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星野リゾート代表、「ホテルならヒルトンでいい。日本旅館として世界へ」

7/18(火) 13:01配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 星野佳路星野リゾート代表に聞く(4)

 ――星野さんは、外資系ホテルに対抗して、「日本旅館」を新しいホテルのスタイルにしようとされていますね。コーネル大学ホテル経営大学院に留学中に考えたのですか。

 米国にいたときですね。日本のホテル運営会社が欧米に進出する際の一つのハードルは、なぜ日本からホテルをやりに、米国やヨーロッパに来るのかと、けげんに思われることです。

 西洋式ホテルならば、ハイアットやマリオット、ヒルトンでいい。逆の見方をすれば、米国の会社が日本に来て、すし店をチェーン化するようなものですからね。

 日本文化は今やあまりにも有名でエキゾチックなので、向こうの人たちは日本から来る運営会社に、日本的な要素を期待します。それに応えないと、日本の運営会社がなぜわざわざ来るのか、納得されにくいんです。

――世界の中では、日本旅館はニッチ(すき間)のように思えますが。

 ニッチと言いますか。日本旅館も変わらなければいけないところがあります。衰退したのは、市場の変化に適応できなかったためです。

 私たちの「界」ブランドの温泉旅館や東京・大手町で昨年開業した「星のや東京」は、現代的な旅行者のニーズに相当合わせています。東京ではビジネスマンも快適に過ごせなくてはいけません。

 新しいホテルのカテゴリーを作っていきたいのです。今、世界の投資家や開発会社は、常に世界の大都市でホテルを開発していて、新しいカテゴリー、スタイルを探しています。

 ここ10年では、ブティックホテル(小規模で洗練されたデザイン、サービスで売る)が、全盛期を迎えていました。私たちは、「日本旅館」を新しいカテゴリーにしたいんです。

 こうしたシナリオで行かない限り、日本の運営会社が海外に出て、すんなり受け入れてもらうのは難しいと思います。

――旅館は、食事の時間が決められ、係の人が布団を敷きに部屋に来るなど、ホテルより利便性が低いように感じます。

 「星のや軽井沢」を見ていただけば、年間85から90%の稼働率ですが、泊まる方の4割しか館内で食事をしていません。布団を敷きに行くしつらえにもなっていない。しかしどこから見ても日本です。

 西洋式ホテルはものすごい勢いで進化してきました。客室内に冷蔵庫が初めて入ったのは1960年代ですからね。

 日本旅館は60年代からあまり変わっていない。日本旅館も旅行者のニーズに合わせて進化しなければいけなかったのです。今、急速に追いつこうとしています。

――2020年の開業を計画している大阪市のホテルは、都市観光に的を絞っているそうですね。JR環状線の新今宮駅前で、大型ホテルが立地する中心部からは外れていますが、自信のほどはいかがですか。

 自信があるわけではありませんが、客観的に見るといい場所なんです。関西国際空港からのアクセスが非常にいいですし、新大阪からもいい。ただ昔からのイメージで、地価が相当に過小評価されているというのが私たちの判断です。

 大阪駅前の梅田周辺は大都会の雰囲気ですが、新今宮は近くに新世界や通天閣があってディープな大阪の文化を反映しています。それでいて利便性が高いのですから、都市観光客にとってはベストの場所だと思います。

――土地の落札額は3.3平方メートル(坪)当たり40万か50万円で、かなり安いと思いますね。

 それくらい過小評価されていたから、手を出す人がいなかったのですよ。

――経営の仕方で評価は変わるというわけですか。

 そうですね。普通にやればいいんです。特別なことをしようとは考えていません。土地が持っている高いポテンシャルを、しっかり生かして表現すれば大丈夫だと思っています。

――客室は600室ですか。名称は何ですか。

 客室数は確定していないんです。名前も決まっていません。都市観光に私たちは今ようやく進出しようとしているところです。旭川グランドホテル(北海道旭川市)がその第1号案件です(経営権を取得し4月から運営を開始した)。

 これは歴史のある、いいホテルで、今コンセプト委員会を開いて、現地スタッフが都市観光ホテルの在り方を一生懸命検討してくれています。

――都市観光は潜在的ニーズがかなりあるのでしょうか。

 すごく大きいです。ところが都市ホテルは意外に商用のニーズに応える施設とサービスになっているんです。

 星野リゾートはいまさらながら都市ホテルに入るのですから、いったんビジネス需要を忘れて、観光需要だけに徹しようというのが私たちのアプローチです。おそらく施設もサービスもがらりと変わるでしょう。

――具体的にはこれからですか。

 旭川グランドホテルがいい例になります。今走らせているコンセプト委員会には、観光客に特化した案を練ってもらいます。これだけは私が譲れない点で、あとは現地の発想力に委ねます。

――しかし結局は、商用客も取ろうとなりませんか。

 コンセプトを考える段階ではビジネス需要を捨てますが、もしかすると出張者にも、都市観光用のホテルの方が快適かもしれません。ただし世界の市場を見ると、ビジネス出張はテレビ会議などの普及で伸びていないんです。都市観光は、実は世界的に中間層が増えていますから、どんどん伸びています。

――現在、運営する拠点は37になるそうですね。全体の収入を合計した取扱高はどのくらいですか。

 2016年で459億円です。目標を持ってやっているわけではないのですけど、競争力さえ強めれば、結果的に成長しているという感じです。
(星野氏のインタビューは今回で終わりです)

■聞き手 森 一夫:「わが経営」を語る(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:7/25(火) 2:20
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