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お金の落とし穴「損したくない気持ち」が「損につながる」ワケ

7/19(水) 17:20配信

ZUU online

人は、「得することの喜びよりも、損失の痛みを大きく感じる」という研究結果がある。100円のお得より100円の損失、1万円のお得より1万円の損失、100万円のお得より100万円の損失の方が大きく感じるということ。

例えば私の行きつけの喫茶店では、コーヒーを 1 杯注文すると当日中ならどの店舗でも100円で2杯目が貰える。春と秋の年に2度買いに行くスーツショップでは、2着目が1万円で購入できる。他にもセットでお得、保証期間の延長、単品でなくセット価格、閉店セールも同じだ。

これらに遭遇すると、損を被ることがない様に一見得するような行動をとるが、しかしそこには落とし穴があり、実は損をしているとしたらどうだろうか。自分が正しい行動をとっていると自信を持っていえるだろうか。

■投資の損を何とか回復させようとする心理

このようなことがよく引き合いに出されるのは投資のときだ。値上がりしているときの利益確定は苦も無くできるのに、値下がりした時の損切りができない。損切りできない間にも相場はどんどん値下がりし、売るに売れない価格まで値下がりしてしまう。

いわゆる塩漬け状態になるまで価格がさがってしまい、その後一向に値上がりしない。バブル時に株を買ったままの方や、ITバブルやリーマンショック前に投資信託を買ってみたものの、いまだに持ち続けている人は多い。

売るまで損は確定しないとか、いつか価格が戻るだろうと期待をしているのだが、既に10年、30年と値段が戻る気配はない。値下がりしたまま子供には言えない……と口を堅く閉ざす高齢者も多い。

いつまで保有するつもりか聞くと、「価格が戻るまで」という答えが返ってくる。頭では二度と価格が買値に戻ることはないとわかっているが、心が受け入れることを拒んでしまう。そして何もできないまま時が過ぎていく。問題を先送りしてしまうことで、損失という痛みを回避することになるのだが、結果として損切りをすることができず、元本がさらに減るという損失と、損切りをすることで得ることができた別の機会の投資に対する機会損失を産んでいるということになる。

■損失を取り戻そうとギャンブルへ そして痛い目に……

ここでのポイントは「損をしたくない」と思う心が損を拡大させていることだ。投資の世界で気を付けたいのが、損失を取り戻そうとギャンブルしてしまうことだ。例えば、投資の勧誘で損を取り戻しましょうという言葉をかけられたとする。すると、損が気になって仕方なかった投資家は、損失を取り戻したい一心で、次の投資に動く。新しい投資に伴い手数料を払う。これは典型的な投資の勧誘である。詐欺の被害にあった人が、新手の詐欺に引っかかってしまうのも同じ理屈である。被害を取り戻したい一心で、残ったお金を投資してしまい、痛い目を見る。

投資以外にもこんなケースがあるだろう。50万円のテレビを購入するとしよう、1年はメーカーによる保証がついているが、2年目以降の保証はない。購入時に1万円を支払えば、保証を延長して何十万円とするテレビが壊れた際にも修理などにより使い続けられるようにしてくれるという。この場合、テレビの価格が高いほど、保証に価値がでてくるし、テレビが安いと保証の価値は薄れていく。例えば100万円のテレビの保証が1万円なら安いと感じるだろうし、10万円のテレビに1万円の保証だと高く感じるだろう。

定額での食べ放題や飲み放題でも損をしないために損をしているケースがある。この場合の損は、お金と健康である。焼肉食べ放題に行って、普段以上の焼き肉を食べる。お腹がいっぱいになっても元を取りたい一心で次の注文を繰り返す。すると確かに普段の注文よりたくさん食べることができるだろう。しかし、食べ過ぎて健康への悪影響があるかもしれない。宴会での飲み放題プランも同様だろう。「1人何杯飲めば元がとれる」というような計算をする人はいないだろうか?3杯飲めば元が取れるから4杯、5杯と注文する。翌日飲み過ぎで仕事に支障が出たり、二日酔いで頭痛に悩まされたりすることもあるだろう。

■お得でついつい買ってしまうということも……

例えばスーパーで2つで500円、3つで900円というセット価格の値札を見たことがあるだろう。どうせ食べるから一緒に買っておこう。などと思ってついでに買ってしまう。スーツ量販店ではスーツ二着目1万円などとして、追加購入を促進する。

単価の高いスーツだから、安い価格で買った方が特に思って買う。ファーストフードでハンバーガーと飲み物を買おうとしたところ、レジでセットを進められてポテト付きのハンバーガーセットを注文する。今必要ないのに、お得だからという理由だけでついつい買ってしまう。お金が関係すると冷静なつもりでも、判断を誤ってしまう。あなたの意思決定は常に正しいと言えるだろうか。もしかすると、ほとんどの意思決定が誤っているかもしれない。

高橋成壽 寿FPコンサルティング(http://www.kotobukifp.co.jp/profile/fp01/)
慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、金融関係のキャリアを経て2007年にファイナンシャル・プランナー事務所を設立。現在は寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター、寿アセットマネジメントなど、複数の金融サービス会社の代表を務める。メディアへの出演多数。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)がある。FPサービスとして「ライフプランの窓口」、「相続センター神奈川」を企画運営している。

最終更新:7/19(水) 17:20
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