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サムスン電子・李副会長の贈賄裁判 検察が大反撃を開始

7/20(木) 15:30配信

ニュースソクラ

「世紀の裁判」の勝者は?

 「全世界から関心が集まる世紀の裁判になるだろう」

 3月3日、70日間にわたって朴槿恵(パク・クネ)元大統領の親友である崔順実(チェ・スンシル)氏による国政介入事件を捜査してきた朴英洙(パク・ヨンス)特別検事は記者懇談会を開き、この事件にかかわったサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の起訴について、こう感想を述べた。

 朴氏が率いる特検チームは2月28日、李在鎔副会長を「贈賄罪」で起訴した。李副会長がサムスン電子の経営権継承のために系列会社を合併する過程で協力を求める目的で、朴元大統領と崔順実氏に総433億ウォン(約43億円)の賄賂を渡したという疑いがもたれている。

 本格的に裁判が始まる前から特検チームは「証拠が溢れかえるほどある」「しっかりとした準備をしてきた。裁判の過程でじっくりお見せする」と有罪判決に自信を見せていた。

 これに対し李副会長側は元高裁部長判事をはじめとする13人の超豪華弁護団を結成し、特検の起訴状に書かれた起訴内容を全面的に否定した。つまり、裁判開始を前に特検、被告の双方が韓国最高の「矛」と「盾」を以て対決を展開することを予告したのだ。 果たして、この裁判によって韓国の全輸出の20%、GDP(国民総生産)の13.8%を占め、韓国経済に対する絶対的な影響力を持つサムスンのオーナーが実刑判決を受けるのかどうか、国民的な関心が集まった。

 しかし、4月7日から本格的に始まった李副会長に対する裁判は当初の期待とは裏腹に、気の抜けた展開が続いた。裁判が骨抜きになってしまった主な原因は、特検チームが起訴内容を裏付ける決定的な証拠や証人を出すことができず、状況証拠ばかりを並べたことにより、法廷で展開されたのが法的根拠に基づいた激しい論戦ではなく、まるで口げんかのようなレベルの言い合いに陥ってしまったためだ。

 特検は第37回公判が開かれた7月6日までの間に計140人の供述調書と45人の証人を法廷に立たせたにもかかわらず、決定的な証言が得られないどころか、中には証言を覆す証人まで出てきた。

 さらに、朴元大統領と李副会長の間で行われたとされる不法請託についての決定的な証拠と何度も強調されてきた、安鍾範(アン・ジョンボム)元大統領府主席書記官の手によるとされる通称「安鍾範手帳」が、裁判部によって証拠採択から除外されてしまった。

 当初、特検チームは、朴元大統領の発言をまとめたものとされる「安鍾範手帳」63冊を李副会長が朴大統領と単独面談し、依頼が行われたという事実を立証する決定的な証拠だと豪語していた。 しかし、6日に初めて公開された手帳の内容は、単語だけが羅列されたメモ程度のものに過ぎなかった。手帳の持ち主である安氏でさえ、そこに書かれた事柄について「何について書いたメモなのか分からない」という内容のものもあった。

 サムスン側弁護団は「安元首席が大統領から伝え聞いたことをもとに作成したものであるため、記載された内容が単独面談の席で言及された内容だと証明することはできない」と主張し、裁判官は「安鍾範手帳について証拠能力を認めることはできないと判断した。それらの記載が存在するということ自体、つまり朴槿恵前大統領と李在鎔副会長の間に(そのような)対話内容があったという間接的な状況証拠としてのみ手帳を採択する」という判断だ。

 このような状況に、マスコミ各社は「世紀の裁判とは名前ばかり」「予告編だけが凄すぎた」といった記事を掲載するようになり、慎重な表現ながら証拠不十分で李副会長の無罪を予測する専門家たちのコメントまで登場するようになった。

 ところが、終始無気力に見えた特検チームが12日のチョン・ユラ氏の証言を機に大反撃を開始した。

 崔順実氏の娘であるチョン氏は、証人としては出席しないという当初の立場を覆し、弁護士と相談もないまま裁判所に電撃的に現れ、李副会長側に不利な爆弾発言を連発した。例えば、 「母は『サムスンがあなただけを支援していることが噂になったら困る』と言った」 とか、「母はサムスンが買ってくれた馬を『自分のものだと思って乗ればいい』と言ってくれた」など、乗馬選手時代にサムスン側から特別な便宜を受けていたという趣旨の証言をした。これは、特検の起訴状に書かれた「サムスンが乗馬の国家代表チーム訓練支援プログラムを装って、崔氏やチョン氏に馬の購入費用など、78億ウォン相当の賄賂を渡した疑い」を裏付ける証言だった。

 チョン氏の爆弾発言について崔氏は「母娘の縁を切る」と激怒し、チョン氏の弁護士はチョン氏のことを「殺母蛇(韓国語でマムシ)のような娘だ」と非難した。

 二日後の14日に開かれた第39回公判では、金尚祚(キム・サンジョ)公正取引委員会・委員長の証言が注目を浴びた。市民活動家時代から財閥の支配構造を監視してきた専門家として証言台に立った金委員長は、「朴元大統領の介入なしには(李副会長の)経営権の引き継ぎは不可能だった」と証言したが、証拠や根拠を提示することはできなかった。

 しかし現政権の閣僚級の人物が裁判に証人として参加し、サムスン側に不利な証言をすることだけでも十分に裁判部にプレッシャーをかけたといえるだろう。

 金委員長が証言を終えるとすぐに、大統領府からは最後の決定打が飛びだした。大統領府報道官が突然記者会見を開き、大統領府の民政首席室(公務員の綱紀粛正や法務、国民からの請託などを担当する部署)のキャビネットから前政権時代の文書が300種発見され、中には(朴槿恵政権に反対する)文化人のブラックリスト作成や、サムスンの経営権継承に対する大統領府の支援の証拠になり得る文書も多数含まれていると発表した。大統領府はこの文書の原本を大統領記録室に渡し、コピーを特別検事チームに提出するとした。

 相次ぐ攻撃で退屈だった裁判は瞬く間に緊迫した。特検チームは直ちに大統領府から資料を受け取ると証拠採択に向けた作業に突入し、サムスン側は息を殺して対処に苦慮している。

 マスコミ各社は、大統領府の文書とチョン・ユラ氏の証言が今回の裁判の「決定的証拠になるだろう」と一斉に報じた。一方、法曹界からはチョン氏の証言は伝聞による証言なので効力が制限的だという意見や、大統領府の文書についても筆跡鑑定などを実施したうえで、誰がどのような状況で作成したものなのか立証できなければ証拠として採択されず、間接証拠にしかならないだろうという意見が出てきている。

 終盤を迎えた李副会長に対する裁判は8月2日に結審の後、8月半ばには1審判決が下されるものと予想されている。

 「世紀の裁判」の勝者は果たしてどちらになるのか? 2017年第2四半期(4-6月期)に売上60兆ウォン、営業利益14兆ウォンの実績で、アップル社(売上52兆ウォン、営業利益13.2兆ウォン)を破り、製造業世界第1位にのし上がったサムスンの未来に、世界の耳目が集まっている。

金 敬哲 (ジャーナリスト 在ソウル)

最終更新:7/20(木) 15:30
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