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海を未来の電源に、IHIの海流発電システムが実証段階へ

7/19(水) 7:10配信

スマートジャパン

 海に囲まれた島国である日本において、海洋エネルギーの活用は次世代のエネルギー源として大きなポテンシャルを秘めている。だが、太陽光や風力などの他の再生可能エネルギーと比較すると、発電技術およびコストの両面で具体的な手法は確立できていない状況だ。

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 そこで新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2011年度から海洋エネルギー利用技術の研究開発プロジェクトを立ち上げ、日本企業の技術開発を支援している。欧米では波力を中心に海洋エネルギー発電システムの開発や実証が進んでおり、「日本でも海洋エネルギー利用技術の開発が急務な状況に」(NEDO)という。

 このほど同プロジェクトで海流発電装置の開発を進めてたIHIが、100kW級の実証機を完成させ、2017年7月7日に報道陣に公開した。夏に鹿児島県で実証を行う計画だ。実際の海流を利用した100kW規模の海流発電の実証は「世界初」(IHI、NEDO)だという。日本近海に眠る海洋エネルギーの有効活用に向け、大きな期待が掛かる実証だ。

 海洋エネルギーを利用した発電の手法は複数ある。波のエネルギーを利用する波力発電、潮の満ち干きによる海流の動きを利用した潮流発電、そして一方向に流れ続ける水流を利用する海流発電などだ。IHIが開発したのは海流発電装置で、名称は「かいりゅう」。名前は実証を行う鹿児島県十島村(としまむら)の小学生から公募した。

 開発した発電装置は、海底に設置するシンカー(おもり)と特殊なロープで接続し、水中に浮遊させるように設置する。海面から30~50mの深度で、直径11mのタービンを備える2つの水車を海流で回転させて発電する。発電した電力は海底送電ケーブルを通して、陸上の受電設備に送電する仕組みだ。400V(ボルト)で発電し、6600Vに昇圧して送電する。こうした発電システムは、水深1000m程度まで設置可能。発電装置本体は海面から数十mの深度に位置するため、船舶の航行などへの影響も回避できるとしている。

 発電装置全体の幅・全長はそれぞれ20mで、定格流速は1.5m/s。海流の速度が一定以上になった場合、タービンの角度を調整して回転数を落とし、発電機を守る仕組みになっている。左右2基の水中タービン水車はたがいに逆方向に回転する。これにより回転トルクを相殺し、海中で安定した姿勢を保持することで発電効率を高めるという。浮力を調整する機能も備えており、メンテナンスを行う際には海面に浮上する。 

鹿児島県沖で実証へ

 IHIとNEDOは2017年7月から、実際の海域を利用して開発した実証機の実証試験に着手する。実証場所は政府から「海洋再生可能エネルギー実証フィールド」に選定された、鹿児島県十島村の口之島(こうのしま)だ。黒潮が流れるこの海域の沖合5km、水深100mの地点に発電機を設置する。

 まずは2017年7月下旬から、鹿児島県いちき串木野市「串木野港」の沖合で1週間程度の曳航(えいこう)試運転を行い、その後8月中旬から口之島沖に移動して1週間程度の実証試験を実施する計画だ。発電性能や姿勢制御システムの性能などについて検証する。

将来は4倍に巨大化

 さまざまな再生可能エネルギーの利用において、気になるのが発電コストだ。IHIは今回の100kW級の実証機はあくまでも発電システムの性能検証が目的であり、コスト面だけに着目すると、現時点では他の発電方法より「非常に高い」(同社)という。

 発電コストを下げるためには、システムの費用を下げつつ発電量(設備利用率)を高めていく必要がある。海流発電は設備利用率の面では、他の太陽光や風力より有利だ。IHIによれば太陽光や風力が20%前後の設備利用率なのに対し、日本近海での海流発電は40~70%の設備利用率が見込めるという。

 システム費用については、発電設備の大型化、つまりは出力の増強によって1kW当たりの単価を下げていく方針。IHIでは今回の実証試験を経て、2020年までに海流発電システムを実用化する方針を掲げている。その後2020年代に発電システム1基当たりの規模を、実証機の20倍に相当する2000kWまで高める方針だ。この場合、タービンの大きさは約40mになるという。こうしてNEDOが目標とする、1kWh当たり20円という発電コストに近づけていく考えだ。

 ただ、こうしたシステムのコストだけでなく、メンテナンスの手法やコストの検証、周辺環境への影響評価や漁業権との兼ね合いなど、実用化に向けた課題はまだ残っている。だが、季節や天候の影響を受けにくい海流は、未来のベースロードロード電源としての期待も大きい。特に日本近海を流れる黒潮は、世界トップクラスの大きなポテンシャルを持つ海流とされており、大きな再生可能エネルギー源として注目されている。日本近海の大規模な未利用エネルギーを生かすための第一歩として、実証の成果には大きな期待が掛かる。