ここから本文です

PCメーカーが提案するIoTプラットフォームは「囲い込まない」

7/21(金) 8:10配信

MONOist

 NECパーソナルコンピュータ(NECPC)とキュレーションズは2017年7月19日、東京都内で会見を開き、企業がIoT(モノのインターネット)デバイスを利用したサービス提供を簡単に行うためのIoTプラットフォーム「plusbenlly(プラスベンリー)」を共同開発したと発表した。同日から無償のβ(試作)版を公開しており、同年内に正式版をリリースする計画である。

【「plusbenlly」のサービスイメージなどその他の画像】

 plusbenllyは、ネットワーク機能を備えたIoT家電やウェアラブルデバイス、SNSをはじめとするインターネットサービスなどを相互に接続し、自由に組み合わせる機能を提供するクラウド上のバックエンドサービスだ。企業向けに提供されるB2Bのサービスであり、ユーザー企業はplusbenllyを経由して異なるメーカー間のIoT機器を組み合わせて新たなサービスとして提供したり、機器から収集されるデータやインターネットサービスの情報を組み合わせて自社サービスの利用者に有益な情報として提供したりできる。複雑な機器間の接続やデータの交換はplusbenllyにあらかじめ設定されているため、ユーザー企業は簡単にIoT機器とインターネットサービスを連携させられる。

 また、NECPCとキュレーションズは、plusbenllyの利用を希望する企業に対しコンサルティングやパートナーのマッチングサービスも行い、新しいビジネス創造の種を具体的に提示していくという。

●「これがIoTだ」という新しいサービスは生まれているのか

 会見の冒頭で、NECPC社長の留目真伸氏は「家電製品がスマートフォンやタブレット端末につながる、ロボットが工場で使われる、サプライチェーンが効率化される……。これらはIoT活用の第一歩にすぎない。全てのモノがインターネットにつながる以上、IoTによってさまざまな課題が解決されるべきだが『これがIoTだ』という新しいサービスは生まれているだろうか。課題は解決されているだろうか」と問いかけた。

 留目氏の問いかけは、さまざまなIoTプラットフォームが提案され、新たなIoT活用サービスに向けた取り組みが進んでいるにもかかわらず、業界間にまたがるようなユーザー体験(UX)が生み出されていない現状に対するものだ。「つながることで、データが流通することで、もっともっと自由に結び付く必要がある」(留目氏)。

 plusbenllyは、業種や業界を横断した結合を生み出すオープンなIoTプラットフォームになっている。大手ITベンダーのIoTプラットフォームが“囲い込み”をしがちなのに対して、センサー情報を収集するさまざまなIoTデバイス、新たに考案したIoTサービスをつなげるデータ流通プラットフォームとしての役割を担う。「IoTデバイスとIoTサービスだけでなく、IoTデバイス同士、IoTサービス同士もつなげる土管のような役割だ」(キュレーションズの説明員)という。

 そして、オープンにつなげることを目的としているのもあってか、plusbenllyは“IoTオープンイノベーションプラットフォーム”と呼称されている。

●4種類のパートナー、総計52社で発足

 plusbenllyは、コネクテッドパートナー、ビジネスパートナー、テクノロジーパートナー、コミュニティーパートナーという4種類のパートナーによって事業展開が進められることになる。

 コネクテッドパートナーは、IoTデバイスを持つ企業群であり、現時点で25社/35のデバイスサービスがplusbenllyにつながっている。ビジネスパートナーはIoTサービスの提供を目指す企業群で9社が参加している。既に、大和ハウスグループと積水ハウスが、plusbenllyを用いた住宅向けIoTサービスを発表している。

 テクノロジーパートナーは、plusbenllyと連携して先端技術を提供する企業群で、12社が参加。そして、plusbenllyをクリエーターやエンジニアに幅広く利用してもらえるようなコミュニティーづくりで活躍するのがコミュニティーパートナーで、6社が参加を表明している。パートナー企業の総数は52社にのぼる。

 会見には、これら4種類のパートナーを代表する企業も参加した。コネクテッドパートナーであるオムロンで技術・知財本部 SDTM推進室長 経営基幹職を務める竹林一氏は「私が所属するSDTM(センシングデータ流通市場)推進室はこの4月に発足したばかり。IoT時代はデータを掛け合わせることで面白いことが起こる。plusbenllyをエンジンとすれば、センシングデータはエンジンを動かす原動力。当社は、その原動力として貢献したい」と語る。

 ビジネスパートナーからは、オイシックスドット大地 執行役員 統合マーケティング部 部長 Chief Omni-Channel Officerの奥谷孝司氏が参加した。奥谷氏は「これから重要なのは物販データではなく行動データだ。plusbenllyは、さまざまなIoTデバイスから行動データを横串で収集できる点で興味深い」と述べる。

 テクノロジーパートナーのさくらインターネットでフェローを務める小笠原治氏は「当社も『sakura.io』というIoTプラットフォームがあるが、plusbenllyとつながることでsakura.ioのユーザーにとっても新たな可能性が広がる。また、IoT時代に大きな価値を生み出す情報をきちんと取り扱える『情報銀行』の実現にも役立つだろう」と強調する。

 コミュニティーパートナーのロフトワークからは代表取締役の林千晶氏が参加。「消費者側としては、全てインターネットにつながるからこそ全部まとめて操作したいのに、現時点ではクルマとか住宅とか業界ごとに分かれていて不便だ。だからこそ業界を横断するオープンコラボレーションが必要。plusbenllyのパートナー数は現在約50社だが、例えば2018年に500社に増えれば、より良いIoTサービスを実現する力になるだろう」と述べている。

●NECPCとキュレーションズはなぜplusbenllyを企画/開発したのか

 パートナー企業がplusbenllyに参加する理由はある程度分かりやすい。それに対して、ITベンダーではないNECPCとキュレーションズが、IoTプラットフォームであるplusbenllyを企画/開発したのはなぜなのだろうか。

 まず、キュレーションズは、顧客企業が目指す新たなビジネスのローンチのサポートが主力事業になっている。この主力事業を進める上で、plusbenllyというIoTプラットフォームやそのパートナー企業の存在は、IoT時代において極めて有用だ。

 一方、NECPCは、PCをはじめとするコンピューティングデバイスのメーカーであり、IoTプラットフォームの活用による直接的なメリットが大きいとはいえない。留目氏は「plusbenllyを使ってIoTによる課題解決が進んでいけば、主力事業であるコンピューティングデバイスの需要も拡大するだろう」と述べており、最終的にNECPCの事業に資するという見方を示した。

最終更新:7/21(金) 8:10
MONOist