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関西電力の値下げは遅すぎた? 自由化から1年4カ月、競争を甘く見ていたのか…

7/18(火) 12:03配信

産経新聞

 関西電力が8月1日から電気料金を値下げする。一部の原子力発電所が再稼働したことに伴い、低コストで発電できるメリットを料金に反映させるという。しかし実は、値下げ原資の大半は経営の合理化・効率化で捻出しており、原発再稼働による収支改善効果の方が小さい。関電はこれまで「原発が停止したため料金が高止まりしている」とする説明を繰り返してきたが、他にも値下げの余地が大きい実態が浮かび上がった。ならば、今回の値下げは遅すぎたのではないか?

 関電は7月6日に記者会見を開き、8月から家庭用を平均3・15%、企業向けを同4・9%それぞれ値下げすると発表した。全体では4・29%の引き下げとなる。同時に、値下げ原資の内訳も示した。それによると、高浜原発3、4号機(福井県)が営業運転に入ったことに伴う火力発電の燃料費削減効果は年間410億円。一方、経営効率化分は461億円にのぼり、原発再稼働分を51億円も上回っている。

 この経営効率化の内容は多岐にわたる。例えば、石炭火力発電所の燃料を安価な石炭に切り替えることで22億円、施設建設時の競争発注拡大や調達価格低減などで26億円、家庭などに設置するデジタル式電力計「スマートメーター」の調達価格低減で96億円、事務用品等の厳選で27億円-など。

 関電の岩根茂樹社長は会見で、「経営効率化では血の出るような努力をしてきた」と胸を張った。こうした取り組み内容は20ページの資料にまとめ、ホームぺージでも公開している。

 ただ、これらの取り組みの多くは、今から4年前の平成25年度以降、段階的に実施されてきた。それには理由がある。23年3月の東日本大震災で福島第1原発の事故が起こって以来、全国の原発が相次いで停止され、大手電力各社は発電コストの上昇から値上げを余儀なくされた。関電も25年4月と27年6月に値上げを実施。その際、顧客らの反発もあり、値上げの条件として合理化努力の徹底が要請された。

 このため関電は25年度からの3年間に累計6082億円にのぼる効率化目標を設定。その目標額を値上げ額の抑制に充てた。つまり、将来の経費削減分を先食いする形で電気料金を抑えてきたのだ。岩根社長の言う「血の出るような努力」はこのことを指す。

 一方、今回の値下げ発表にあたって関電は、「25年度からの効率化目標額を上回る成果を上げた分」の461億円を値下げ原資とする。わかりやすく言えば「想定以上の効率化ができた分を、値下げに反映させる」ということだ。しかし、この想定以上の効率化が、原発2基の再稼働効果より大きいとなると、従来の「原発が停止しているため料金を下げられない」という説明は論拠を失う。

 電力の小売りが全面自由化され、家庭の電力契約が新規参入事業者(新電力)との争奪戦となったのは昨年4月。それから1年余りの間に、関電は家庭向け電力の契約を約80万件も奪われた。原因は、関電の電気料金が新電力よりも高いからだ。

 確かに原発停止は発電コストの高騰を招き、料金設定に不利に働くが、そもそも「電力自由化」とは、コストを料金に反映させるという意味ではない。さまざまな経営努力や合理化によって料金を引き下げ、サービスを向上させ、顧客の支持をつかむ市場競争のことだ。にもかかわらず、料金高止まりの原因を「原発停止」によるコスト高に転嫁させ、市場競争に正面から向き合わなかった関電の姿勢が、顧客離れを加速させたのではないか。

 これまで関西の家庭向け電力市場は関電の独占状態だったせいか、改革はスピード感を欠いた。仮に、今回の値下げ原資となる経営効率化を1年前に実現し、値下げを早めていれば、新電力との料金格差が縮小し、顧客流出を抑制できただろう。もちろん、際限ない値下げ合戦に陥れば各社とも経営体力を奪われ、共倒れになる懸念もある。ただ、全国の電力大手の中で関電の顧客流出件数が最も多い実態を見れば、電力自由化による競争を甘く見ていたと言わざるをえない。

 関電の値下げ発表に対抗し、ライバルの大阪ガスも8月1日から電気料金を値下げすると発表。都市ガスとセットの長期契約の場合、標準的な家庭で約2・6%引き下げる。新電力では同様にソフトバンク、大阪いずみ市民生活協同組合(堺市)、ケイ・オプティコム(大阪市)なども相次いで値下げ方針を表明している。これら新電力の値下げ原資は、原発とは無関係の経営努力にある。

 一方、関電は高浜原発に続いて大飯原発(福井県)も今秋に再稼働を予定しており、第二弾の値下げが視野にある。ただ、これとは別に、効率化による料金引き下げは「いつでも経済産業省に届け出ることができる」(関電広報)制度になっているという。関電が顧客流出に歯止めをかけ、失った契約を奪い返すためには、原発の着実な再稼働も大切だが、たゆまぬ合理化・効率化によって自律的に電気料金を引き下げることが最も近道となる。

 関電の年間売上高は3兆2459億円(平成29年3月期、連結)。その巨大な事業規模に対し、今回の値下げに反映させる経営効率化の461億円は、約1・4%にあたる。これまで電力市場で独占的な地位にあったことを考慮すれば、もっと改革の余地があるのでは? 市場は厳しい視線で見つめている。(経済部次長 上野嘉之)

最終更新:7/18(火) 12:03
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