともと同じコースのメンバーだったそうだ。

 「フィルとは友人同士だったが、コーチングの話は出たことがなかった。それがどういうわけか15年のプレジデンツカップの前に『コーチをやってくれないか』と相談されたんだ」

 ミケルソンほどの豊富なキャリアがある選手は、根本的にスイングを改造したり、スイングの技術的なことを教わる事はほとんどない。そのためゲットソンは技術面のティーチングではなく、スイングの基礎的な部分のチェックを行っている。

 「コーチングで重要なのは、基礎のチェックとコミュニケーションだと思っている。フィルにもそうだが、私がしているのはセットアップでの姿勢、グリップ、方向性のズレなど、スイングをする前段階としての基本部分のチェックだ。そしてその状態を正しく伝えられる関係性が求められる」

 40代後半に差し掛かっても、スイングの基礎的な部分のチェックを怠ることがないからこそ、長い間、第一線で活躍し続けることができるのだ。

●息の長いベテランの取り組み

 ミケルソンのように40歳を超えてもなお、PGAツアーで戦い続けることができている選手は、数えるほどしかいない。

 そのうちの1人が、先日ザ・グリーブライアークラシックで第3日まで5位につけていたデービス・ラブ3だ。ラブはミケルソンよりもさらに6歳年上の大ベテランである。

 そんなベテランの身体を支えるのが、PGAツアーで多くのトッププロから支持を得ているフィジカルトレーナーのランディ・マイヤーズだ。マイヤーズはラブをはじめ、ベテランのザック・ジョンソン、さらにはビリー・フォーシェルやブライアン・ハーマンなど多くのプロのフィジカルトレーナーを務めている。

 フィジカルトレーナーと言うとジムのトレーニング器具を使い、選手の筋トレをサポートする役割を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。マイヤーズもジョージア州のシーアイランドという場所に最新設備を備えた施設を持っており、オフの間など、ここで選手のトレーニングを行うこともあるという。

 しかしシーズン中は、ほとんどハードなフィジカルトレーニングを積むことはない。

 「スイングの一貫性と安定したパフォーマンスに最も必要なのは、ずばり回復だ」とマイヤーズは言う。

 「シーズン中は身体を強くすることよりも、よりよいパフォーマンスを発揮できるよう調整を行う。ラウンド前後には必ず決まったメニューでウォームアップとクールダウンを行っている。そうすることによって大きな故障を防ぐこともできるんだ」

 これは連戦が続くプロだけでなく、アマチュアにも当てはまることだと教えてくれた。

 「バランスボールを使ったストレッチ、負荷の軽いウエイトトレーニング、チューブを使ったストレッチは、メニューを決めて必ず行うように習慣づけるとよい。ボールを何百球も打つより、はるかに時間がかからずケガのリスクもないからね」

 そしてベテラン選手になるほど、このケアの時間は長くなるようだ。

 「暑い夏の時期やメジャーの前と大会期間中には、疲労を取るためにより多くの時間をマッサージによるケアや休息にあてている」

 キャリアを積んだベテラン選手はメジャーやそれに準じるような大きな大会に照準を合わせて、年間の出場スケジュールなどを組む。そこに調子の山が来るように、身体の調子も整えるのだ。

 2011年以降、全英オープンは14年のロリー・マキロイを除き、40代のベテラン選手の優勝が続いている。過酷なコースコンディションや目まぐるしく変わる天候、そこに立ち向かうには長いキャリアで得てきた経験値が大きなアドバンテージとなる。

 昨年の全英オープン。最終日に猛チャージを見せながら2位に終わったミケルソンをはじめ、ベテラン勢は虎視眈々クラレットジャグ(優勝カップの呼称)を狙う。台頭する若手に立ち向かう彼らにも注目だ。

 ◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招請し、レッスンメソッドを直接学ぶ。ゴルフ先進国アメリカにて米PGAツアー選手を指導する50人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を学び研究活動を行っている。早大スポーツ学術院で最新科学機器を用いた共同研究も。監修した書籍「ゴルフのきほん」(西東社)は3万部のロングセラー。オフィシャルブログ http://hiroichiro.com/blog/

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)

最終更新:7/17(月) 21:22
日刊スポーツ