ここから本文です

オンラインゲームスペシャル座談会【完全版・後編】 ――『DQX』、『FFXIV』、『PSO2』、『MHF-Z』、『DDON』のプロデューサー&ディレクターが集結した奇跡の一夜

7/21(金) 0:03配信

ファミ通.com

●ここでしか見られない、スペシャル座談会(後編)!
 週刊ファミ通本誌とファミ通.comに連載コーナーを持つ人気オンラインゲーム5タイトルのプロデューサー&ディレクターが一堂に会する超豪華スペシャル座談会を実施! 国内オンラインゲームを取り巻く環境や市場の変化、そしてその未来を、リアルな目線で語り合う。
(聞き手:週刊ファミ通 編集長 林克彦)


■写真左より

『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』(以下、『DQX』)
プロデューサー
齊藤陽介氏

『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)
プロデューサー兼ディレクター
吉田直樹氏

『モンスターハンター フロンティアZ』(以下、『MHF-Z』)
プロデューサー
宮下輝樹氏

『ファンタシースターオンライン2』(以下、『PSO2』)
シリーズプロデューサー
酒井智史氏

『ドラゴンズドグマ オンライン』(以下、『DDON』)
ディレクター
木下研人氏


 前編では、オンラインゲーム業界の現状に始まり、ユーザーとの交流や配信について、またプラットフォームの拡張に関する話など、さまざまな話題について語っていただいた。今回の後編でも、多岐にわたる内容について5人が語らう。

▼前編はこちら
・オンラインゲームスペシャル座談会【完全版・前編】

●他社タイトルとのコラボが盛んに 時代が変わった!?
――オンラインゲームではコラボも盛んですが、皆さんのタイトルではいかがでしょうか。

吉田 コラボの話題になると、「『FFXIV』では『PSO2』コラボはまだか」と言われますね……。

齊藤 え? 「先に『牙狼<GARO>』コラボやってんじゃねーぞ」って?(笑)。

吉田 『牙狼<GARO>』のほうが企画が早かったんですよ! うちは、僕の方針で、ガチでやらないと気がすまないので、すごく時間がかかるんです。PRというより「こんなにおもしろいことをやっているぜ。しかも完全に本気だ!」というのを売りにしたいと思っていて。いまもコラボ予定がいくつかあるのですが、いったん企画を積むのはやめないと……実装がどんどん先送りになってしまうので。

木下 予約制なんですね。

吉田 アークスと光の戦士(※)を兼任されている方がけっこういて。「『PSO2』であんなにしてもらったのに、なんで『FFXIV』は返さないんだ!」と言われ……(苦笑)。

※アークス、光の戦士:アークスは『PSO2』のプレイヤーを、光の戦士は『FFXIV』のプレイヤーを指す。2016年7月、『PSO2』にて『FFXVI』コラボが実施。『PSO2』のゲーム内に『FFXIV』の各ジョブの衣装や武器迷彩が多数登場。さらに、闘神オーディンが出現し、『FFXIV』同様の攻撃を使用してくる期間限定クエストが配信されるなど、力の入ったコラボとなった。

齊藤 『DQX』では基本的にコラボはやっていません。スマホゲームのようなスピンオフ作品の場合は、いろいろな過去作の登場人物を出したりしていますが、『DQX』には極力出さないようにしています。じつは堀井さん(堀井雄二氏)からは、オーケーをいただいていますが。

酒井 『PSO2』は、豊富なコラボもウリのひとつですから。できるだけ間口の広い世界観で、すべてを内包できるゲームにするというのがひとつの目標です。これは『PSO2』にしかできないことだと思ってやっています。

齊藤 『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』では、『MHF-Z』と『PSO2』にお世話になりました(※)。

宮下・酒井 ありがとうございます!

※齊藤氏がプロデューサーを務める『NieR:Automata』とのコラボが、『PSO2』(2017年3月)と『MHF-Z』(2017年4月)で実施された。どちらのコラボも、ヨルハ2Bやヨルハ9Sの衣装をはじめとするアイテムがゲーム内に実装された。

吉田 『NieR:Automata』は、すごく要望がありますよね。ファンが『NieR:Automata』のコスプレをしてイベントに来たり。気持ちはわかるけどそこは待って、と!

齊藤 いいんじゃない? 『PSO2』よりも先にコラボしちゃえば(笑)。

――『PSO2』は本当にコラボが多いですね。小林幸子さんとのコラボなど、独自路線のものもあってビックリさせられます。

宮下 『MHF-Z』でもぜひ『PSO2』コラボを!

酒井 ありがとうございます!

吉田 この流れ……「これだぞ、吉田!」ってやつだ(苦笑)。

齊藤 『FF』は……いろいろあるからね……。

吉田 そこ触れちゃいますか!?(苦笑)。

酒井 『DQ』や『FF』はビッグネームなだけに、きっとたいへんなことがあるのだろうと思います。そこでできないことをうちがやる、というスタンスですね。“ドン・キホーテ”コラボでパンツとか実装しちゃいますし(笑)。

齊藤 『NieR:Automata』は、フルオープンですよ。ノーガード戦法です(笑)。

一同 (笑)

酒井 でも、コラボによっては、「世界観が……」と言われることが当然あると思うし、世界観を大切に守ることにも、すごく価値があると思います。

吉田 『DQ』は、やっぱり原作者がいるというところが大きいですよね。

齊藤 そうだね。まずは堀井さんがよしとするか、だからね。

吉田 それはそうあるべきだと思います。

齊藤 『DQX』の世界に、『FF』シリーズのサボテンダーやマンドラゴラ、シャントットが来たときは、私はよかったと思いましたよ。「これはアリなんだ」と。そのときは、スクウェア・エニックスのMMOが3作揃って、タイミングが合ったので実現しましたが、『DQX』であれだけのコラボは、最初で最後かな、と思います。

吉田 全力で“ぱふぱふ”を作りましたね……。

齊藤 でも、露出が高すぎたんだよね。

吉田 そうそう、最初NGになっちゃったんですよ(笑)。上からのアングルで迫ってきて、画面がブラックアウトして、「ぱふぱふ♪」と台詞が出るという、『DQ』の伝統芸をやったんですが。そうしたら「露出が高すぎる」と言われて……。「いや、ゼシカのほうがよっぽど!」って思いましたが。

齊藤 ミコッテがいやらしすぎたんですよ。

吉田 ですので、実際に実装したものは、表現を一段階抑えたものなんです。

齊藤 あの映像はどこかで出したいね。

吉田 出したいですね。『DQ』ではオーケーになるようなものでも、『FFXIV』になるとなんでダメなんだろうな(笑)。

宮下 リアルな絵だからですかね。

吉田 ゼシカだって、十分リアルですよ(笑)。

――『MHF-Z』も頻繁にコラボしていますね。

宮下 基本的には、内容がおもしろくて、先方さんがオーケーだったら、やらせてもらうという方針です。皆さんもそうだと思いますが、企画スタートから実装までの期間が、どうしても半年から1年くらいかかってしまうので、内容が実装時期に旬なものかどうかが読みづらいですね。そこを手探りでやっていると、先に『PSO2』にやられた、ということは、わりとあります(笑)。

酒井 ネタが被ることはありますよね。

宮下 コラボ先の方から「近い時期にもう1タイトルやるんですよ」と聞いて、「これ、絶対に酒井さんやん」と思ったことも……。

齊藤 もう、ジャンケンで決めましょう!

一同 (笑)。

酒井 そう言えば『DDON』の『ペルソナ5』とのコラボは、すごくよかったです。

木下 ありがとうございます。本編が、硬派なアクションと世界観を通して遊んでいくゲーム内容なので、季節ごとのイベントやコラボでは、それとは少し違う楽しみを味わってほしいという思いがあって。タイミングによっては深く掘り下げられないこともありますが、コラボする以上は、できるだけ楽しく、ユーザーの皆さんに息抜きしてもらえるようにしています。

宮下 ポテトチップスの盾もあったね。

木下 カルビーさんとのコラボですね。コラボでは、その時期にしか入手できないユニークな装備を用意しているので、ユーザー間での話題にもなって、盛り上がりますね。

吉田 昔は他社や、ましてや同業他社とのコラボなんてタブーだ、みたいな雰囲気がありましたよね。だいぶ変わってきたと思います。

酒井 世代が変わった気がしますね。

――業界全体で、みんなで盛り上げようという気持ちが強くなってきているのでしょうね。

吉田 この流れはすごくいいことだと思います。


●アップデートプランはどこまで決まっている? ユーザーの要望への対応状況は?
――アップデートの運営プランは、どれくらい先まで決めているのでしょうか?

齊藤 内容が変わる可能性もあることが前提の話ですが、『DQX』は現在、バージョン4の終わりまで、物語の大きな流れは決まっていますね。それが確定したのは少し前です。

宮下 『MHF』は2年くらい先までですね。このタイミングでアップデートをして、大きなコンテンツはコレで、リファインする部分はコレ、ということは決まっています。ただ、ユーザーさんの動向や、他タイトルのアップデート時期などによっては、丸っきり変わってしまうこともあります。

木下 『DDON』は、最初の1年はオンラインゲームとして立ち上げるための作業にものすごく必死だったんですよね。その時期に吉田さんとお会いして、「オンラインゲームは初期設計がとにかく大切」とアドバイスを受けました。

吉田 ローンチした直後に……。

一同 (笑)。

木下 運営していくとすごくよくわかるお話で、立ち上げに必死だった1年目と、ユーザーの動向を見て調整しようという2年目は、本当にたいへんでした。

――ローンチ前の想定と実際とでは、かなり違っていたのでしょうか?

木下 望んでいた想定という意味では、だいぶ違っていました。現在はユーザーの意見や動向を見ながら、そのニーズにどう合わせていくかを考えています。いまようやくシーズン3を計画しながら、シーズン4、シーズン5と、今後の新要素や調整を中長期スパンで決めようという状態です。

――ようやく落ち着いてきた感じでしょうか?

木下 いや、まったく(笑)。全然落ち着いてないのですが、いま必死に時間を捻出しているところです。

――『PSO2』はいかがでしょうか?

酒井 ある程度決まっているのは、エピソード5の終わりまでと、その後の展開をどうするかくらいまでですね。年数で言うと2年ぐらい先まででしょうか? 長期的な部分では、もうちょっと先まで決めていますが、結局変わってしまうことが多いので、あまり細かくは定めていません。

吉田 “2年”というキーワードが多く出ましたが、『FFXIV』もずっと2年サイクルで大型拡張の予定を考えています。プレイヤーさんの反応によって変えなければいけない部分は、“アドリブ枠”を設けて、別途コストをかけて対応しています。

酒井 『PSO2』でもそういったバッファーはありますね。

宮下 『MHF』も、そういう枠を用意しています。ユーザーさんの意見は毎日のように集計されていて、それが僕のもとに毎日届きます。それをどのタイミングで組み込めるか、技術的にできるのか、本当にやるべきかどうかを全部ジャッジして、アップデート内容に優先順位をつけている感じです。細かいけれどすぐにやったほうがいいものもあれば、時間はかかってもコツコツやらないと、という内容のものもありますね。

齊藤 そういうことを積み上げていくと、新しいことができる量が減ってしまうんですよね。

宮下 そのバランスが悩ましいですよね。1個の大きなアップデートでまとめて解決することもできなくはないのですが……、そうすると新しいものを入れられなくなってしまいますし。

吉田 「この10個の細かいことを全部やればこの大きな1個になるけど、どうします?」という局面はありますよね。

木下 要望対応というバッファーは、『DDON』のチームも持っています。すぐに実現できてメリットの大きなものは優先度が高くなります。どうしてもコストが掛かるものは、「僕もそれを直したい」と思いつつも……徐々にやっていくというスタイルで進めています。ユーザーの要望対応に対するミーティングも頻繁に行っていまして、最終的に何を選ぶかは、自分から指示を出しています。

齊藤 『DQX』の場合は地味ですが、週に2回、コミュニティーサイトに寄せられた意見を並べて、できること、できないことを現場の判断で決めます。場合によっては、その場で私から「こうすべき」とプッシュすることもありますね。また『DQX』では、新規ユーザーのためにレベルを上げやすくしたり、シナリオをクリアしやすくするところに力を入れています。

宮下 それって、けっこうな労力がかかるんですよね!

齊藤 かかるんですよ。初期の部分にテコ入れをする場合、昔に作ったところだから「どうなってるのコレ?」みたいなことが頻繁に起こって。この部分を直すと別のところがこうなってしまう、とか。

一同 あるある!

齊藤 メニューひとつ直すのもたいへんです。

酒井 「いっそのこと作り直したい」と思うこともありますね。

宮下 そうそう。それで実際に作り直したほうが早いこともありますからね。

吉田 作り直しというと、今回の『FFXIV』の『紅蓮のリベレーター』は、バトルシステムにかなり手を入れているので、メディアの方に“プチ新生”も言われました。

齊藤 メテオを落としたの?

吉田 メテオは1回落ちているので!(笑)

齊藤 『WoW』(BlizzardのMMORPG『World of Warcraft』)は、アップデートのタイミングでスキルラインから何まで相当いじってたよね? それぐらいの調整をしているの?

吉田 いえ、今回はもっとベースの基礎部分にいろいろ手を入れて、その上のUIを根本的に変えた感じです。

齊藤 『WoW』のディレクターはすごいなと思いましたね。丸ごと変えてしまいましたから。

吉田 『FFXIV』はそこまでではないですが、絶えず変化させないと飽きがきてしまいますので。

宮下 先程の『DQX』のレベルを上げやすく、というお話に関してですが、『MHF』もサービス開始から10年ですので、上位層の方に追いつきやすいデザインにしないと、そこまでの道のりが長すぎて長すぎて。でも、がんばってコツコツやってきた人の努力がムダにならないような、かつ初心者の方が追いかけやすいバランス調整を心がけています。

木下 『DDON』はまだ2年ですけど、皆さんが好んで使う技などが固定化してきているので、そこに対して少しずつ新しい変化を入れて、飽きさせないように、と考えてやっています。新エネミーを絡めて、楽しんで使っているものをより引き立てたり、別の使いかたができるようなアクセントを入れたりと。

齊藤 スキルや武器のパラメーター調整は、すごく反響が大きい部分ですよね。

宮下 『MHF』は基本的にそういったスキルや武器種毎のバランス調整、またスキルや武器の追加の部分がゲーム内容の多くを占めているので、その点では苦労することもありますね。他のタイトルの場合だと、ストーリーの追加がありますので、うらやましいと感じることがあります。

齊藤 ストーリーのあるゲームでは、すべてのユーザーさんに現時点までのストーリーを遊んでもらいたいんですよ。でも、新規の方の中には、「うーん。そこまでたどり着くのにどれくらいかかるんだろう」と考える方もいて、悩ましいですね。

吉田 そこまでの道のりが楽になるような調整がなされているのですが、「すごく大変だった!」と昔の記憶のままに言われてしまうケースもあって、「いや、もっと楽になってるよ!」と。でも、もう一回プレイするわけにはいかないので、難しいですね。

酒井 『PSO2』はそれがあるから、エピソードをリセット4では世界観を変えて、一から始めるという形にしたんです。7月からのEP5でもその流れに近いですね。

吉田 たとえば、「(海外ドラマの)『ウォーキングデッド』がメチャクチャおもしろいから観なよ」と言っても、「え? 何シーズンあるの?」と聞かれてしまう感じですね(笑)。

齊藤 私は(海外ドラマの)『ゲーム・オブ・スローンズ』を勧めるときには、「3日は徹夜して観ろ」と言いますけどね。

一同 (笑)

吉田 あ、でも『ゲーム・オブ・スローンズ』と『ウォーキングデッド』は、ぜひ最初からどうぞ!

齊藤 それか、「おっぱいドラマだから、とりあえず観ておけ」って。

吉田 ズルいなそれ! ……いや、合っているんですけど(笑)。

――ちょっと話を戻しまして。先ほど、齊藤さんはアップデート項目を現場判断で決めているとおっしゃいましたよね。

齊藤 ええ。最後はディレクターの判断になりますが。そのときのディレクターがやると言えばやるし、やらないと言えばやらない。そこは、その人の考えによります。藤澤(『DQX』バージョン1までディレクターを務める藤澤仁氏)は、自分でやると言うことが多いですし、りっきー(『DQX』現ディレクター・齋藤力氏)はスタッフの意見も聞きつつ、ですかね。まぁ初期に比べれば、全体の物量が多くなってきていることがスタンスの違いにつながっているのかもしれませんが。でも、りっきーも自分でやりたいものがあるときは、当たり前ですが、頑固にやりきりますね。あまりにも「これはないな」という内容の場合は、私が反対することもあります。

吉田 でも、齊藤さんの「これはない」の許容の幅は、尋常じゃないほど広いと感じます。自分が任命したディレクターである以上、最後までその人を信じることが自分の役目なんだという考えは、すごいと思います。

齊藤 ゲーム内容に関しては、ディレクターにだいたい任せています。任せられないディレクターならば、変えればいいわけですし。そう考えるとプロデューサーなんてツマラナイ仕事なんですよ。

吉田 だから『NieR:Automata』を作り始めたりしちゃうんでしょう?(笑)。

齊藤 その仕事だって、ヨコオタロウをどれだけ許容できるかってことだよ(笑)。吉Pから、『DQX』のアップデートやゲーム内容への意見をもらうこともあるよね。

吉田 僕は元々『DQX』チームにいたので、チームの定期連絡メンバーにいまも入っているんですよ。いまでもスタッフ全員のコメントを見たり、コメントに対して突然レスをしたりしています(笑)。

酒井 スタッフはドキドキするでしょう(笑)。

吉田 ゲーム業界でいろいろな連絡システムを見てきましたけど、『DQX』ほどいまでも生き残っているシステムは見たことがありません。

齊藤 “よーすぴ週報システム”は、もっと褒めたほうがいいよ。

一同 (爆笑)

吉田 たまに、オンラインゲームのありかたについて悩んでいるコメントを見ると、うれしくなってレスすることもありますね。僕が抜けた後に入ったスタッフからしてみれば、「なんで急に『FFXIV』の吉田が!」ってなるでしょうが(笑)。

齊藤 『DQX』スタッフの中には、『FFXIV』を遊んでいる人もいて、吉Pがいることを知らずに『FFXIV』に関する辛辣なコメントを書いたりすることもありまして。吉Pからそれに対する返事が来たりするよね(笑)。


●プロデューサーはつらいよ!? “タイトルのためなら”体を張ります
――吉田さんはプロデューサーとディレクターを兼任していますよね。

吉田 はい。だから僕は多重人格気味ですね。ディレクターの自分が「これをやりたいよな」と思っていても、もうひとりのプロデューサーの自分は「いやでもそれ無理じゃない?」と。最終的には、「自分で判断」というポリシーに則っていますね。ずっと遊んでくださっている方に「なんだかんだ言って『FFXIV』チームは、自分たちのポリシーに反するものは作っていないよね」と言ってくださる方もいます。そのうえでプレイヤーの皆さんがフィードバックをくれて、それに対応していくことを評価してくださるのは、非常にありがたいです。

齊藤 プロデューサーとディレクター、どちらをやっていきたいの?

吉田 そりゃ、ディレクターです! 齊藤さんがプロデューサーをやってくれるなら、いますぐ席を譲ります(笑)。『NieR:Automata』の作業が終わって、『DQXI』もそろそろじゃないですか。

齊藤 ちょっと休みたい(笑)。

吉田 そう言って休まないし……。

齊藤 新しいプロジェクトを立ち上げたところだし……。

吉田 それ、キャンセルしましょう!

一同 (笑)

吉田 いっそ、酒井さんがプロデューサーを受けてください!

酒井 えぇ、俺ですか!?

宮下 それ、新しいですね。もうコラボの域を超えていますよ!

齊藤 さっそく、席を作っておきますよ(笑)。

吉田 そうしていただいたら、僕がもう1本タイトルを抱えられますね。

――プロデューサー業は楽しくもあり、悩ましくもありといった感じでしょうか。

宮下 そうですね。僕はなぜか滝行までやらされていますからね。(※)

酒井 あれはすごかったですね~。

宮下 パイ投げも食らいましたし、ゴムパッチンもやりました。

一同 (笑)

※滝行:2015年4月に公開された“開発運営レポート(動画版)”に、これまでの反省とアップデートの祈願の意を込めて、開発陣が滝行を行う企画が収録されている。

――なぜ、その企画を受けたのですか?

宮下 企画者が滝行を自分でちゃんと体験して、しかも動画撮影までしたうえで、「これぐらいのたいへんさです」というのをプレゼンしてくるんですよ。いざと言うときのために救命士もちゃんとスタンバイしていました。

齊藤 うちだったら、暖かいコーヒーが用意されている程度だろうなぁ(笑)。

酒井 僕も、イベントで踊ったりしていますね。(※)

齊藤 酒井さんは、イベントとか関係なく、よく踊っているのではないですか?

宮下 そんなイメージがありますね(笑)。

※2015年7月、『PSO2』の参加型ステージライブに“アークスダンスフェス”が実装。その後、参加者全員がダンスを踊って楽しめるオフラインイベント企画が実施された。そのイベントに先駆けて、酒井氏をはじめとする開発陣による振りつけ練習用ダンス動画が公開。ちなみに、酒井氏はドラマ“逃げ恥”の恋ダンス動画も披露している。

酒井 まぁ、踊りに関しては、僕が勝手にやると言い始めたんですけどね。「俺が踊れるんだから、ユーザーさんもみんな踊れるよ!」ということを示すためにやったんですよ。そうしたら、みんながそれに乗ってくれまして。

吉田 『PSO2』のリアルイベントに呼んでいただいたときに、いろいろなブースを見て回ったのですが、通路にモニターが置いてあって、そこで振りつけの練習ビデオを流しているんですよ。

酒井 ダンス練習コーナーですね。

吉田 そこで来場者が5、6人で振りの確認をしていて。みんないっしょに踊って楽しみたいから練習しているんだな、と感動しました。“目線がいっしょ”というのは、こういうことだよねと、『FFXIV』チーム内でとても刺激を受けました。

酒井 そう言ってもらえるとうれしいです。最初は「踊りってどういうこと!?」という感じでしたが、踊りのモーションをゲームに実装して、何回かリアルイベントで踊ってるうちに、いっしょに踊る人が増えていきましたね。

吉田 ふつうの発想ではないですよ、オンラインゲーマーに生身で踊らせようなんて。

酒井 “唯一無二の感動体験を”というのがセガのテーマでもありますから。

吉田 なんで棒読みなんですか(笑)。イベントのラストのダンスは、本当に感動しました。僕がステージで『FFXIV』コラボを発表するときに、アークスの皆さんが「うぉー!」と喜んでくれたことは、忘れられません。それがあって「もっとがんばらないと」と思いました。

――リアルイベントはファンの声や熱気を目の当たりにできるからうれしいですよね。

酒井 半分くらいは、自分たちのモチベーションを上げるために、イベントをやっていますね。ネット上の意見ばかりを見ていると、気持ちがマイナスになって大事なものを見誤ることがあります。イベントでプレイヤーの皆さんと直接会ったり、話をすることは、「自分のゲームを楽しんでくれているんだ」という実感を得られますし、非常に大事だと思います。

吉田 わかります。でも、そろそろ踊りは……。『FFXIV』チームと宣伝チームが、「いかに吉田を踊らせるか」みたいなことを考えていて困っているんです(苦笑)。

齊藤 踊り手さんを紹介しますよ。

吉田 プロデューサーが踊るのはもう打ち止めで!

齊藤 吉Pも、そろそろ踊るといいと思うよ。

吉田 いや。僕のキャラを見て企画を考えてほしいと思うわけですよ。僕に踊りをさせるよりは“歌舞伎町のお店に入店!”のような、別の施策を考えたほうが……。

齊藤 クラブ“愛・本店”に1日入店!

吉田 それでバズるのなら、体験入店もアリかと思いますし、そんな企画のほうがまだおもしろいと思うんですよ。やりたいわけではありませんが、タイトルのためになるならやりますよ。

齊藤 私が企画書を提出しますよ!

吉田 誌面で太字にしてくれないとダメですよ。“タイトルのためになるなら”って(笑)。


●オンラインゲームのこれから 齊藤氏の老後の楽しみとは!?
――今後のオンラインゲームがさらに発展するには、どうすればいいと思いますか?

吉田 もう少しタイトルが増えたほうがいいとは思います。切磋琢磨の意味もありますが、新規タイトルが出てこないとまずい。きっとあと5年、10年が経つと、『FFXIV』や『PSO2』を遊んでいた人たちが作り手になると思うので、その世代に期待したいです。ただ、現在のスクウェア・エニックスには3本のMMORPGがあるので、さすがにこの状態で新規タイトルは無理ですかね……。

齊藤 『DQX』と『FFXIV』はMMORPGで、ほかの皆さんのタイトルはMOじゃないですか。私はMOをやってみたいな、と思います。MMOとMOは似て非なるものなので、ちょっと興味がありますね。

宮下 なんでしたら、『MHF-Z』のプロデューサーをやりませんか?(笑)。

齊藤 もし許されるなら、勉強しにいくというか、産業スパイとして潜り込みたい(笑)。

宮下 スパイって口に出したらダメですよ(笑)。

吉田 僕は引退したら、齊藤さんとオンラインゲームバーというのを経営しようと思っていて。そこから生放送もしたりしようかな、と。

齊藤 ここにいる4人にお願いしたいのが、私が60歳で定年を迎えたら、そのタイミングで私が死ぬまで遊べるようなMOなり、MMOを作ってもらいたいですね。


――スマートフォンの市場が拡大してきていることについては、どう感じていますか?

齊藤 Unity(※)ならば、さくっとフルスクラッチで0から作るよりは比較的簡単に作れますし、ゲーム性をユーザーが納得してくれているなら、それはうらやましいと思います。

※Unity:統合型のゲーム開発環境を内蔵したゲームエンジン。おもにモバイルアプリやPCブラウザゲームの制作などに用いられ、家庭用ゲーム機を含むさまざななプラットフォームへ向けたアプリケーションを制作可能。

酒井 最近はマルチで対戦できるスマホゲームが増えてきて、MMORPGの『リネージュ2 レボリューション』なども出てきています。スマホでMOやMMOをプレイする時代が来るのは、そんなに遠くないのかなと思います。ただ、日本人がすごくハマるかはわかりませんが。

――ライバルだとか、自分たちを脅かす存在だとは考えていない、と?

吉田 すごいタイトルが出てきたら、僕らもがんばるというシンプルな構図だと思います。日本のオンラインゲーム市場は、もっと大きくなる余地がありますし、こんなに恵まれている市場もないと思います。これほどにも、それぞれのメーカーが自社のメインタイトルをオンラインゲーム化して勝負している市場というのは、海外にはありませんからね。

齊藤 メインタイトルのオンライン化か……『どうぶつの森』に期待ですかね。

吉田 『ゼルダの伝説』のオンライン化の話があれば、ぜひください……(笑)。

一同 (笑)

宮下 それ、ぜひ遊んでみたいなぁ。

齊藤 『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、いわゆるオープンワールドタイプのスタンドアローンが、すごく心地よかったですよね。

吉田 『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、すべてのタブーを壊していたところに感動しました。オンラインゲームにするとしたら、サーバーにリンクはひとりでいいと思うんです。ランダムでプレイヤーのひとりがリンクになる感じで。ログインしたら「俺、今日リンクだ!」のような。ステータスを見ると、前回リンクだった人がクエストをものすごくサボっていたのがわかる、とか。

齊藤 ログインしたら、木こりのおじいさんとか(笑)。

宮下 おもしろそう!(笑)

吉田 ポストマンになった日には「手紙が400通も溜まってる!」とかもあったりで。街に行くたびに「●●さんいますか? 手紙が届いてます!」みたいな。

吉田 ガノンだったら、ダンジョンのいちばん奥でじっとしていて「リンク、なかなか来ないな……」とか。

齊藤 それ、発売日初日にガノンに当たってしまったら、やることないでしょう。

吉田 ダンジョンから出て行けばいいんです。そして、その辺りの村を焼き払う。

齊藤 自分で樽を持ち上げて、破裂したらたいへんですね。

吉田 そうしたらエンディングですね。「ガノンが自爆しました」とログに表示される(笑)。

木下 アイデアがどんどん出てきますね。

吉田 それぐらい日本のゲームには、オンライン化できるものが山ほどありますので、市場はまだまだ伸びていくと思います。あとは、『ディアブロ4』を作るのだったら、それもぜひ(笑)。

齊藤 それは私がやるよ!(笑)。

吉田 じゃあ、齊藤さんがプロデューサーで、僕がディレクターで。

齊藤 よし、Blizzardに潜ろう(笑)。あと、ここにいる4人にお願いしたいのが、私が60歳で定年を迎えたら、そのタイミングで私が死ぬまで遊べるようなMOなり、MMOを作ってもらいたいですね。

一同 (笑)

――話は尽きませんが、ありがとうございました。メーカーやタイトルの垣根を越えて、いろいろなことができる時代になってきましたし、我々メディアも含めて、皆でオンラインゲーム市場を盛り上げていきたいですね!




  ……その後も、まだまだ夜会は続くのであった。



※本記事は、週刊ファミ通2017年7月20日号(2017年7月6日発売)の“特別企画 THE夜会 ~オンラインゲーム出ずる国の男たち”記事内に掲載した内容に、加筆・修正を施した完全版です。

最終更新:7/21(金) 0:03
ファミ通.com

Yahoo!ニュースからのお知らせ