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「ラジオは“気配”発生装置」――スマホと連携“IoTラジオ”「Hint」一般発売

7/21(金) 7:10配信

ITmedia NEWS

 ラジオとは何か――。その本質を見つめ直したという製品が、クラウドファンディングから一般発売までたどり着いた。

【画像】ラジオ番組からリスナーのスマートフォンにURLを届ける仕組み

 ニッポン放送とCerevo、グッドスマイルカンパニーは7月20日、スマートフォンとBluetooth接続するラジオ受信機「Hint BLE Radio」(ヒント・ビーエルイー・ラジオ)を9月初旬に一般発売すると発表した。ラジオ局が同製品を通じてリスナーのスマホに番組関連URLを送れるほか、音楽スピーカーとしても使える“IoTラジオ”だ。同日から公式サイトなどで購入予約を受け付ける。実売予想価格は2万2000円(税別)。

 「ラジオって何だろうと考えると、『これは人の気配発生装置だ』と思い至ったんです」――そう話すのは、ニッポン放送アナウンサー吉田尚記さん。「ラジオとは何か」という疑問から生まれたHintに、吉田さんが込めた思いは。

●スマホと接続する“IoTラジオ”

 Hintは、通常のAM放送と同じ番組を、FM放送波で同時に流す「ワイドFM」(FM補完放送)に対応するラジオ受信機。FMアンテナは本体に内蔵している(付属の外部アンテナを接続すれば受信感度を上げられる)。

 ラジオ番組内で「ピポパポ」という電話のダイヤル音(DTMF音)が流れると、リスナーのスマホ(Android/iOS)に番組情報と関連したURLが届く「BLEラジオ」機能も。スマホとHintのペアリングは必要なく、リスナーは近くにいるだけでURLを取得できる。

 Bluetoothスピーカー機能も搭載。スマホ内の音楽やポッドキャストを再生できる。microUSB経由で充電可能で、連続駆動時間は約3時間。サイズは80(幅)×80(奥行き)×297(高さ)ミリで、重量は1075グラム。

 同製品は、2016年7月に3社が共同開発を発表。クラウドファンディングで目標額1300万を達成し、一般発売が決まった。

●「ラジオとは何か」

 「ラジオって、『これから重要なことを聴くぞ』という気持ちで聞くものではないですよね」――開発発起人の吉田さんはそう話す。

 「ラジオって何だろうと考えると、『これは人の気配発生装置だ』と思い至ったんです。それで、気配を辞書で引くと『hint』でした。ラジオは答えを求めて聴くものではないのに、聴いたことが後々本当に何かの答えになったりするじゃないですか。だから『hint』が製品名に最適だなと」(吉田さん)

 吉田さんは「人って、聞き流してもいい人の話は大好きなんですよ」とも。「上司と授業の話は嫌いなんですよね。どちらもリアクションを求められて、話を聴いていたかどうかが試されるからすごく嫌なんです。でも、ファミレスで隣に座っている人の話は気になるじゃないですか」

 そんな「ラジオは聞き流してもいい」「ファミレスの隣人の会話のように聞き流せる」という考え方が、“気配”をかもせるラジオ受信機の開発方針になったという。

●ラジオの“聞き疲れ”に配慮

 そんな「気配」に配慮したHintには、ラジオの“聞き疲れ”を避ける工夫が。無指向性スピーカーを採用し、全方向に音を流すことで、部屋のどこにいてもラジオが聞こえるよう設計した。スピーカーはフルレンジを1基、ベースを1基、ツイーターを1基搭載する3Way構成とし、特に人の声の周波数帯である400Hz付近を聞こえやすいようにチューニングしたという。

 コンセプトを練ったデザイナーのミチクロさんは「人の声向けにチューニングしていない、低音がよく出るスピーカーで声を聞き取ろうとすると、低音もその分鳴ってしまい聞き疲れする」と指摘。チューニングしたHintは、適性音量で人の声を遠くまで届けられるという。

 大のラジオ好きという声優の中村繪里子さんは、Hintの無指向性スピーカーに魅力を感じたようだ。中村さんは、完成直前のプロトタイプを持ち帰って使用していたという。

 「最近『風ぼっこ』(ベランダで風に当たること)をするのが楽しみなのですが、スピーカーが無指向性なので、本体の向きを変えなくてもベランダ側にも音が届くんです。音がよくて、無指向性スピーカーってこんなに威力を発揮するんだなって」(中村さん)

●岩佐CEOが涙ぐむ理由

 共に開発・製作したCerevoの岩佐琢磨CEOは、Hintが一般発売までたどり着いたことに「ちょっと泣きそうですね」とコメントした。

 その涙は、遅延が一因のようだ。Hintは当初、17年3月にクラウドファンディングの出資者に向けて製品を出荷するはずだったが、二度の遅延を経て7月の出荷に。そのため一般発売も遅れた。

 「遅延の原因は中国工場でのトラブルだった」と岩佐さんは振り返る。一度目の遅延はパーツを接着する過程でトラブルがあったこと。二度めの遅延は、使用していた金型が壊れてしまったためという。

 グッドスマイルカンパニーの安藝貴範社長は「これまでにない、縦型のラジオというので設計が難しくなった」と製造過程の難しさを語る。「フィギュアでも製造工程を進める中で、戻って設計し直すことがある。それに近い感覚だった」

 出荷製品の品質は担保されているのか――そんな記者からの問いに、岩佐CEOは「中国で作ったものをグッドスマイルカンパニーの鳥取工場で検品し、品質は検査している」と説明。「ただ、大企業ほどの品質担保はできていないというのが正直なところ。ご理解いただければ」と話した。

●「声優モデル」の収録ボイスを公開

 Hintのクラウドファンディングでは、声優モデルも用意されていた。野島健児さん、中村繪里子さん、田所あずささんの3人がそれぞれ声で動作ガイド音を収録したものだ(すでに予約は終了)。

 発表会には声優の3人も登壇し、それぞれの声のモデルの電源オンオフやモード切替時の特別ボイスを披露した。

 野島モデルは、アニメ「機動戦士ガンダム」のキャラクターを思わせる“熱血ボイス”だ。相当の声パターンを試した中でも熱血ボイスに収まったという。「野島さんに気だるげな色気のある声を頼んでみたのですが、すごくやる気のないラジオ受信機になってしまいました。いろいろ考えた末に、モビルスーツみたいにするのが面白いということになりました」(吉田さん)

 中村モデルはかわいい系のボイスに。「本人がたくさん番組に出てわちゃわちゃと喋っているので、Hintもわちゃわちゃさせたらファンが混乱するだろうなと」(吉田さん)

 田所モデルは、本人の出身地の方言である茨城弁を全面に押し出した。「いろいろ考えたのですが、これって台数が限定されているじゃないですか。購入された方は田所さんのディープなファンのはず。田所さんの茨城弁のキャラは鉄板で面白いので、かわいい系の声とも迷ったのですが、魔が差しました」(吉田さん)

最終更新:7/21(金) 7:10
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