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「社用車にベンツがいい」は都市伝説 社用車導入の3つの注意点、税理士が解説

7/21(金) 7:10配信

経営者online

法人の節税策の一つとして、社用車の導入を検討するのはもはや常識と言っていいだろう。ただし、知識があやふやなまま、思いこみで導入すると、トクするどころかむしろ痛い目に遭うことになりかねない。社用車を導入することで、どのようなメリットがあるのだろうか。そして、何に気をつけなくてはいけないのだろうか。

■社用車を活用することのメリット

社用車を活用することによる最大のメリットは、減価償却費による節税だろう。経営者によっては「車を買えば全額経費になる」と誤解する人もたまにいるのだが、基本的に10万円以上(青色申告する法人ならば30万円以上)の資産は全額すぐに経費とはならない。いったん固定資産として計上した後、年数や月数に応じて減価償却という経費として落としていく。

こう話すと「なんだ、すぐに経費にならないなら損じゃないか」と思う人もいるかもしれない。しかしちょっと考えてみてほしい。法人の売上は、時期によって変動する。好況のときもあれば不況のときもある。好況のときはキャッシュを出して経費で節税するのはたやすいが、不況のときに実費を出してまで節税策を取るのは苦しいものだ。このとき、もし、社用車を持っており、かつ、キャッシュを伴わない減価償却が行われていたらどうだろうか。単に節税になるだけでなく、苦しい資金繰りが少しラクになる対策として考えることができるのだ。

■社用車活用上の注意点

とはいえ、社用車で節税を行う場合、注意も必要だ。具体的には次のようになる。

1.社長名義より法人名義がベター

社長名義の車をそのまま法人で使用し、減価償却費やガソリン代を経費計上することもできなくはない。しかし、税務調査の際には「公私の区別がついていない」「不当に税金を低くしようとしている」などとして、ツッコまれやすいポイントとなる。そのため、法人名義にするのがより無難だ。経営者個人の自家用車を法人名義にすることもできる。

ただ、個人所有の車を法人名義にする場合、できることなら有償で売買し、きちんと売買契約書を作成してほしい。売買の実態を証明できれば、税務調査でツッコまれる可能性も低くなる。また、無償で譲渡をすると、法人ではその分「受贈益」となり、法人税課税の対象となるので注意したい。

さらに、法人名義になると、自動車保険などのランニングコストが高くなる傾向がある。こういったことも十分検討した上で、活用を考えていただきたい。

2.4年落ち以上の中古車を活用しよう

人によっては新車を好むこともあるだろう。しかし、法人の節税を考えるなら、中古車、それも最低限4年落ちの購入を検討していただきたい。理由は、減価償却の早さだ。

減価償却は、国によって定められた法定耐用年数に従って行う。年数が短ければその分多額の減価償却費を計上でき、より多くの税金を節約することができる。

この法定耐用年数、新車の場合は一律6年だ。それに対し、中古車の耐用年数は次のように定められている。

(1)法定耐用年数の全部を経過した中古車の場合
 その法定耐用年数の20%に相当する年数

(2)法定耐用年数の一部を経過した中古車の場合
 その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に、経過年数の20%に相当する年数を加えた年数

※ただし、いずれも1年未満の端数がある場合は切り捨て、2年未満の場合は2年とする。

4年落ちの中古車の場合、6年-4年+4年×20%=2.8年→2年になる。車の多くは定率法で償却するので、2年の減価償却率は1.0となる。つまり、購入金額のほぼ全額を経費計上できることになる。

ただし、期中や期末で購入した場合、減価償却費は月数按分することになる。つまり、全額ではなく、使用開始した日から期末までの分しか経費計上できない。いつから活用するかについては十分注意していただきたい。

3.車好きは要注意!プライベートの車ときちんと区別し、社用車の実態を備えること

社用車の活用を検討したがる経営者の中には、クルマ好きも少なくない。そしてこれは税務署にとっても目を光らせるポイントとなっている。つまり、社用という「公」のフリをしながら、実際は経営者本人の趣味という「私」が実態なのではないか。そうなると、社用車は法人の売上には何ら貢献しておらず、ただの脱税の道具となっているとみられる可能性が生じる。特に社用車がフェラーリ、ポルシェといった趣味性の高い車なら要注意だ。

この場合、できるだけ、社用車である実態を示す証拠を残してほしい。ガソリン代のレシート、そしてその運転の際はどのような社用だったのか、また、社長の趣味の車は別途プライベートにあるといったことなどだ。

事実、国税不服審判所(裁判で争う前段階の審判機関)の非公開裁決(平成7年10月12日)にて、社用車フェラーリの事業上の必要性が争われた事例がある。
ここでも事業性の推認のポイントとなったのが、フェラーリの社用の実態と、経営者個人がきちんと公私の区別をつけているか否かという点であった。経営者個人の趣味と区別し、社用車としての実態を備えることを注意していただきたい。

巷では「ベンツはOK、それ以外はアウト」といった都市伝説が流れることがある。が、それはあくまでも都市伝説でしかない。会計上、そして税務上、経費はあくまでも、事業者が売上をあげるための「努力」として捉える。言い換えると、売上をあげるための支払いではないなら、それは経費ではない。その点を踏まえ、社用車活用を検討するのが望ましい。

鈴木 まゆ子 
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。現在、外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、数字に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、経済的DVにまつわる心理についても独自に研究している。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。ブログ「税理士がつぶやくおカネのカラクリ」http://ameblo.jp/mayusuzu8/

最終更新:7/21(金) 7:10
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