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台湾詩人描くドキュメンタリー「日曜日の散歩者」監督と巖谷國士が対談

7/18(火) 21:22配信

映画ナタリー

台湾のドキュメンタリー映画「日曜日の散歩者 -わすれられた台湾詩人たち-」のプレミア試写会が、本日7月18日に東京・台北駐日経済文化代表処 台湾文化センターで行われ、監督のホアン・ヤーリーとフランス文学者の巖谷國士が出席した。

【写真】「日曜日の散歩者 -わすれられた台湾詩人たち-」チラシビジュアル(他14枚)

第53回金馬奨最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した本作は、1930年代に日本統治下の台湾で誕生したシュルレアリスム詩人団体・風車詩社にスポットを当てた作品。西脇順三郎などの日本近代詩や、ジャン・コクトーなどの西洋モダニズム文学に触れ、母国語ではない日本語での詩作に葛藤しながらも、新たな台湾文学を創造しようとした彼らの軌跡をたどる。

イベントではホアン・ヤーリーと巖谷が映画の上映後にトークを行った。巖谷は「不思議で、同時に大胆、明晰で、超現実的で、美しい映画だと思います。まさに現実に立脚した断片が、ある歴史、叙事として連なっている」と本作を絶賛。巖谷は試写会で本作を観た人々が口々に「難しい」「説明が足りない」と述べていることに対して「僕がこの映画を素晴らしいと思うのは説明がないから。説明がないから嘘じゃない。歴史的事実としてあるものをあるがままに表現する本作が、まさにシュルレアリスムを受け継いでいるように感じた」と明かす。

巖谷の言葉を受けて、ホアン・ヤーリーは「恐れ入ります」と謙遜し、「ヨーロッパ発祥の運動が日本を経由して台湾に輸入された。それは経由するたびにその形を変化させてきたものの、同時代に異なる国でさまざまなクリエイターたちが、シュルレアリスムと冠した運動に従事したという状況に文学の可能性を感じたのです」と話す。そして本作を制作した目的を「私はそういった作家たちの立場に立って彼らの経験、彼らがどのように創作したのかを追体験したかったのです」と語る。

続いて巖谷は本作でマン・レイの「エマク・バキア」やフェルナン・レジェの「バレエ・メカニック」、ルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリによる「アンダルシアの犬」など1920年代のフランス前衛映画が引用されている点を指摘。「当時日本でも、おそらく台湾でも観ることができなかった作品群が本作には引用されている。これは監督が台湾の文学者の意思を受け継いで映画を作ったのではなく、現代からの視点でシュルレアリスムの映画を受け継いで制作したように思える」と語り、「1920年代のシュルレアリスム映画から相当なインスピレーションを受けているのではないか?」と問う。

一方のホアン・ヤーリーは「先生は鋭いです(笑)」と前置きした後、「風車詩社を調べていくうちに気付いたことがあります」と話す。「彼らについての資料はいろいろありますが、完璧な形で残っているものはありません。だから彼らの空白を埋める必要があったのです」と語る。ここで映画を作る際の考え方を転換したというホアン・ヤーリーは「当時の社会や芸術のあるべき姿、彼らがどのシュルレアリスム映画を観たのか調べても意味が無いと感じました。なぜならその方法で風車詩社を立体的に再現することは不可能だと感じたから」と述べる。そして詩の朗読、写真や芸術作品を用いた資料映像、そして前衛的な手法で描かれる再現パートという3つの要素で構成された本作の方法論について「むしろ自由に当時を連想し、資料にもとづいて彼らの状況を推測する。歴史に対する認識を深めて、風車詩社やシュルレアリスムの可能性を映画で表現したかったのです」と語った。

「日曜日の散歩者 -わすれられた台湾詩人たち-」は、8月19日より東京のシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開される。



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最終更新:7/18(火) 21:22
映画ナタリー