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[特集]【3年後の予測】ワークスタイル変革待ったなし! 仕事とプライベートの融合が鍵に

7/21(金) 18:00配信

BCN

 住宅・建設分野を中心に、ITから経済まで幅広く取材する一方、自宅の「出口戦略」を念頭に、相続時に必要な情報を網羅した2014年発行の書籍「実家のたたみ方」が話題になったジャーナリストの千葉利宏氏。今回は、17年7月31日発行の『BCN RETAIL REVIEW』8月号の特集、「2020年 デジタル・家電市場予測」の紙面に収めきれなかった千葉氏のインタビューを中心に、自宅や勤務先以外の場所で仕事をするテレワーク、モバイルワークの本格的な普及への期待と、それがもたらす変化を予測したい。

■テレワークの普及で変わる住まいのトレンド

 インタビューは、相続時に必ず直面するにもかかわらず、明確なルールが定まっていない「遺品整理」から、奨学金や携帯電話の分割払いなどが重なった「借金過多」の問題、急激な受注増から爆発的な普及一歩手前といった感のある「宅配ボックス」まで、話題は多岐にわたった。

 紙面では、<2020年の住宅・リフォーム業界予測>として、住宅に関することに絞ってまとめた。本記事では、<ワークスタイル>に焦点をあてたい。20年といわず、今すぐ新しい働き方、新しい評価体系が広がらないと、理想と現実の板挟みになった現場は疲弊するばかりだろう。

●職住近接の動きは限定的? もはや高すぎて一般人には買えない都心物件

 住宅の話から続けて、千葉氏は、マンションの販売実績や人口に関する数字が示す「都心回帰」や「職住近接」の流れは、実態とは少し乖離しているのではと疑問を呈した。

 建築費の高騰などによって、リーマンショック後の底値だった12年に比べ、大幅に上昇した新築マンションの価格は、東京カンテイによると、全国平均で年収の7倍以上、首都圏では1都3県すべてで10倍の大台を突破。70m2で7000万円を超えるとなると、かなり高年収でなければ、夫婦共稼ぎでも手が届かない。新築と連動して中古マンションの価格も値上がり、郊外エリアでは、パワービルダーの建売住宅に実需が移りつつある。ここ数年、人気を集めている都心のタワーマンションは、海外の富裕層が購入している割合が高く、日本人の購入者も、低金利の継続を前提とした、無理のあるローンを組んでいると指摘する。

●広い家に安く住める郊外エリアの見直しを 千葉氏が提言

 20年夏に開催予定の東京五輪・パラリンピックは、「東京」への関心を否応なく高める。しかし、千葉氏は、誰もが会社近くに住む必要はなく、住宅地として、自然が多く、子育てにも適した郊外エリアの価値を改めて見直すべきではないかと提言した。待機児童解消のため、地価の高い都心部に保育所を新たに建設するより、夫婦共稼ぎを支援する、郊外エリアの子育て環境を拡充し、住み替えを促すほうが現実的。その鍵を握るのがテレワークだ。

 千葉氏によると、5年前からテレワークを実践した日本マイクロソフトは、それ以前に比べ、4割もオフィススペースを削減できたという。合計700件を超える「テレワーク・デイ」に参加企業の多さが示す通り、テレワークの普及は、経費削減など、企業側にとってもメリットがある。

 政府が進めている一連の「働き方」改革の議論のなかで、従来のように、オフィスに毎日、出勤せず、自宅やカフェ、コワーキングスペース、サテライトオフィスなどで働くスタイルは、「20年を待たずに、意外と早く普及するではないか」(千葉氏)。

 生産人口と呼ばれる15歳~60歳ゾーンが減り、勤労意欲はあるが、家庭の事情や体力の関係で長時間働けない女性や高齢者の就労を促さない限り、人手不足に陥ることは確実。ここ1~2年で、環境の整備と意識改革がどこまで進むかが、分岐点になりそうだ。

●仕事を家に持ち込むスタイルは、定番のLDKの間取りを変える

 千葉氏は、もう一つ、新しい見方を示した。テレワークが普及し、仕事を自宅に恒常的に持ち込むようになると、従来のリビングを中心としたLDKは生活スタイルに合わなくなり、仕事に集中して取り組めるワーキングスペースが必要になると指摘する。

 戸建てであれば、LDK+1、LDK+2といった間取りに変わる。分譲マンションなどの集合住宅は、共用施設として、集会室・キッズルームやゲストルームに加え、書斎・ライブラリーのニーズが高まる。都心の高額物件では、珍しくない設備だが、郊外エリアの物件ほど必要性は高く、テレワークの普及に欠かせないと話した。

 標準的な間取りの変化、共有設備のトレンドの変化は、リフォーム需要や住み替えを促し、家電製品の買い替え需要を喚起する。その経済効果は、<2020年の住宅・リフォーム業界予測>で取り上げた、戸建て住宅の「ZEH(ゼッチ、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」対応以上になるだろう。

●今すぐ実践したい柔軟な働き方、理想のワークスタイルとは?

 20年に向けて国は、首都圏のインフラの再整備、準天頂衛星「みちびき」を利用した日本版GPSの本格運用、訪日外国人観光客の利便性を高めるWi-Fi整備といったハード面から、電子納税・キャッシュレス化の推進、小学校でのプログラミング教育の必修化といったサービス面まで、さまざまな目標を掲げている。千葉氏は、20年の予測としてテレワークの普及を挙げたが、政府目標の一つに入っている以上、今後、数年のうちに、形だけでも普及するだろう。

 接客や介護、営業などとは違い、人と接する必要のないデスクワークやビジネスに関する企画立案は、インターネットにつながり、集中できる環境なら、いつでもどこでもできる。費やした労力と成果が比例せず、労働時間以外に、客観的な評価基準がないという課題は残るものの、生産性の向上を目的に、ようやく現実味を帯びてきた。最新のIoT技術やAIを駆使したシステムの導入で、一定の効率化・自動化も期待できる。

 理想のワークスタイルは、その日の体調や予定などに合わせて出勤する/しないを自身で決め、やりとりの記録が自動的に蓄積されていくメッセンジャーや、過去の改定履歴が残るオンラインストレージなどを活用しながら、1日4時間、6時間といった短い時間でその日、自分がやるべきタスクに集中して取り組める、メリハリのある働き方。集中力を必要としない作業は、移動中や自宅で手の空いた時間にやって帳尻を合わせる。こうした新しい働き方が一般化した時、ワークライフバランスは、従来のように仕事とプライベートを切り離すのではなく、適度な融合をどう目指すかという問題になる。

 現在、政府が進めている一連の「働き方」改革が実を結ばず、現状から何も変わらなければ、のらえもん氏が指摘するように、通勤利便性や賑わいぶりによる住宅地の優劣が鮮明化するだろう。今よりもっと働きやすく、どの街も活気のある未来を望みたい。(BCN・嵯峨野 芙美)

■プロフィール

経済ジャーナリスト 千葉利宏
 北海道出身。東京理科大学建築学科卒、日本工業新聞社(現フジサンケイビジネスアイ)で半導体・IT、金融、自動車、建設・住宅・不動産を担当し、2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議幹事。著書は「実家のたたみ方」(翔泳社)ほか。

最終更新:7/21(金) 18:47
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