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[コラム]北朝鮮の誤った判断と戦略的選択の間

7/20(木) 12:06配信

ハンギョレ新聞

 政府の軍事当局会談と赤十字会談の提案に対し、北朝鮮が数日間沈黙を守っている。北側なりの悩みが感じられる。これに先立ち、北側の官営マスコミを代表する「労働新聞」は、今回の提案の土台となった文在寅(ムン・ジェイン)大統領の「ベルリン構想」に、概ね否定的な反応を示した。

 南側同様、北側も南北関係をめぐり戦術的・戦略的判断を下す。実益と共に、国内外の名分を強化するのが戦術的側面の判断基準なら、戦略的判断は根本的な目標に関わるものだ。ベルリン構想は、韓国側の目標を朝鮮半島の非核化と恒久的平和体制の構築、南北経済共同体の建設などに要約した。一方、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権は、体制維持と発展に向け、核と経済の並進路線を掲げている。

 戦術的側面で、南北関係の改善の利点はかなり明らかだ。軍事当局者会談で「軍事境界線における一切の敵対行為の中止」に合意すれば、南北は共に得をすることになる。赤十字会談を通じて、離散家族再会が実現される場合には、北朝鮮に対する人道的支援が再開される可能性が高くなる。

 戦略的側面の場合は、そう単純ではない。これは目標の違いに起因するものだが、北朝鮮が現実とかけ離れた誤った判断をするためでもある。最も代表的なのが核・ミサイル力の強化と関連した北朝鮮の態度だ。労働新聞の論評は「精密化して多種化したわれわれの自衛的核武装力は世界政治地形に大きな地殻変動をもたらしており、今日の朝鮮半島の平和保障の条件と可能性も、平和協定締結の環境も、明らかに変わったという事実を、つらくとも(関係国は)認めなければならない」と主張した。これは誇大妄想に近い。

 北朝鮮が核への力量を高めても、北東アジアでは弱小国に過ぎない。核の保有は警戒心を抱かせるだけで、世界の政治地形に大きな影響を及ぼさない。もちろん関係諸国が核問題を自分の路線の強化に活用すれば、北東アジアの政治・安全保障の地形がある程度変わることもあり得る。核の保有は短期的に北朝鮮体制維持に貢献しても、さらなる孤立をもたらし、経済の足かせとなる。平和体制の構築に伴う利益は核保有のコストをはるかに上回る。

 南側が外部勢力の力を借りて吸収統一を図ると見ていることも、北朝鮮の戦略的判断を曇らせる原因となっている。ベルリン構想は6・15共同宣言と10・4宣言を堅持し、北朝鮮の崩壊や吸収統一、人為的統一を追求しないことを公言した。大きな犠牲を甘受し、圧倒的軍事力を動員しない限り、吸収統一は不可能だ。北朝鮮の言う吸収統一論は自分の国際的な地位の弱化を反映する不安感の表現か、自らの妄想が作り出した論理だ。

 北側は南北間の非政治的交流と協力の進展より、根本問題の政治・軍事的対決状態の解消がさらに重要だと語る。一理ある主張だが、現実化するためには、南北当局が中心的な役割を果たさなければならない。しかし、北朝鮮の実際の動きはそうではない。南北当局や政党・団体、国内外の同胞らが共に参加する統一大会合を開催しようという提案が、その例だ。これは根本問題を解決しようという姿勢でも、6・15宣言と10・4宣言を維持・発展させようとする姿でもない。

 北朝鮮は矛盾して持続不可能な従来の路線を固守するのか、それとも新しい戦略的選択するのかの岐路に立たされている。現在、変化の兆しを生み出しているのは文在寅(ムン・ジェイン)政権だ。韓国政府がいかなる行動を取るのかによって、北朝鮮の態度が変わる可能性がある。今、必要とされているのは信頼の構築だ。短期間に成果が出なくても、公式・非公式の様々なチャンネルを確保すべきだ。ベルリン構想をはじめとする政府の提案が、本気だという確信を北朝鮮に与えなければらならない。

 北朝鮮との対話と制裁の間隔を埋めるきめ細かな計画が求められている。南北関係の進展は核問題の解決に向けた努力を強化するのに貢献しなければならず、核交渉が開始すれば、対北朝鮮制裁にも一定の修正が避けられない。したがって対話と制裁を並行しながらも、両方のバランスを取っていかなければならない。文大統領が韓米首脳会談で明らかにした「韓国の主導的役割」は終始一貫して欠かせない。対北朝鮮制裁の勢いが衰えるのを恐れて、南北対話に消極的な米国も説得しなければならない。

 以前政府で南北関係を解決しようと最前線で努力したソン・ミンスン元外交部長官とイ・ジョンソク元統一部長官は、自身の回顧録にそれぞれ『氷河は動く』と『刃の上の平和』という題名を付けた。刃の上で氷河が動くようにしながら、平和を構築していかなければならない厳しい現実は、その時も今も変わらない。

キム・ジソク先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

最終更新:7/20(木) 12:06
ハンギョレ新聞