ここから本文です

オンラインゲームスペシャル座談会【完全版・前編】 ――『DQX』、『FFXIV』、『PSO2』、『MHF-Z』、『DDON』のプロデューサー&ディレクターが集結した奇跡の一夜

7/20(木) 0:03配信

ファミ通.com

●奇跡的にメンバーが集結! オンラインゲーム夜会、スタート
 週刊ファミ通本誌とファミ通.comに連載コーナーを持つ人気オンラインゲーム5タイトルのプロデューサー&ディレクターが一堂に会する超豪華スペシャル座談会を実施! 国内オンラインゲームを取り巻く環境や市場の変化、そしてその未来を、リアルな目線で語り合う。
(聞き手:週刊ファミ通 編集長 林克彦)


■写真左より

『ドラゴンクエストX オンライン』(以下、『DQX』)
プロデューサー
齊藤陽介氏

『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)
プロデューサー兼ディレクター
吉田直樹氏

『モンスターハンター フロンティアZ』(以下、『MHF-Z』)
プロデューサー
宮下輝樹氏

『ファンタシースターオンライン2』(以下、『PSO2』)
シリーズプロデューサー
酒井智史氏

『ドラゴンズドグマ オンライン』(以下、『DDON』)
ディレクター
木下研人氏


――深い時間(この日の取材は21時からスタート)に集まっていただいてありがとうございます。正直、このメンバーが揃うとは思いませんでした!

酒井 いやー、すごいですよ。

齊藤 吉Pがいちばん忙しいですよ(笑)。

吉田 最新の拡張パッケージ『紅蓮のリベレーター』のリリース前なのでヤバいです(汗)。このタイミングでヤバいとか言っているのは、ちょっとおかしいんですが……。(※対談実施日は発売2週間前)

齊藤 オンラインゲームは発売のギリギリまで作業ができちゃうからね。

酒井 俺も今週、“感謝祭”(※『PSO2』オフラインイベント)ですよ。

――ふだん、皆さんは個人的に交流されているのですか?

吉田 いちばん仲がいいのは、齊藤さんと酒井さんじゃないでしょうか?

齊藤 最近は、プライベートで酒井さんと行く機会がなかなかないんですね。

酒井 そうですね。元々、木村(『PSO2』ディレクター・木村裕也氏)と齊藤さんがつながっていて、それがきっかけで僕も交流するようになりました。木下くんとは、東京ゲームショウの打ち上げで『モンスターハンター』チームと飲んだことがあって、面識があります。

木下 『PSO2』チームと『モンスターハンター』チームで毎年飲ませていただいているんですよ。吉田さんとは、『DDON』の正式サービス後に、お会いする機会がありました。

吉田 『DDON』が始まって少し落ち着いたころで、お誘いをいただいたのです。会って開口一番「めちゃくちゃ大変ですよね?(笑)」みたいな。

木下 もう、吉田さんの言葉は全部メモって帰ろうと思いましたよ(笑)。齊藤さんとは昨年の東京ゲームショウで、酒井さんと飲んだときにお会いしました。

宮下 酒井さんとは東京ゲームショウでご挨拶させていただいていましたが、ほかの皆さんとは、「『MHF』の10周年コメント(※)をください」とお願いした際に、初めてご挨拶させていただきました。

※10周年コメント:10人のクリエーター・著名人が『MHF』10周年へのメッセージを寄せた企画。→詳細はこちら

――個々での交流はおありのようですが、こうやってオンラインゲームの開発者が一堂に会することは、なかなかないですよね。まずは乾杯しましょう!



●オンラインゲームのいま 市場の動向はどうなっている?
――まずは固い話題ですが、オンラインゲームの市場規模って今後どうなると思われますか?

齊藤 スマートフォン向けのゲームが出てきて、テレビの前に座って遊ぶ時間が短くなっているのではないかな、と。まだまだ家庭用ゲーム機でおもしろいことをやれると思いますが、スマートフォンゲームの影響が大きいのは確かです。

吉田 ひと昔前より、プレイ人口は爆発的に増えていると思います。『新生FFXIV』のときに、中国や韓国の方から「日本にこんなにオンラインゲーマーがいるとは思わなかった」と、かなり言われました。日本市場は、それくらい過小評価されているのかな、と。ただ、プレイヤーが増えたとは言え、世界に比べると、まだ小さな市場だと思います。もったいない!

――日本のゲーマーの熱量を見ると、まだまだ大きくできますよね。

吉田 「オンラインだからやらない」という声があるということは、逆に言うと、これからオンラインゲームに移行する人たちは、まだまだいるのではないかと思います。

齊藤 「毎日、スマホで目一杯オンラインにつながっているじゃん」と思いますしね。

宮下 そうそう。何だかんだ言っていても「けっきょくつながってるの、好きやん!」って(笑)。

酒井 全体的に見ればユーザーは広がっていて、PCの市場で言えば緩やかに縮小しているかな。

――PC市場は縮小傾向ですか? 宮下さんは10年間『MHF』をやってきてどう感じますか?

宮下 酒井さんがおっしゃる通り、PCのユーザーはだんだん縮小してきているのですが、PS3やPS4などでネットワークにつなぐことについては、抵抗なく楽しむ人が増えています。まだまだ、この人口は広がる可能性があると思います。

――『DDON』ではいかがでしょうか?

木下 『ドラゴンズドグマ』はもともと家庭用ゲーム機で展開していたゲームなので、PCに比べて家庭用ゲーム機のユーザーが多いんです。なかには初めてオンラインゲームを触る方もいるでしょうし、そういった点でも、オンラインゲーム人口は増えていると思います。

――PCと家庭用ゲーム機で、ユーザーのプレイ時間に差異はあるのでしょうか?

酒井 ヘビーに遊んでいる人は、両者でそれほど差はないですし、どちらもライトな層、カジュアルに遊ぶ人が増えている印象です。

吉田 カジュアルに遊べるゲームが増えたというより、どのタイトルでもカジュアルに遊べる部分を意識的に作っているということもありますよね。

齊藤 少し前まで、「何が何でも毎日ログインして遊んでほしい!」という流れがありましたけど、最近はそういう感じはなくなりましたね。以前は、マンスリーアクティブに対する、デイリーアクティブ(※)の差がほとんどなかったけれど、いまはキレイな差が出ていますし。もちろん毎日遊んでいる人もいますが、週末だけとか、3日に1回など、ユーザーのプレイ時間が明確になっています。これは「カジュアルに遊べる部分を意識的に用意する」という、こちらの狙い通りになっているのかな、と思います。

※マンスリーアクティブは月単位の接続ユーザー数、デイリーアクティブは1日の接続ユーザー数。

吉田 同時接続数が必ずしも正義ではない運営になりましたね。

酒井 昔はとにかく同接数を見ていましたよね。

齊藤 サーバーにやさしくないね(笑)。

吉田 以前は、仲間がいないと遊べないようなゲームデザインのものが多かったので、同接が落ちるとシャレにならなかったんです。

宮下 いっしょにプレイする人がいないと何もできないゲームデザインだと、ゲームから離れてしまうので、自然に人口は減ってしまいますよね。

吉田 パーティーが組めないことにもつながるし、ここに集まった皆さんは、そういった遊びやすさを意識して作っていると感じます。

木下 ひとりで遊べる時間と、仲間と遊べる時間って、どうしてもユーザーのライフスタイルに左右されますよね。『DDON』でも、ひとりで遊ぶときは世界観や物語を楽しんでいただき、仲間が集まれるときはコンテンツにチャレンジできる、そんなサイクルをより意識して作るようにしています。

――各タイトルで、自然とそういった流れになったというのはおもしろいですね。

酒井 皆で示し合わせてはいませんよ(笑)。

吉田 でも、同じようになっていったのは確かですね。

齊藤 いろいろなユーザーに対して、幅広くコンテンツを用意していきたいと思っているので、ヘビーなものからカジュアルなものまで作っていますね。そこから、ユーザーが望んでいるものはどこにあるのか、どの部分を熱心に遊んでいるのか、そういったところを見ながら、コンテンツを広げるようにしています。


●オフラインイベントの意義とファンとの交流
――皆さん、つねに自分のタイトルと向き合いながら開発されていますが、ほかのタイトルを意識したりすることはありますか?

吉田 正直、追っているヒマがないと思うんです(苦笑)。発表された反響を後から見て、「そんな施策をしているんだ」とか、「うわ! バージョンアップ時期が被っているな」とか。

齊藤 そんなもんでしょう。同じメーカーでも、うっかり被ったりしちゃうから(笑)。

吉田 ゲーム内容はまだしも、そのタイトルの運営や施策までは追えないですよね……。

宮下 確かに。気にはなりますが、絶対にすべては追えないですね。

酒井 意識しているというよりは、ほかのタイトルの動向を追って「おもしろいことをやっているなぁ」と感じることは、よくあります。

宮下 「新しいことをされているなぁ」と悔しがりながら参考にすることはありますね。

――ライバル視というわけではないのですね。他タイトルの施策で驚いたことはありますか?

齊藤 『PSO2』は、毎年全国でイベントをやっているのがすごい。広い会場に大勢お客さんが来ていて。どうやって集めているの?

酒井 それは会場別の特典を……。

吉田 ちょっと!(笑)。

酒井 冗談です(笑)。ユーザーがいっしょに交流できる場は、すごく大事だと思うんです。そういう趣旨を深く理解してくださるユーザーさんが多いんじゃないかと思いますね。

宮下 オフラインでのつながりができると、その後も継続して遊んでもらえますよね。

酒井 そうそう。そういうつながりが生まれるので、感謝祭は大事にしていますね。

吉田 プレイヤーどうしが「オフ会やりましょう」とは言い出しづらいけど、公式でイベントをやることで「ちょっと行ってみない?」という話ができるし、そこからきっかけが作れたりするんですよね。“エオルゼアカフェ(※)”を常設しているのも、「オフ会をやろう」よりも「エオカフェに行こう」と言うほうが交流しやすいだろうと思ったからなんです。

※エオルゼアカフェ:『FFXIV』とパセラリゾーツのコラボによるコンセプトカフェで、東京・秋葉原と大阪・道頓堀にて展開。

酒井 じつは、『PSO2』で全国を回ろうと思ったのは、『MHF』の47都道府県のネットカフェを回る企画を見て、「何やってんの、この人たち!?」と思ったのがきっかけでした(笑)。

宮下 生放送がなかったころは、全国のネットカフェを何年もかけて回っていましたね。ネットカフェだと、キャパ的にどうしても100人ほどのユーザーさんしか集まれない。だからこそ、その100人とがっつりコミュニケーションを取っていました。

酒井 深いコミュニケーションが取れると、ユーザーさんに喜んでもらえますからね。

宮下 ちゃんと生でユーザーさんの声を直接聞くのは、とても重要だと思います。

齊藤 過去にツクモさんと協力してイベントをやったとき、人数は100人ほどでしたが、それでも皆さんに喜んでいただけたので、「こういうイベントをもっとやりたいな」と思いました。でもさすがに私のいまの状況だと、会社を辞めないと、全国は回れないかな(笑)。

――イベントや生放送などで、ユーザーとコミュニケーションを取るときに、大事にすることや、気をつけていることはありますか?

吉田 「なんでもやります!」は言わないようにしています。できることや、実現しようと思っていることは、もちろん前向きにお話しします。ただ、できないことは「できない」、やらないことは「やらない」とお話しさせていただいています。個人的に大事にしているのが、「こういう意図や理由があるからできない」としっかり説明すること。説明がないまま何も実装されないよりは、「吉田はこういう意図があってやらないと言っているんだから、しょうがない」と、しぶしぶでも、理由はわかったほうがいいと思うのです。僕自身がプレイヤーなので、言わずに放置よりは、そのほうが少しはマシなのかな、と。

齊藤 ちゃんと言ったほうがいいね。あとは、「がんばってます」とだけ言うと「いつやるんだ!」となっちゃう、というのもあるかな。

吉田 “いまは”言わないほうがいい、という場面もありますね。あと、ある要望に対して本当はリリースのメドが立っているのに、あえて「できたらいいね」程度のコメントに留めることもあります。

宮下 すごくわかります。

木下 僕の場合も、公式に寄せられた意見や、Twitterなどを見てユーザーさんの声を把握したうえで、どうしても技術的にできないことを求められたときは、理由を説明するようにしています。そして生放送や配信では、意見の多いものを紹介して、できるかできないかの回答をする、といった内容でお伝えしています。

宮下 僕もだいたい同じです。とくに生放送などの前には、ユーザーさんの意見を改めて確認したうえで、「今回はこれを言おう」とか、「これは後に取っておこう」と決めて、言えることは言うようにしています。

酒井 基本的には同じですけど、イベントでは親しみやすく言おうと心掛けていますね。アークスカフェ(※)で突然、隣りに座って話し掛けてみたり(笑)。

宮下 それ、ドッキリじゃないですか!(笑)

※アークスカフェ:期間限定で全国各地でオープンした『PSO2』のコンセプトカフェ。

――酒井さんはユーザーにがっつり絡んでいるイメージがありますね。

齊藤 フレンドリーなほうがいいですよね。

吉田 そうですね。でないと、やる意味がないと思いますしね。

齊藤 私なんか、ユーザーから“おじさん”と呼ばれていますけどね。

木下 “おじさん”ですか?(笑)

齊藤 ええ、ふつうに呼ばれますよ。

吉田 僕の場合は“ジャラ”とかです……単語がおかしいですもん(笑)。

――(笑)。そういった呼ばれかたをされていることについては、どう感じているのですか?

齊藤 あきらめです(笑)。昔は宣伝担当の人たちが、“〇〇名人”みたいな名称で表に出ていた時代もありましたし、「宣伝担当が表に出ろよ!」と思ったりもしましたけど(笑)。

吉田 そう、僕なんて宣伝の悪だくみで、開発中のゲームのテストボイスまで公開されて……。「俺のだけ出すなよ!」って言いたいですよ(苦笑)。(※)

※ディレクターとして携わった『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』の実況ナレーション用に吉田氏が作成したサンプルボイスが、2015年8月に放送された“3周年記念14時間生放送”内にて公開された。

木下 でも、プロデューサーやディレクターが何を考えて作っているのか、ユーザーさんは興味があると思うんですよ。そういった部分を、プロデューサー、ディレクターが直接出ていって説明することは、大事だと思います。

宮下 おお、この流れの中ですごくまともなことを言ったね(笑)。


●配信や生放送で変わった? その意義やメリット
――オンラインゲームに限った話ではないですが、配信や生放送の影響は大きいですよね。

吉田 でも、表に出ることには、向いている人とそうでない人がいますから、無理はしないほうがいいと思います! 配信や生放送は“手段”でしかない。職人堅気で作るのが得意な人はたくさんいて、そういう人が表に出てきた結果、針のむしろにされてしまうと、作るものにも影響が出てしまいますから……。

齊藤 無理やり出す必要はないよね。

――生配信の意義やメリットは、どういうところだとお考えですか?

酒井 生放送も含めて、コンテンツの一部だと考えています。アップデート情報を我々の口から伝えることで、つぎへの期待にもつながりますし、ユーザーどうしの話し合いも広がります。そういったことも込みで楽しんでもらおうというのが、『PSO2』のコンセプトのひとつです。

木下 僕らが何を考えてどういうものを作っているかをお伝えすることは、僕らがオンラインゲームを作っていることと同じくらい価値があると思うんですよ。オンラインゲームはつねに変化していくので、そういった部分は、ライブ感を持って、ユーザーさんとコミュニケーションしながら伝えていきたいです。ユーザーさんも、やっぱりゲームに対する意見を言いたいはずですし。コミュニケーションを図れる生放送などの場では、返答もできるので、苦しいときもありますが、重要だと思います。

齊藤 私の場合、番組では『DQX』をテーマに、ムチャクチャなことがやりたいんですよ。

一同 (笑)

齊藤 ムチャクチャという言葉が合うかはわかりませんが、ボスバトル中にオモチャの列車を走らせて、風船が破裂しないようにその都度、風船を持ち上げるとか、ゲーム内で釣りがあるから本物の釣り対決をやりましょうとか。『DQX』をテーマにして、こんなに楽しそうに遊んでいるよ、と伝えたい思いがありますね。

宮下 僕は、やはり生放送で「こう考えています、だからこう作ってるんです」と直接言えるのがありがたいです。公式サイトだけでは、思っていることがちゃんと伝わらないことがあるので。あと生放送では、なるべく楽しく見ていただけるような内容を心掛けています。

齊藤 “おもしろい”は大事ですよ。私はオープニングのひと言をずっと考えています。

吉田 考えかたが完全に芸人ですよ!

齊藤 以前『PSO2』や『FFXIV』の番組に出させていただいたときは、どうやって爪跡を残そうかと必死でした。

一同 (笑)

齊藤 せっかく呼ばれたからには、何かおもしろくしないといけないでしょう。

吉田 いまでも齊藤さんが言ったことをプレイヤーの方から言われますよ。「“ タンクがDPSを要求されるゲームって」by 陽介”、みたいな(笑)。


●『光のお父さん』裏話から結婚、ネカマまで!? オンラインゲームのリアル事情
――オンラインゲームの裏側には、リアルの日常があると思うのですが、ユーザーのお話や報告の中で印象的だった出来事などはありますか?

齊藤 やっぱり『光のお父さん』(※)でしょう?

※光のお父さん:『FFXIV』のプレイヤーブログ“一撃確殺SS日記”で人気を博した“光のお父さん計画”を元にした実話ドラマ。2017年4月より、MBS、TBSほかで放映された。

吉田 そうですね。でも『光のお父さん』に関しては、ドラマ制作にあまり協力させてもらえなかったなぁ……。

一同 えぇ!?

吉田 ゲーム内での撮影シーンがあったんです。そこで、天候も時間も自由に変えられる開発サーバーを撮影用にお貸ししようとしたんですけど、ドラマ制作サイドから「いや、パブリック(通常の)サーバーで撮りますので大丈夫です」と言われて。彼らは、実際のパブリックサーバーでロケハンをやって、天候待ちをして。「エオルゼア時間の何時にここから太陽が上がって、こんな風にレンズフレアが出るから……」といったことをしているわけです。それで、実際に撮影しようとすると、雨が降っていたりするんです。すると「別のシーン撮りまーす」という感じで。だから、「サーバー貸すのに!」って言ったじゃんって(笑)。

宮下 もう、本物のロケですね。

吉田 ゲーム内パートの監督さんと、現実パートの監督さんがいるんですが、ゲーム内パートの監督さんが、撮影前に「ゲーム内でも現実世界のように撮影することで画が活きる」と言っていて。そこまでするのか! と感銘を受ました。でも、いざ撮影が始まって、あとで監督と話したら「あの時はどうかしてましたね……」と、梅酒を片手に話していて(笑)。

一同 (笑)

吉田 でもそのせいか、作り手と役者さんにあまり商業的な匂いがしない作品になりました。プレイヤーブログ発の企画ということもありますし、プレイヤー自身の「オンラインゲームのイメージを変えたい」という想いを、現場の全員が汲み取っていたからなんだと。あれは本当にすごいなと思いましたし、うれしいというより、ちょっと嫉妬しました。何で僕が作る側に参加していないんだろう、と。一応、脚本とPRに関しては、こちらからも「こうしたほうがいい」とアドバイスをしましたが、その程度でしたね。

齊藤 いつ放送が始まるんだろうと楽しみにしていたよ(笑)。

吉田 脚本の段階で、僕からあらかじめ言っていたことがふたつあって、ひとつが「僕は絶対に出ない」こと、もうひとつが「声の出演もしない」こと。それをやってしまうと、ドラマに余計な雑音が混じってしまうので。唯一、南條さん(声優・南條愛乃さん)が「よしだああああああ!」と叫ぶシーンが、唐突にあるところだけ、制作サイドから「どうしてもやりたい! エオルゼアのリアルとは、そういうことだから」と熱弁されて。「セリフの補足や説明などは絶対しません」と言われたので、「いいですよ」と返事をしました。とにかくあのドラマは、「作りたい!」と思っている人たちの熱がすごかったですね。

齊藤 オンラインゲームには、『光のお父さん』のような話がたくさんあるので、ドラマ化されてうれしかったなぁ。

吉田 そういうエピソードって、スペシャルな話というよりも、わりと日常的なことなんだと思います。そういえば、昨年の夏ぐらいから、すごい数の「結婚します」報告をプレイヤーさんからいただいて、うれしいですね。

齊藤 私は結婚式の招待状が送られてきたことがありますね。さすがに「欠席します」と返事をしてしまうと“返事が来るからとりあえず送っておけ!”という状況になりそうなので、申し訳ないのですが、いただいてもお返事はしないようにしています。でも、いただいたものはちゃんと見ていますと、ここでお伝えしたいです。

吉田 僕も出席することはできませんが、電報を送らせていただいています。

一同 へぇー!

齊藤 私も「欠席します」という返事くらいは書いたほうがいいのかな!?

吉田 新婚旅行でスクウェア・エニックスの本社に来た方もいましたね。歩いていたら急に「吉田さん!」と呼ばれて。僕、コンビニ弁当をぶら下げてるんだけど、っていう(笑)。

宮下 聖地巡礼という感じなんですかね。

齊藤 私も、朝イチに死にそうな顔で歩いているところを、「よーすぴさんですか?」と声掛けられて。連勤でひどい顔をしていたので「違います」と言いたかったのですが(笑)。

酒井 昔の話になりますが、『PSO』の旗を持ってマッキンリー登頂を目指した方がいまして、その人が帰ってきたときには、食事会を設けさせていただきました。以前、ファミ通で取り上げてもらったことがありましたね。

――結婚報告が来た場合、酒井さんはどうしているんですか?

酒井 うちはサインをして色紙を送るようにしてます。

齊藤 全員に!?

酒井 こちらに報告が来た場合には、送りますね。

宮下 それ、公に言ってしまうと、皆さんから結婚報告がいっぱい来るんじゃないですか?(汗)

齊藤 『DQX』が5周年を迎えたときに、“5年間にあった出来事を教えてください”という企画を行ってユーザーさんの意見を集めたら、ものすごい数の結婚報告があってビックリしました。それでも送ってきていない人のほうが多いだろうと考えると全部にお返事を出すのは無理だろうなと。

酒井 リアルイベントで「結婚します!」と直接報告していただくのは、すごくうれしいですね。

――オンラインゲームがきっかけで結婚して、子どもといっしょにゲームを遊んでいる方もいそうですね。

酒井 『PSO』世代の方にはけっこういらっしゃいますね。

宮下 『MHF』の場合、昔は結婚のご報告をいただくこともありましたが、最近はプレイヤーの平均年齢が上がっていることもあり、そういったお話が少なくなってきましたね。

木下 『DDON』は、「オフ会や交流イベントを開きます」という話は聞くのですが、ユーザーどうしで結婚したというご報告は、まだ聞いたことがありませんね。

――オンラインゲームでの交流というのは、仲よくなったり結婚したりと、なかなか濃いものですよね。

齊藤 外見を知らないまま、その人の中身をちゃんと理解できて、いざ会ってみて、仲よくなれるかどうか。

酒井 『PSO2』で知り合った同性どうしでルームシェアをしている、という話もありました。

齊藤 ゲームの中のコミュニティーで生相談をしたり、といったこともあると思います。私も正体を隠して『ファイナルファンタジーXI』を遊んでいるときには、就職の相談とか、いっぱいされましたよ。

木下 いわゆる“ネカマ”の方や、その逆の方も多いですね。

齊藤 私もネカマプレイ賛成派ですね。カワイイは正義です。

吉田 あ、僕はネカマはすぐ見抜けます! 的中率は90%を超えているかもしれません。

木下 見分けるポイントはどこなんですか?

吉田 お話ししてしまうと見抜けそうなので、止めておきます(笑)。でも、そのゲームの特徴を知ったうえで、その人のキャラクターメイクを見たら、それだけで7割くらいは当たるかも。

木下 そうなんですか(驚)。

――皆さんのタイトルで、プレイヤーの男女比率はどのようになっているのでしょうか?

齊藤 男性のほうが圧倒的に多いですね。たぶん7:3から8:2のあいだだと思います。

宮下 『MHF』は9:1くらいですね。

木下 『DDON』はだいたい8:2です。

吉田 『FFXIV』は7:3を超えるくらいでしょうか。でも、韓国版は女性率が50%を超えました。

一同 マジですか(驚)。

吉田 ええ、韓国版では女性のほうが多いんです。韓国のオンラインゲームは、男性向けに必要以上に露出度の高い装備が多いタイトルが多く、女性が遊べるオンラインゲームが少なかったんだと思います。露出の高い装備は『FFXIV』にあまりなく、せいぜい水着くらいです。キャラクターをめいっぱい愛でられるゲームなので、そういったところが影響しているのかな、と。とくにインスタグラムを中心にイラストを描いている若い人気の絵描きさんが、こぞって『FFXIV』をやり始めたことがきっかけで、女性プレイヤーが一気に増えました。韓国でイベントを開催すると、女性が本当に多いことがわかります。

齊藤 そのイベントに行こうかな(笑)。

――『PSO2』はどうなんでしょうか? 女性が多いイメージがありますが。

酒井 うちも8:2くらいです。イベントでは女性が多い印象があるんですけどね。

齊藤 イベントは女性の参加者が多いよね。

吉田 韓国では、イベント参加者の男女比が2:8くらいになりますからね。

――女性が多いことで気を使ったりすることはありますか?

吉田 いえ、皆さん同じプレイヤーさんですし、あまり気にしたことはないです。

齊藤 安西(安西崇氏。『DQX』チーフプランナー)は、“安西先生”と書いたうちわを持ってくるファンの方がいて、いつも最前列にいますよ(笑)。


●プラットフォームの拡張 新規開拓とそこにある壁
――『MHF』は10年サービスを続けてきて、年齢層はどうなっているのでしょうか?

宮下 年齢層は上がってきていますが、対応プラットフォームも増やしているので、そのタイミングで若返っている感はあります。やはりPS4でサービスを始めたことが大きいと思います。リアルイベントですと余計に若い人がガッと増えていることを実感しますね。

吉田 『MHF』は、多くのプラットフォームに対応しているのが本当にすごいですよね。あれは尋常ではないたいへんさだと思います。最初からプランニングしていたわけではないのですよね?

宮下 ええ。最初からではなく、その都度対応するようにしてきましたね。

吉田 ハードが違うと運営上のレギュレーションが異なったり、サーバーが別だったりと、たいへんな部分が多いです。それに、一度そのプラットフォームでサービスを始めた以上は、おいそれとサービスをやめられないですし、決断と実行という、普通に聞こえますが、そこがすごいです。

齊藤 うちはPS4とNintendo Switchに対応したら、ひとまずは打ち止めですね。さすがにこれ以上横に広げすぎると、アップデートの対応で破綻してしまいますので。ここにいる皆さんも同じことをしていると思いますが、オンラインゲームの作業って、ビルのメンテナンスにたとえて言うと、改装・改築をくり返すということじゃないですか。そうなると、「こっちで雨漏りしている」とか、「こっちでおかしなことが起きている」とか、各所を修繕しないといけない。アップデートというものは、新しいことを追加する以上に、そういった部分に手間がかかるんですよ。プラットフォームが横に広がれば、単純にビルが増えていくという話ですのでたいへんです。とはいえ、けっきょくはユーザーが喜ぶならやるしかない、ということに落ち着きますが。

――『DQX』のプラットフォーム拡張は、最初から計画されていたのですか?

齊藤 最初からではありません。やはりユーザーを増やすためにいちばん効果的なのが、プラットフォーム増やすことなんですね。『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』もそうですが、多くの人に遊んでもらうには、たくさんの場所にサービスを提供するべきで、遊べる環境をしっかり整えることが重要ですよね。

――『FFXIV』もプラットフォーム拡張のウワサが出ていましたよね?

吉田 当然、任天堂さんやマイクロソフトさんとはずっと話をしています。僕らは一度サービスを始めたら手放しでいいわけではないので、先方に「覚悟を持っていっしょにやります」と言っていただけるなら、こちらもサービスを展開したいというスタンスです。でも、『FFXIV』のサービスを始める場合、まずそのプラットフォームのレギュレーションをいくらか壊してもらえないと実現できませんし、ハードごとにサーバーを分けることもしません。このポリシーは曲げられないので、地道にお話を続けています。

酒井 そうしないとサービスのクオリティーを落としてしまうことになりますよね。損をするユーザーも出てしまうので、そこはやっぱり受け入れられないですね。

吉田 そういった背景がありながらも、Twitterでマイクロソフトの偉い人が「Xboxで『FFXIV』が見たい」というようなことを言っていたときは、「おいっ!」って感じになりましたが(笑)。

一同 (笑)

宮下 まずはレギュレーションを超えるところから相談させていただいて、受け入れ可能状態になって、我々の考えるサービスのクオリティーが担保されてからですからね(笑)。

齊藤 譲るところは譲ってほしい、と(笑)。

吉田 このあいだ彼に会ったときに、開口いちばんに「ずるいよあれ!」と言っておきました(笑)。

宮下 今日ちょうど、僕もそういう話をしてきたところです(笑)。

吉田 僕ら(開発・運営)の責任だけでサービスができると思っているケースが結構あります。でも、それだとやれないことも多い。スタンドアローンのゲームとは違いますので。

木下 プラットフォームを増やすには、乗り越えなければならない障壁もありますし、どちらにやりたい意思があったとしても、スムーズにいけることはなかなかなく、苦労や苦戦をしています。


----------



 オンラインゲームスペシャル座談会【完全版・前編】はここまで。続く後編では、盛んに行われているタイトル間コラボや、アップデート・開発の裏側、プロデューサーの苦労(?)、そしてオンラインゲームの今後から夢のゲームまで、5人が語らう!

・オンラインゲームスペシャル座談会【完全版・後編】
 (2017年7月21日0時公開予定)


※本記事は、週刊ファミ通2017年7月20日号(2017年7月6日発売)の“特別企画 THE夜会 ~オンラインゲーム出ずる国の男たち”記事内に掲載した内容に、加筆・修正を施した完全版です。

最終更新:7/20(木) 0:03
ファミ通.com