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なぜ渡辺謙さんは「不倫謝罪会見」をこのタイミングで開いたのか

7/18(火) 8:19配信

ITmedia ビジネスオンライン

 3連休が始まった7月15日、俳優の渡辺謙さんが「不倫謝罪会見」を開いた。

 会見をご覧になった方はよく分かると思うが、報道陣は思いのほか謙さんに対して優しく、笑い声まで起きていた。4カ月も逃げ回っていたあげくの「報道は概ね事実です」という白状にもかかわらず、ワイドショーの論調もマイルドで、これまで「ゲス不倫」でバッシングを受けた芸能人はなんだったのかというくらい友好的だった。「すべての質問にしっかりと答えていて完璧だ」なんてもちあげるコメンテーターもいた。

【世界のケン・ワタナベは「ヤバイ人」にケンカを売った】

 この背景にあるのは「世界のケン・ワタナベ」の名声か、所属するケイダッシュの「プロデュース力」なのかというのは、ぜひ心ある芸能記者のみなさんに分析をしていただくとして、企業などの報道対策を生業としている筆者が、なによりも注目したのは「タイミング」である。

 なぜ「文春砲」から4カ月も経過した今、不倫の事実を認めるためだけに会見を催したのか。

 正直、毎月のように「ゲス不倫」が報じられているのでこの話自体を忘れていた人も多い。このまましれっとフェードアウトして自身の主演作とかの制作発表に合わせて、「少し前はいろいろお騒がせしましたが、既にこの問題は夫婦間で話し合いをして解決してます」とアナウンスするというやり方もあったはずだ。

 実際、企業の中には即座に謝罪会見を開くほどではないビミョーな不祥事、責任問題が複雑に絡み合った案件などの場合はとりあえずスルーして、再発防止策や問題解決への動きとともに、決算発表や定例会見などのタイミングで初めてアナウンスをする、というダメージコントロールを行なう会社も少なくない。

 お相手の方との関係は解消したものの、奥様の南果歩さんに許してもらったわけでもない。さらに、謙さんが公の場で仕事関係のアナウンスをしなくてはいけないタイミングでもない。単に4カ月前の報道が「概ね事実です」ということを言うだけのために、マスコミの前に現われるのは危機管理のセオリーからするとまったく理にかなっていない。

●謝罪会見は別の「狙い」があった

 おばさんレポーターたちに「世界のケン・ワタナベも普通の男なんですね」「男の人ってやっぱりバレないと思って不倫するんですか」とつめよられる姿を、3連休のお茶の間に届ける謙さんサイドのメリットがまったく見えないのである。

 そう考えていくと、今回の会見が「謙さんのダメージコントロール」ではなく、別の「狙い」のもとに催された可能性が浮かび上がる。こんな中途半端な時期に自ら「晒し者」になったのは、謙さんが許しを請わなくてはいけない「ある人」のためではないのか。

 そう、南さんのためだ。

 一部で既に指摘されているが、ここまで謙さんが「不倫謝罪会見」を催すことができなかったのは、「文春砲」が炸裂した3月29日の数日後、南果歩さんが出演されている「アフラック」のテレビCMのオンエアが始まってしまったから、という説がある。

 ご覧になった方も多いだろうが、このCMのなかで、乳がんの治療を行なっていた南さんは「夫には感謝ですね」と言っているのだ。

 その「夫」がテレビで「不倫謝罪会見」をしていたらCMのストーリーがぶち壊しである。かといって、南さんにはなんの瑕疵(かし)もないのにCMを中止するなんてことはできない。そこで結局、南さんのCM契約期間が残るうち、謙さんは「沈黙」を守る対応になったのではないか、というのだ。

 もちろん、これが事実かどうかは定かではないが、確かに今回の会見のタイミングも、南さんのお仕事にかなり配慮をしていることが伝わってくる。

 というのも、南さんは7月9日より、NHKBSプレミアムで『定年女子』というドラマの主演を務めていらっしゃっていて、まさしくその主人公が、浮気が原因で夫と別れてキャリアアップを狙う女性という設定で、放送前から話題になっていたのだ。

●謝罪会見は贅沢な「番宣」

 そんな『定年女子』の第1回目の放送が終わった6日後、第2回目オンエア前日に、リアル夫がマスコミの前で浮気を認める。しかもそれはあの「世界のケン・ワタナベ」であれば、話題は抜群だ。ここまで贅沢(ぜいたく)な「番宣」はない。

 「そんなのたまたま時期が重なったからに決まっている」という人もいるだろうが、今回の「不倫謝罪会見」のなかでは、このドラマの「援護射撃」に見えてしまうような言葉が随所でリピートされている。

 謝罪会見というものは、頭を下げることだけが目的ではない。集めたメディアを介して、社会や取引先に対して、「これだけは言っておかなければ」というメッセージを伝えなくては会見を開いた意味がない。我々の世界では、それを「キーメッセージ」と呼んでいるのだが、今回の謙さんの場合、南さんとどのような話をしているのかと問われた際、繰り返した以下のような回答がそれにあたるのではないかと思っている。

 「こんなことであなたが積み重ねてきたものが消えるわけではないから、頑張ってね」と言ってくれました。

 先ほど話しましたけど「今までやってきたことは、こういうことでは消えないから頑張ってね」という言葉はありがたかったですね。

 この言葉から、南さんは今回の夫としての「裏切り」を完全に許してはいないものの、俳優・渡辺謙の仕事は高く評価して、応援をしていることが伝わってくる。

 実は先ほどの『定年女子』のWebサイトによると、南さんの役柄は、「根っからの仕事人間」で会社を辞めた後も「誰かの『助け』になりたい」というキャラクターらしい。自身も辛いはずなのに、俳優としてのダメージを懸念して、励ましの言葉をかける南さん自身の気丈な姿と妙に重ならないか。

●謝罪会見で胸をなでおろしている人たち

 そう聞くと、あれだけの裏切りをしたのだから、せめてもの「罪滅ぼし」で奥さんの主演ドラマを宣伝するくらい夫として当たり前だと思う人もいるだろう。

 筆者もそう思う。ただ、もしあの会見が「南さんのため」に催されたというのなら、この話はさらに複雑になっていく。実は謙さんの「不倫謝罪会見」をこぞってワイドショーが扱うのを見て、ほっと胸をなでおろしている人たちがいるからだ。

 それは日本を代表する大手芸能事務所「ホリプロ」だ。

 ご存じのように、最近ワイドショーだけではなくネットでも大注目といえば、松居一代さんだが、その彼女にディスられている夫・船越英一郎さんはホリプロの所属タレントだ。自社の所属タレントをあそこまでボロカスに叩く松居さんは、ホリプロにとって一刻も早く世間から忘れ去られてもらたい存在であることは言うまでもない。そういう大手事務所の苦しい胸の内を「忖度」して、松居さんネタを扱わないようにするマスコミも当然現われるだろう。

 それは松居さんもよく分かっている。詳しくは、山のように関連動画や、関連ネットニュースが出ているので、そちらをご覧になっていただきたい。当初は船越さんの不倫疑惑を執拗(しつよう)に叩いていたのだが、この11日からは矛先が変わってきて、船越さんが所属する大手芸能事務所ホリプロをターゲットにしているのだ。

 「私はその不倫に怒っているわけじゃないんですよ。私が怒っているのは黒い権力ですよ。黒い権力で私を抹殺しようとした、そのことに怒っているんです。私の事務所は、私がたった1人で運営している、ちっぽけな吹けば飛ぶような事務所です。相手は巨大なプロダクションです。私なんか抹殺するのは簡単でしょう。でも私は命をかけて戦っているんです」(11日夜にアップした松居さんのYouTubeより)

●し烈な「情報戦」を繰り広げている

 もちろん、ワイドショーではそのようなこみいった話は扱わない。宮根誠司さんが司会を務める『Mr.サンデー』に松居さんが出演させてくれと訴えてもスルーしたように、テレビの世界では、松居さんはもはや大手事務所ホリプロにケンカを売って、この世界の「暗黙のルール」が通用しない「ヤバイ人」という扱いなのだ。

 とはいえ、「数字」もそこそことれるのでワイドショーとしても、「ヤバイ人」を完全に無視するわけにもいかない。そんな痛し痒しの状況のなかで、この連休で松居さんの露出量がガクンと減った。そう、謙さんの「不倫謝罪会見」である。

 「都合の悪い話」をふれまわる人から大衆の目をそらせるには、その人よりももっと有名で、もっと話題性がある人をぶつける、のは「情報戦」の基本だ。

 ちなみに、南果歩さんは、ホリプロのグループ会社であるホリ・エージェンシー所属タレントである。もしあれが「南さんための会見」だったとするのなら、それは大きな意味では、「ホリプロのための会見」でもあったということだ。

 謙さんが「松居一代さん騒動」の最中に会見をしたのは、松居さんと船越さんの泥沼バトルと比較されて、「あっちと比べたらまだまし」という印象になるからではないかと分析をしていたコメンテーターがいた。確かに、謙さんサイドからすればそういう「狙い」もあっただろう。

 ただ、そうなると遠回しに「松居一代さん騒動」ついてのコメントを求められ、「穏便に解決してくれたらいいんじゃないかと思う」なんて口走ったことが不可解でしょうがない。

 口をすべらせたというのは考えずらい。時期的にも必ず出る質問だ。あれは謙さんサイドが関係各位と調整してつくったオフィシャルな回答なのだ。あれほどそつのないマスコミ対応をしてきた謙さんサイドが、なぜ松居さんの行動を諌(いさ)めるような「誘導」をしたのか。南さんの仕事を応援する目的で言えば、「今の私がなにか言える立場ではありません」としておくのがベストであることは言うまでもない。

 「世界のケン・ワタナベ」が芸能界のガバナンスを揺るがす「ヤバイ人」にあえてケンカを売ったのは、いったい誰の顔色を「忖度」してのことなのか。

 「黒い権力」かどうかは定かではないが、松居一代さんが何者かを相手にし烈な「情報戦」を繰り広げていることだけは間違いないのではないか。

(窪田順生)