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思い込みを捨てよ!! 非ITでも成果は出せる――「働き方改革」の実践者が語る大切なポイント

7/19(水) 14:03配信

ITmedia エンタープライズ

 2017年7月18日に、東京で開催された「VMware Conference 2017 Summer」。冒頭のセッションで、大手SIerのSCSKおよびグループウェアのサイボウズで、「働き方改革」に取り組んできた担当者が、そのきっかけや取り組み、今後について語り合った。企業の規模や業態が異なる2社に共通していたこととは何だろうか。

【サイボウズが現在取り組んでいる施策。「働き方改革」の行き着くところに、市場性を取り入れた評価報酬制度がある】

 1969年に設立され、2011年10月にCSKと合併して生まれたSCSKは、その合併を契機に新しい経営理念「夢ある未来を、共に創る」を作った。この“人を大切にするというメッセージ”の背景について、SCSK 理事 人事グループ 副グループ長 小林良成氏が説明した。

 小林氏は「数年前まで、SIerなどのIT業界は長時間労働があたり前で、必ずしも生産性の高い働き方をしていなかった。さらに、子育てや介護などの両立が難しく離職者も増え、人材が集まらず育てにくい時があった。一方でお客さまの要望も高くなってきて、客観的に見て負のスパイラルに陥っていた」とし、合併時に見直しを行って、トップダウンで仕事の質を高める「働き方改革」を計画したことを明らかにした。

 SCSKでは、健康的な働き方を作ろうというところからスタートしており、「心身が健康で働きやすい職場作りに向けた意識改革と業務改善活動」を目的に、2013年4月から「スマートワーク・チャレンジ20」を実施した。これにより、月の平均残業時間が20時間(2008年度は同35時間)、年次有給休暇取得日数が20日(同13日)と目標を達成できたという。

 スマートワーク・チャレンジ20で、柱となったチャレンジは4つあると小林氏は語る。「1つ目は、会社の本気度を示すために、有給休暇や残業目標を達成した組織単位で特別ボーナスを支給(今は月給に含まれている)し、残業代20時間分を固定支給したこと。2つ目は、社員の気持ちへ働きかけるべく、有給休暇を取りやすい環境を作ったこと。例えば、有給休暇を全て使い切っても、病気などの時には休めるバックアップ休暇を5日間設定した。

 3つ目は、長時間労働をなくしていく最大目標を実現するべく、労働時間を記録して削減を図ったこと。こちらは、月80時間を超える残業には、社長の承認が必要とした。4つ目は、残業の多くがトラブル関連なので、マネジメントを強化して手戻り防止を目指したことだ。これらの施策により、成果は翌年度から出始めた」(小林氏)

 「基本的に、目標は会社で定めるが、計画の実行は各部署に任せることで成果が出たと思っている。今ではテレワークなども行っており、仕事のアウトプットを上げる方策について地道に取り組んでいる」と小林氏はまとめた。

●高い離職率の是正がきっかけのサイボウズ

 続いて登壇したサイボウズ 執行役員 事業支援本部長 中根弓佳氏も、働き方改革の発端は経営理念の見直しにあったという。

 「1997年に創業したサイボウズは、『もっと簡単に使えるグループウェアを世に広めよう』という理想にあふれたベンチャー企業だったが、M&Aなどで続々と社員が増え、2005年には離職率が25%を超えるまでになってしまった。そこで社内改革を進め、理想を見失ったときに改めて立ち返る企業理念について、各社員に聞いて回った。すると、グループウェアを作っているだけではなく、そのグループウェアを使ったチームが幸せになったときに喜びを感じるということに気が付いた。そこで、2007年に新たなスローガンとして『チームあるところサイボウズあり』を掲げた」(中根氏)

 中根氏は「大事なことはビジョンへの共感で、サイボウズでは外見だけでなく内面の多様性を重視する個性の尊重、人と人の間で大事な信頼関係を示す公明正大などを挙げている。特に『自立』と『議論』の文化を大事にしているが、働く場所は本来自由に決められるべきだから、あなたが決めていいですよと伝えるが、実際にやろうとすると意外と難しい。だから、自立して選択してほしいという意味を込めたのが自立で、もう1つの議論は、いろいろな考え方があって当たり前、チームとして議論してやっていこうという意味だ」と述べた。

 さらに、「さまざまな取り組みを行ってきたが、今では、複業も承認しており、自律的なキャリア支援、働く時間や場所の選択の他、職場以外でもコミュニケーションをとれる場所や機会をたくさん作っている。チームの中で必ずあるのがコミュニケーションで、そこにサイボウズを入れて役立ててほしいし、サイボウズ自体もチームワークあふれる会社にしたい」と中根氏は力を込めた。

●20日間の“有休義務”を社員に課した

 モデレーターとして、ヴイエムウェア 執行役員 ゼネラルビジネス営業本部 本部長 石井晃一氏が加わり、ディスカッションが行われた。

 SCSKの小林氏は「働き方改革の端緒は経営トップが働きかけたことにある。これまでの付加価値をお客さまに提供し続けることができるのか、という強い疑問があり、社内では抵抗もあったが乗り切った」と話すと、サイボウズの中根氏も「きっかけは高い離職率だったが、当時は100人ちょっとしか従業員がおらず、長く働いてもらう土壌を作らないといけないと経営層が判断してスローガン(経営理念)の見直しを行った」と続けた。

 興味深かったのは、小林氏が従業員の権利と義務について語った次の発言だ。「有給休暇は従業員の権利だが、20日会社を休むのは義務だという意識付けを社内にしてきた。それを実現して、仕事で成果を出すことが社員の証という風潮もある。どうアウトプットを出していくのかを社員が考え、結果に対するコミットが強まった」(小林氏)

 働き方改革を推進している中で、苦労した点は何だろうか。

 小林氏は「取り組み当初は、残業を減らして有休を取ろうとやってきたが、特に中間管理職の層が不満を持ち、人事に注文を付けてきた。そこで、メンバーの心をどうやって変えていくか、理解を得ていくのかを考えるのが大事と学んだ。一方で、短時間でいかに成果を出すのかという視点では、人材育成について悩んでいる」と吐露した。

 中根氏も「本当に苦労ばっかりだった。例えば、働く時間と場所をそれぞれ3種類に分類して、9タイプの働き方を選択肢として用意したが、素直にメンバーが選べるかといったら、実は選べないという現実があった。本当はどうしたいのかを、把握するのに時間がかかった。会社のメッセージが、なかなか社員まで伝わらないのが悩みだ。今では、『そもそも700人近い全社員を、なぜ9タイプに分類するのだ』という疑問が出てきており、それに伴う給与体系についても絶賛考え中だ」と苦笑交じりに語る。

●思い込みを捨てて、小さな積み重ねから始めよう

 世間では、働き方改革でITの活用が叫ばれているが、実際のところはどうなのだろう。

 中根氏は「今は売り手市場で人材がなかなか集まらず、人材不足になっている。人事や経理、総務はルーチンワークが多いので、極力ITにがんばってもらいたい。IT部門は本当に強力なパートナーであり、働き方改革では一番大事なパートナーと思っている」と発言。

 逆に小林氏は「当社の場合、働き方改革の成果は非ITが8割くらい出している印象だ。メリハリを効かせて働いている社員を評価しており、かなりの部分が非ITでいけるのではないかと個人的には思っている。とはいえ、残り2割はITの力が必要なのはいうまでもない。業務の質を高めるのにITは不可欠であり、人事、IT、経営が一体となった組織が強いと思う」と主張する。

 これから「働き方改革」を実行する企業に対して、中根氏は「一言でお伝えするならば、“思い込みを捨てよ”に尽きる。自分の中で勝手に作っている思い込みが必ずあり、それに悩みながら殻を破るのが大事だが、1人だけでは解決しない。経営が風土、人事が制度、そしてIT部門が後押しする仕組みができると強い」とし、小林氏は「わたし自身の例で言うと、業務改善や残業時間を減らすなどで総労働時間の10%を減らしてきた。1時間に換算すると6分の削減であり、その積み重ねが働き方改革に結びつく。みなさんの課題に即した対応をすると成果が出せると思っている。また、多彩な施策をするにあたり、経営トップからは“心に訴えかけるように”と強く言われている」とエールを送った。