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孤独な魂を浮かび上がらせる無国籍フォーク・サウンド。フリート・フォクシーズ『Crack-Up』(Album Review)

7/19(水) 12:30配信

Billboard Japan

 2000年代後半に米シアトルからシーンに登場したフリート・フォクシーズは、オーガニックなフォーク・サウンドの広がりと実験精神の中で、ある特定の地域の土着的な息遣いを奏でるというよりも、より内面的で想像力に満ち溢れた楽曲の数々を生み出し、いわゆるフリーク・フォーク・シーンを牽引してきた。2008年の『Fleet Foxes』、2011年の『Helplessness Blues』という2作のアルバムは、セールス面においても英米チャートをはじめ高い評価を得、一躍世界に名だたるバンドとしての活躍を繰り広げていた。

 ところがその後、バンドの中核メンバーであるロビン・ペックノールドは大学での学位取得の道を選び、ソロとして活動する機会はあったもののフリート・フォクシーズとしては長い活動休止期間に入っていた。2017年が明けると同時に、約6年ぶりのニューアルバムを製作しているということが報じられることになる。ドラマーとして活躍していたジョシュ・ティルマンは、ファーザー・ジョン・ミスティとしてのソロ活動を活性化させていたために離脱。新作では、ザ・ウォークメンのマット・バリックや、ロビンとの活動を経てきたニール・モーガンがサポート参加している。

 新作『Crack-Up』のリード曲として、3月に「Third of May / Odaigahara」のリリック・ビデオが公開された。バッファロー・スプリングフィールドを彷彿とさせる、大らかで普遍的な歌心を備えた「Third of May」が、エクスペリメンタルかつアンビエント、どこか東洋的な風情を漂わせる「Odaigahara」へと移り変わってゆく。奈良~三重~和歌山にまたがる吉野熊野国立公園の大台ケ原をモチーフにした、日本文化に深い造詣を持つロビンならではの楽曲であり、『Crack-Up』のアートワークには写真家・濱谷浩(1915年~1999年没)の作品が用いられている。

 アルバム冒頭のフリーク・フォーク組曲とでも呼ぶべき「I Am All That I Need / Arroyo Seco / Thumbprint Scar」といい、2トラック目「Cassius,-」から3トラック目「- Naiads, Cassadies」のメドレー構成といい、『Crack-Up』は大胆に変化しながらも連綿と続く心象風景を伝えるコンセプチュアルな作品だ。果てしない想像力の広がりは孤独な時間を映し出し、ふくよかなハーモニーに包まれるロビンの歌は「Anna」という名前との距離感に苦しんでいる。

 前衛的でエモーショナルなダンスをフィーチャーした「Fool's Errand」のミュージック・ビデオといい、さながら無国籍フォーク・サウンドのロード・ムービーと化した『Crack-Up』は、激情を孕んだまま彷徨う心を浮かび上がらせる。ロビンは、離別をテーマにしたダーティー・プロジェクターズの最新作をフェイバリットに挙げているが、『Crack-Up』においても、プライベートな苦しみの経験がフリート・フォクシーズに新しい音楽を創造させたのかもしれない。(Text:小池宏和)


◎リリース情報
アルバム『Crack-Up』
フリート・フォクシーズ
2017/6/16 RELEASE
2,138円(tax in.)

最終更新:7/19(水) 12:30
Billboard Japan