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アメリカの路上生活者からファッションが学んだこと

7/19(水) 11:26配信

Fashionsnap.com

 「楽をするのがファッションなのか?」デザイナー尾花大輔は自問した。最新技術を持つスポーツメーカーやアウトドアブランドと協業し、自身が率いるブランド「エヌハリウッド(N.HOOLYWOOD)」では近年、機能性が高く“イージー“なメンズウエアで支持を広げている。しかし長年通い続けているアメリカで不意に目に止まった路上生活者の姿が、ファッションについて問い直すきっかけになったという。

【画像37枚】注目を集めた重ね着スタイル

 尾花が着目したのは、路上生活者の装いだった。スウェットがネックウォーマーになり、梱包用ブランケットがコートになり、雨の日にはビニール袋がレインブーツになる。驚くような色彩を組み合わせていることも少なくない。彼らからファッションの根源的な意義を見出し、生きるための知恵やアイデアをリスペクトした。

 それらが落とし込まれたのがエヌハリウッドの2017-18年秋冬コレクションだ。ニューヨークで開催されたショーではストリートキャスティングで起用した多種多様なモデルが服を過剰なほど重ね着し、手には大きな袋状のバッグ。近年使用してきた機能素材やハイスペックな要素を極力排除し、天然素材がメインとなっている。決してストイックさはなく、遊び心を感じさせるほどサイズや着方にルールがない。“イージー“な方向に傾き続けているファッションをアナログに戻すことで、自由に解放するようなメッセージも込められた。

 エヌハリウッドは年2回のコレクション発表を始めてから今年で15年。過去にはアーミッシュに着目するなど、様々な時代や文化からインスピレーションを得て制作している。それらは政治や宗教といった特定の思想とは異なる軸で、純粋に美しいと感じたものをメンズファッションとして提案してきた。今回の新作コレクションも約1年半前から企画。だがニューヨークは新政権下で行われる初めてのファッションウィークで、また近年増加する路上生活者や貧困を巡る問題が後を絶たない。アメリカの社会問題に対する意図はなかったものの、一部がそのような見方をしたことで物議を醸した。

 しかしそれ以上に目立ったのがコレクションに対するSNSでのリアルな反響、そして現地の大手メディアによる好評価のレビューだったという。新規バイヤーから多くの問い合わせが寄せられるなど、結果的にビジネス面でもインパクトのあるシーズンになったようだ。日本とは異なる風当たりや様々な考え方と向き合った経験を、尾花はポジティブに捉える。「信じて進んできた道を疑わなかったが、間違っていなかった」。

 エヌハリウッドの2017-18年秋冬コレクションは、7月29日から直営店と取り扱い店舗で販売を開始する。路上生活者から学んだことは、消費者が手に取り擦り切れるまで着ることで、本当の意味で生きてくるだろう。

最終更新:7/19(水) 11:26
Fashionsnap.com