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トレーニングは手段にすぎない! ライザップが提供するのはお客さまの自己実現

7/19(水) 11:14配信

ITmedia ビジネスオンライン

 「結果にコミットする。」をキャッチコピーに、日本のみならずアジアにも店舗を展開するライザップ。現在120店舗を運営している完全個室のパーソナルトレーニングジムだ。代表取締役社長の瀬戸健氏は2003年に起業し、豆乳クッキーの通信販売で成功を収め、2012年にライザップ事業を開始。現在の会員数は8万人を突破し、右肩上がりに業績を伸ばしている。ライザップに通うとなぜ痩せるのか、ライザップがお客さまに選ばれ続ける理由について話を聞いた。

●ダイエットに重要なのは、メソッドよりも続けさせること

井上 私の回りでもライザップに通っている人がたくさんいます。多くのお客さまを満足させ続けるために、どういったサービスを提供しているのですか。

瀬戸 ライザップは完全個室という環境で、トレーナーとマンツーマンでトレーニングを行います。1回50分で週2回、2カ月が基本のコースです。トレーニングのとき以外でも、お客さまは1日3回、毎日必ず食事の写真をトレーナーに送り、トレーナーはそれに対してフィードバックを行います。2カ月コースですので、食事の写真を合計180回近く送ることになります。

井上 2カ月で10キロ以上減量するお客さまも多いそうですね。どういったメソッドがそれほどの減量を可能にしているのでしょうか。

瀬戸 今の時代、本屋へ行けばいくらでも有効なメソッドを知ることができます。しかし、メソッドを知っていれば、ダイエットに成功するわけではありません。重要なのは、続けることです。私たちに求められているのは、続けた方がいいのは分かってはいるけれど、つい三日坊主になりがちで継続することが難しくなってしまう方々に対して、その習慣を変えていくことです。徹底してその人に寄り添って変えていくことが必要です。

 パーソナルトレーニングは、この「三日坊主市場」の1つですが、私たちは他にもゴルフ、英会話、料理教室などの事業を展開しています。

井上 「三日坊主市場」とは面白い発想ですね。他にもいろいろな事業が考えられますね。ライザップに通い、ダイエットに成功すると、人は外見だけではなく、内面も大きく変わりそうですね。

瀬戸 お客さまが願う理想の体を得るだけでも、その人が本来持っている自信を引き出すことができます。自分に意識が向くようになり、服装にも気を遣うようになります。スーツや靴を買ったり、毎日鏡を見るのが楽しくなったりします。自分に対して興味がわいてきて、自分のことをもっと好きになれます。そういった意識の変化によって、オーラまで変わってくる人もいます。いい時計、バッグ、車を手に入れることで自分の価値を高めようとするように、ライザップも自分の価値を高めるための自己投資なのです。

●ときには心を鬼にして徹底的にフィードバックする

井上 トレーナーが、お客さまとどのように接するかがダイエットの成功に大きく関わっているんですね。

瀬戸 お客さまのために何をすべきかを、トレーナーたちに理解してもらうことが最初は難しかったです。本当にお客さまのためと思っていたら、心を鬼にして甘やかさずに向き合うことが必要だと話しています。忙しいからつい食べ過ぎてしまう場合が多いのですが、それを受け入れることはお客さまのためにはなりません。お客さまに責任を負っていないことになります。

井上 「寄り添う」とは受け入れることではなくて、お客さまを変えるために働きかけることなのですね。

瀬戸 愛情の反対は、嫌いではなく、無関心だといいます。本当に愛情を持っていたら向き合い方は変わります。本気で向き合うことで、お客さまの行動を変化させ、結果に導くことが求められていると常に意識させています。

 ほとんどの人は、子どもの頃から食べ物は残さず食べるように教育をされています。外食の多い人が食べ物を残さずに食べ続けると、太るのは当たり前です。その習慣を変えるためには、いつも寄り添ってフィードバックをくれる身近な存在が必要なのです。

 2カ月間毎日寄り添い、結果を追い求めることで信頼関係ができ、終わるころには、トレーナーもお客さまも感極まることも多いんです。ここまで寄り添い、一緒になって夢を描き、その達成に向かってともに歩んでいくパーソナルトレーニングは他では多くみられないライザップオリジナルのメソッドである、と自負しています。

井上 トレーナーの採用率が3.2%だと聞きました。かなり狭き門だと思います。それだけ求めるレベルが高いということですね。

瀬戸 トレーニングに関わる知識、食事にまつわる知識だけではなく、私たちが最も重要視しているのが、お客さまとのコミュニケーションです。一般的なパーソナルトレーニングジムでは、筋肉の構造などトレーニングのことだけに集中しています。それに対して、私たちが最初に学ぶのは、お客さまのやる気のスイッチをオンにするためのゴール設定についてです。

井上 トレーニングを続けさせるためには、ゴール設定は重要ですね。

瀬戸 ゴールが明確になり、そこに達する行動を取ることができれば、10キロ痩せることは難しくありません。お客さまの中に明確なゴールを描けるかどうかが勝負なのです。それで8割は決まるといっても過言ではありません。ゴール設定に関しては、トレーナーが徹底的にフィードバックし続けます。

●トレーニングはあくまで手段にすぎず、目的ではない

井上 トレーニングそのものではなく、痩せて自信を持つという結果を提供しているのですね。

瀬戸 そうです。その点が、一般的なフィットネスジムとは全く異なるアプローチをしていると思います。トレーニングはあくまでも手段です。お客さまが本当に求めているものは、トレーニングではなく、トレーニングによって理想の体を得た自分であり、そのことによって自分の価値を高めることです。「結果にコミットする。」と言っているのも、お客さまが求めているものを必ず提供するという姿勢を伝えたいからです。お客さまとの向き合い方という点では、一般的なパーソナルトレーニングと一線を画している、と確信しています。

井上 ライザップが他に展開しているゴルフや英会話、料理教室でも、根本的な考え方は同じですか。

瀬戸 ライザップグループの理念は「『人は変われる。』を証明する」です。最初のヒットは「豆乳クッキーダイエット」でしたが、その頃からこの思いは変わっていません。現在までに美顔器、パーソナルトレーニング、ゴルフ、英会話、料理教室、アパレルなどさまざまな領域のサービスや商品を提供してきましたが、私たちが手掛けているのは、自己投資、自己実現の産業ということで一貫しています。商品やサービスはあくまでそのための手段にすぎず、目的ではありません。

井上 なるほど。いろいろなことを手掛けているように見えても、事業の軸は明確なのですね。だからこそ、お客さまにバリューを提供し続けられるのですね。

瀬戸 人は理想の体を得ることによって自信を持つことができ、視野が広がります。お客さまはライザップに通うことによって自己投資をしています。自分の価値を高め、生きていることをもっと認められたいのです。こういった自己実現の欲求、自己肯定感を満たそうとすることには、終わりはありません。

 食べることに精いっぱいで、生きることだけを考えていた戦後すぐの時代には、人々は回りからどう思われているかと気にする人はいませんでした。しかし、今は違います。自己肯定感を高めたい、多くの人に認められたい時代になっています。

 アパレル業界でいえば、今は必需品を提供するよりも、主流は服やアクセサリーを身につけることで、自分の価値が高まることを期待されていると思うんです。私たちが事業をする目的も、突き詰めれば、自己肯定感を高めることにつながります。

 自己実現の市場でサービスを提供するにあたり、分かっておかなければいけないのは、自己実現に終わりはないということです。たとえ巨額の富を手に入れ、あらゆるものを手に入れたとしても、満足することはありません。人の悩みは一生なくなることはなく、より自分を高めたいと思う限り、悩みや不安は必ず出てきます。そういった悩みを解消するための手段には、あらゆるものが考えられます。自己実現の市場は無限といえます。

対談を終えて

 顧客が真に求めているものを追求する……。企業精神としては当たり前といえることかもしれませんが、それをあり得ないレベルで実行しているのがライザップ躍進の理由だと感じました。顧客の幸せのためだといいながら、どうしても売れること、売れ続けることが目的になっている企業が多い中、あくまで自社のサービスと商品は手段であり、顧客の目的にフォーカスする姿は圧巻です。

 痩せることが目的であり、もっと言うと、痩せることを通して顧客が自信と誇りを持ち、人生そのものを自分でデザインする、自己実現できる人になることが目的です。そしてこれらを得ることは、顧客にとって一生の財産になります。そこまで見据えた瀬戸社長の事業熱は本物です。対談を通して、「結果にコミットする。」という有名なキャッチフレーズの意味と深さを実感しました。人間の意志は弱く、だから続けられる環境が大切なのです。完全なサポート体制が整っているライザップに身を預けてみると、新たな自分がきっと見えてくるはずです。

(聞き手:井上敬一、文:牧田真富果)
(ITmedia エグゼクティブ)