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ANAらが50億出資「ウイルス検知しない」防御技術とは? 雑居ビルから世界狙うベンチャー

7/19(水) 20:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

パソコンを攻撃するウイルスを探し出し、駆除するー 。ほとんどのユーザーがインストールしているセキュリティーソフトはこうして、パソコンを守っている。検知・反応と呼ばれるこの仕組みは、セキュリティソフトでは“常識”となっているが、この“常識”に挑むベンチャー企業が現れた。4月に事業展開を本格化したベンチャー企業Blue Planet-works(BPw社)だ。

【画像】Blue Planet-worksの中多広志社長(左)と、坂尻浩孝執行役員。オフィスは古いビルの一室。

「99%安全という飛行機に乗りたいですか」

「ウイルス対策ソフトの広告には検知率99%と書いてある。でも、99%安全ですと言われて、その飛行機に乗りたいですか」

東京都渋谷区のオフィスで、中多広志社長(56)はこう切り出した。

BPw社は、中多社長が2013年に立ち上げた動画メッセージを提供するKeepTree社が前身だ。今年4月、米ブルーリッジネットワークス社(以下、ブルーリッジ社)から、サイバー攻撃対策技術であるAppGuard事業を買収した。買収の際、BPw社に集まった資金は55億円にのぼる。出資企業は、電通、ANAホールディングス、第一生命保険など8社で、そうそうたる大企業が並ぶ。

AppGuardのおおまかな仕組みはこうだ。

従来のセキュリティーソフトは、ウイルスを検知し、反応する。検知と反応のプロセスを何度も繰り返すことで、安全性の向上を図っている。新しいウイルスは次々に登場するため、セキュリティー関連の企業は日々、新種の情報を集め、ソフトを更新してユーザーに提供する。すでに存在を知られているウイルスは検知できるが、未知のウイルスは検知できないリスクがある。検知率99%あるいは99.9%という数字は、こうした弱点を反映したものといえるだろう。

ハッカーに破られていない「要塞化」技術

一方、AppGuardは検知をしない。AppGuardをインストールしたシステムは「適正な動作」はできるが、適正でない動作は未知か既知かを問わず、動作が遮断される。セキュリティーの世界で「要塞化」と呼ばれる技術だ。米国で毎年開かれているハッカーが技術を競う大会でも、要塞化の技術はいまのところ、破られていないという。

検知をしないことから、日々ソフトを更新する必要はなく、ソフトのサイズも1メガバイト未満で軽い。6月27日に欧州で起きた、大規模なサイバー攻撃についても、BPw社は検体を入手し、防御可能であることを確認したという。

AppGuardは軽量であるため、電話や車の自動運転、IoT(モノのインターネット)などさまざまな分野への応用が可能だと言う。

中多社長は「これからはセキュリティーではなくセーフティー。完全ブロックを提供したい」と説明する。

BPw社はいまのところ、45平方メートルほどのオフィスに、社員8人。4月以降、ネットセキュリティー最大手であるシマンテックから、日本法人社長だった日隈寛和氏(47)と執行役員だった坂尻浩孝氏(54)が加わった。

なぜ、小さなITベンチャーに多額の資金と人材が集まるのか。

ANAホールディングスに問い合わせると、「駆除ではなく防御するというBPw社の成長性を高く評価し、ANAグループ全体のセキュリティー対策のため出資することとした」との回答があった。日本を代表する航空会社が、AppGuardを評価していることは分かったが、まだ、疑問は解消しない。

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最終更新:7/19(水) 21:22
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