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モノを手放したら不安が消えたー家電製品もガス台もなくなったら快適で幸せな日々が待っていた

7/19(水) 12:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

「妙な暮らしをしている。きっかけは原発事故であった。あまりの惨事に、我々は原発がなくても生きられるはずだと勝手に節電を始めた。恐る恐る家電製品を手放し始めたら止まらなくなった。最後には冷蔵庫も洗濯機もテレビも捨て、ついには会社員という地位も手放し、築50年近いワンルームマンションへ引っ越しを余儀なくされた」(引用『寂しい生活』p.20)

【画像】古いマンションには全く収納がない。それでもモノがないので、困らないという。

「アフロ記者」として有名な稲垣えみ子さんは、2016年に朝日新聞社を退社。2017年6月に出版された最新刊『寂しい生活』には、原発事故をきっかけに、稲垣さんが家の中のものを一つ一つ手放していく過程が綴られている。なぜ「手放す」ことをやめられなくなったのか。「手放す」過程で稲垣さんは何に気づき、何を得たのか。本当の豊かさとは何なのか。朝日新聞社時代の元同僚で、Business Insider Japan統括編集長の浜田敬子が聞いた。

自分で整えられる暮らしのサイズは決まっている

Business Insider Japan(以下、BI):(自宅を訪れて)わ、本当に何もない! 東日本大震災の直後から節電を目標に始めた当初、今のような生活に至ると想像してました?

稲垣:いやー、もう全くこんなことになろうとは、という感じです(笑)。本にも書きましたが、最初は原発に反対するなら、まずは原発のない暮らしなんて本当にできるのか、自分でやってみなくちゃ説得力ゼロだと思って単純に節電を始めただけだった。ところがそれがどんどん面白くなってきてしまって。それまでずっと「ないと生きていけない!」と思っていた家電製品が、「意外となくても大丈夫じゃないか!」となるのが楽しかったんですね。例えば、掃除機がなくても、ほうきがあれば全然オッケーじゃないかと。その、ある種ゲームのような面白さに病みつきになってしまって、いろいろなモノを手放しちゃったんですよね。

でも途中からは、手放していく生活に新たな可能性を感じるようになったんだと思います。それまでは、お金を稼いで欲しいモノを手に入れて、また稼いでさらに次のモノを買って……、というのが豊かな暮らしだと信じきっていた。でも、実はモノを手放していく方が豊かなんじゃないかと。例えば、掃除のことで言えば、ほうきで掃除を始めたら、なんと生まれてはじめて掃除が大好きになって、家がどんどん綺麗になった(笑)、そんなことに、何か光明のようなものを感じたんですね。

BI:昔の洋服を毎日取っ替え引っ替えしている稲垣さんを知っている立場としたら、なんかこの“転換”が本当に驚きです……。

稲垣:いや私にしてみれば、毎日違う服を来ている浜田さんの方が「すごいなー」と(笑)。私にはもうそんなしんどいことはできません。自分で自分を整えられる暮らしのサイズって決まっていると思うようになったんです。暮らしを大きくすればするほど、自分ではコントロールできないものが増えてしまう。例えばすごい豪邸に住んでモノがいっぱいあったら、掃除だけで1日が終わっちゃいますよね。でも今までみんなそういう暮らしを求めてきて、結局暮らしのサイズが自分の手に負えなくなって、家電を買うとか家事のために人を雇うという方向になる。でも、「それって本当に快適なの?」と思い始めたら止まらなくなった。

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最終更新:7/25(火) 21:45
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