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子どもの「考える力」と「自己肯定感」を育む

7/18(火) 14:00配信

ベネッセ 教育情報サイト

先日、少し背筋が寒くなるようなお話を聞きました。学校生活に不安を感じる生徒たちの相談にのっている中学校の先生の言葉です。
「不登校気味だったり、体調や気分が不安定だったりする子どもたちには、共通点があるんです。全部、親が決めて、ことごとく手を出しているんです。子ども自身の考えがまるでありません。何を聞いても、『親がそうしろって言ったので』と答えます。非常に自己肯定感が低いのも気になります」

私にも思い当たるふしがあります。親に進路選択のほとんどを委ねた結果、入学後、新しい環境に適応できなくなってしまうお子さんのケースです。「とりあえず、入学したけど、何がしたいのか自分ではわからなくなりました。もうやめたいです」と言います。

手と口を出すから「考える力」と「自己肯定感」は奪われる

小学生の頃、不登校だったという大学生が、私のコーチング講座に参加してくれたことがありました。最終的に、学校生活に戻ることができたそうですが、それは、親がそっとしておいてくれたからだと言います。

しかし、不登校になった当初は、そうではありませんでした。「もし、自分で言いにくいことがあるのなら、先生や友達に親から話してあげるよ」とか、「この本を読んだら、元気になって学校に行けるかもしれないよ」などと言われると、そのたびに、「自分はダメな子どもなんだ」と落ち込んだそうです。「こうしたら?」、「こうしなさい」と言われることで、よけいに、どうしたらいいのか混乱していったと言います。

よかれと思って、手や口を出してきたことが、子どもの「考える力」や「自己肯定感」を奪っているとしたら、それはとても罪深いことです。

まず、「あなたはどうしたい?」と聞く

一方で、「すばらしく意欲的だな!」と感じる大学生にも、折々に出会います。コミュニケーション力が高く、自分の考えをハキハキと話します。考え方も非常に前向きで、落ち込むことはめったにないと言います。いったい、どんなご家庭だったのか?と、つい、聞いてみたくなります。そこで、質問すると、こういう若者から、必ず返ってくる答えがあります。

「『勉強しなさい』と言われたことは一度もないです」。これはもう、判で押したように共通しています。だからと言って、「勉強しなかった」という人は一人もいません。自分で計画を立て、自発的に勉強してきたという人ばかりです。

とりわけ、明朗でプラス思考の学生Aさんのこの言葉は印象的です。
「うちの親は、『あなたはどうしたい?』といつも聞いてきました。『友達が塾に行くから、私も行ったほうがいいかな?』と聞いたら、逆に、『あなたはどうしたい?』と聞くし、小学生の頃、学校に着ていく服も、1年生の頃から、『あなたはどうしたい?』と私に選ばせていました」

子どもの頃から、自分で考え、自分で決めて、行動してきた人は、気持ちよいほど、前向きです。「自分で考え、自分でできた」体験を積み重ねていますので、何か困難なことに出合っても、「きっと、自分ならなんとか乗り越えられる」と考えます。これは、すばらしい「自己肯定感」です。

どんどん任せる

朝、自分で起きること、着て行く服を選ぶこと、持ち物を確認することなど、これまで、何かと手をかけてきたことがあれば、一度、子どもに任せてみることをお薦めします。「もうあなただったらできそうだから、今日からは自分でお願いね!」と手を放してみると、意外とできたりします。「任せる」ことは、相手の力を信じていないとなかなかできないことです。ですから、「任せる」ことは「あなたを信じているよ」という想いを行動で示すことと言ってもよいでしょう。任されてこそ、相手は自分で考えようとしますし、「私は信頼されている」という自己肯定感を持てるのです。

(筆者:石川尚子)

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