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米韓首脳会談で株上げた文大統領

7/18(火) 14:00配信

ニュースソクラ

韓国内の反米活動の活発化を押しのけた4兆円投資プラン

「無難な出発」 「期待以上の成果」 「初の訪米外交は合格点」…。

 6月 30日、米国ワシントンで開かれた文在寅(ムン・ジェイン)大統領とトランプ大統領との初の米韓首脳会談について、韓国のマスコミは表現の違いはあるが、「概ね成功」いう見方が多かった。

 具体的には、米韓間の堅固な同盟関係を再確認した点や、対北朝鮮政策における米韓の相互協力を強調した点などを成果にあげ、米韓FTAの再交渉や在韓米軍駐留費用の再交渉に対するトランプ大統領の発言については懸念を表した。

 言い換えれば、莫大な経済的課題を抱えることになったにもかかわらず、米国との外交を正常軌道に乗せたことによって成功した会談として評価したのだ。

 これまで計64回も行われてきた米韓間の首脳会談で「米韓同盟の強化」や「米韓の相互協力」という単語が入った共同声明文は決して目新しいことでも、珍しいことでもない。にもかかわらず、今回の首脳会談の成果について韓国のマスコミがこれほど持ち上げている理由はどこにあるのだろうか。

 それはつまり、文政権のスタート以来、韓国内で広がりつつあった米韓関係に対する危機感を、今回の共同宣言文が一気に払しょくしたことにある。

 米韓首脳会談が開催される直前、韓国では現在の米韓関係を象徴するいくつかの事件があった。 まず、6月10日、京畿道議政府(ウジョンブ)市に位置する米軍2師団の「師団創設100周年記念コンサート」が反米団体の妨害で開催不能の憂き目を見た。

 コンサート出演が決まっていた歌手らが反米団体の脅迫に屈して出演をキャンセルし、イベントが中止されたのだ。イベント会場の外には反米スローガンを叫ぶ市民団体が集まった。

 忠清南道天安(チョンアン)市は米軍やその家族たちと天安市民が参加するハロウィンパーティーを計画したが、市民団体の反発に遭いイベントの開催を保留することに決定した。THAAD配置問題などで過去のどのときよりも反米世論が強い状況で、イベントを強行し衝突が起きることを恐れたからだ。

 朝鮮戦争開戦日の一日前である6月24日には、「THAAD配置の反対」を叫ぶ市民や団体6000人余り(主催側発表)が、ソウル光化門(クァンファムン)に位置する駐韓米国大使館を包囲してデモを行った。

 歴史上初めてデモ隊に包囲された米国大使館は、デモを許可した韓国政府に対して、「外交公館保護義務を規定したウィーン条約に反する」という公式抗議書簡を送った。

 THAAD配置場所に選定された慶尚北道星州(ソンジュ)市では星州市民や市民団体で構成された数十人の民間人らがTHAAD配置基地へ向かう道路に簡易検問所を設置、通行する車を検問している。

 このため、わずか2キロ先に位置した基地内へ入るTHAAD運用に必要な燃料などの物資を、わざわざヘリコプターを飛ばして運んでいる。

 政治の世界でもTHAADの配置をめぐる米韓間の摩擦音が聞こえてきた。5月末、大統領府は「すでに配置された2基のTHAAD発射台以外に4基が追加で搬入された事実を故意に報告書に記載しなかった」と問題を提起し、国防部を追及した。

 これについて与党・民主党は国防長官を対象とするTHAAD聴聞会を国会に要求したが、野党の反対で却下された。6月に入ると、文在寅大統領はTHAAD配置には環境アセスの手続きが必要だとし、この4月下旬から行われている配置作業を中止させた。

 これに対し、米政界では韓国の文政権に向けた強い不満の声が出てきた。米国務省は「THAAD配置の手続きは透明だった」と不快感を示した。

 ダービン議員(米上院民主党院内総務)は、文大統領が対北朝鮮政策において、「米国より中国と協力することを考えているようだ」といい、「THAAD関連費用を別の所に使うことも可能だ」とTHAAD撤回の意志を仄めかした。

 THAAD配置をめぐる米韓間の対立が表面化し始めると、韓国の国内世論はTHAAD問題により米韓同盟が揺れかねないと見始めた。文在寅大統領とトランプ大統領との初の米韓首脳会談が歴史上最悪の会談となりかねないという懸念を示した。

 しかし、首脳会談直前、韓国の大統領府や外交部の必死の努力でTHAAD問題は会談の議題から排除された。さらに文大統領が持って行った総額40兆ウォン(約4兆円)規模の経済投資という手土産はトランプ大統領を大いに満足させた。

 両首脳は、終始和やかなムードで会談を終え、韓国国民たちは胸をなでおろした。 文大統領としては、今回の米韓首脳会談が米国はもちろん、文大統領の外交アイデンティティを疑っていた韓国内の保守層まで安心させた「大成功」の会談だったわけだ。

 その証拠として首脳会談直後、文大統領の支持率は3%も上昇した。

 しかし、成功とみなされる米韓首脳会談にもかかわらず、THAAD問題に対する文政権のあいまいな態度は、今後も韓国と米国の間に潜んだ爆弾になる可能性が高い。

 文大統領は今回の訪米期間中に米議会の指導者たちと面談する席で「私や韓国の新政府がTHAAD配置を撤回する意思を持って(環境アセスの)手続きを取るのではないかという疑問は捨ててもいい」と明らかにした。

 これにより、米議会では年内にTHAAD配置が完了することを期待する流れとなっている。しかし、韓国のマスコミによると文大統領が指示した環境アセスの手続きには少なくとも1年以上の時間が必要とされる。

 星州では、現在も依然として民間人がTHAAD基地前に検問所を設置して出入りする車両を統制しているが、警察は傍観している。米韓首脳会談が開かれた30日にもソウル光化門ではTHAADの反対デモが1泊2日に亘って行われていた。

 これらのTHAAD反対デモを主導するのは進歩的性格の強い市民団体で、文政権の核心支持層だ。しかし、最新の韓国の世論調査ではTHAAD配置に対する賛成が57%で、反対世論(27%)より二倍以上も高い。

 外交的には米国と中国との間で板挟みになって打開策に腐心する文在寅大統領だが、国内的にも核心支持層と一般国民との間で双方を満足させる妙手を探すために気を揉む日々となるだろう。

金 敬哲 (ジャーナリスト 在ソウル)

最終更新:7/18(火) 14:00
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