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Googleの生産性はなぜ高いのか

7/21(金) 11:17配信

ITmedia ビジネスオンライン

※この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。

 当初は検索サイトのイメージが強かったGoogleだが、今ではAI(人工知能)分野などにいち早く進出し、世界のトップ企業の1つとなっている。元Googleの人事担当であり、『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか』(SBクリエイティブ)の著者で日本在住16年のピョートル・フェリークス・グジバチ氏に、日本企業の働き方について話を聞いた。

 Googleという企業に、みなさんはどのようなイメージを持っていますか?検索、最先端の企業、福利厚生がしっかりしている……などでしょうか。

 そのどれもが正解ではあるのですが、実際にGoogleの中で仕事をしていて印象的だったのは、Googleでは、世界より一歩でも速く進んで成果を出さなければいけないという強い使命感です。

 常に「今の10倍の成果を上げよう」「そのためには何をすればいいのか」「世界でより速く動くにはどうしたらよいか」と考えているのです。

 例えば、Googleは1997年にラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの2人が「Google.com」をドメインとして登録した時、そのブランド価値は0円だったかもしれません。しかし、2016年にはおよそ14兆5000億円を超える価値になっています。

 また、年間の生産性を金額に換算すると1259万円です。同じ計算で日本の大手企業と比べると、パナソニックは300万円、日立製作所は311万円ですので、4倍近い生産性があります。こうした差は、仕事のしかたや組織の在り方などから生まれるものだと思います。

 さて、この記事を読んだみなさんの中には、「なかなか仕事が終わらない」「新しい仕事をしたいのに、どうでもよい仕事に追われて何もできない」と問題を抱えている人もいるでしょう。

 誤解してほしくないのは、1分1秒を削っても、あまり意味はありません。やみくもに考えなしに動いても、アウトプットの質が落ちるだけです。

 より速く仕事を終わらせ、しかも結果も高める。結局、生産性が高まらなければ意味がありません。

●日本企業は、生産性が低いのか

 僕は仕事がら、日本企業を訪問することが多いのですが、そこで気付くことがあります。これは、「なぜ、みなさんの仕事が終わらないのか」にも通じるので、先にいくつか挙げておきます。

 理由は大きく3つあります。

1、持ち帰って検討しすぎる

 日本に来てビックリしたことの1つは、多くの人がその場で済ませられることを、「では、持ち帰って検討します」「準備して出直します」と言って先延ばしにすることです。

 僕は大抵の作業は外出先でもできるようにしているので、できるだけその場で終わらせるようにしています。小さくても何か1つのことが終わると、もうその仕事のことは頭から消え、次の仕事に気持ちを切り替えることができます。

 仕事を「持ち帰る」と、いつまでたっても終わりません。どうしてもその場で解決できずに、持ち帰らなければいけないときも、「今、この場で解決できること」までは終わらせて、「今、返事ができること」はその場で返事をしておきます。そうすれば、持ち帰る仕事も少なくなり、会社に戻ってからもすぐに処理することができます。

 さまざまな部署や会社の人たちが集まって、チームを組んで仕事をすることも多くなりましたが、そこでみんなが「持ち帰って検討」してしまうと、仕事は遅々として進みません。

2、分析・検討しすぎる

 日本の企業で研修をしていて思うのは、「検討しすぎる」ということです。

 筋道を立てて考えることは確かに大事です。でも、その場の「直感」にも、実は大きな意味があります。「直感」はただの思い付きではありません。今まで積み重ねてきた経験からもたらされるものです。

 あらゆることを「検討」してから何かを始めるのではなく、まず「直感」に従ってみる。論理的に考えた結論が「直感」に反するときは、「直感」を信じてみる。その方がいい結果が得られることも多いはずです。

 日本では、マッキンゼー流のロジカル・シンキングがはやっていて、ロジックツリーやフレームワークを使って考えを深めていく人もいますが、そうやって分析することと、新しいアイデアを発想することは、実はまったく別物です。

 ロジカル・シンキングというのは、考えをまとめて誰かに伝える、つまり「アカウンタビリティ(説明責任)」を果たすときは強力な武器となりますが、クリエイティブに考えるためのツールではありません。

3、打ち合わせや会議といった多くのコミュニケーションが、コストやムダにしかならない

 みなさんが仕事の中で最もストレスを感じるのは、「コミュニケーションコスト」ではないでしょうか?

 「意味不明の会議が多すぎる」「何度も同じ説明をしなければならない」「相談したいのに上司がいつもいない」、あるいは、「部下の細かいミスが気になり、自分の仕事が終わらない」――。

 日本の企業で思うのは、コミュニケーションツールがうまく使えていないな、ということです。

 直接会った方が早いのに、メールで何度もやりとりをしていたり、「モノ」がないまま言葉だけで議論するためイメージが食い違ったり、頻繁にやり直しが発生していたり……。

 ワードの画面をプロジェクタに映して、みんなの前で文書を作ってしまえば合意もとりやすいですし、言葉よりも「プロトタイプ」(試作物)を見ながら意見交換した方が、イメージがわきやすく、より建設的に物事を進められます。

 そして最後に、この本で一番みなさんにお伝えしたいのは、自分の仕事を壊すということです。自分の仕事を自分でしなくて済むようにすることこそ、究極的な「効率化」であり、今後生き残るために必要なことです。

 IT(情報技術)やAI(人工知能)に仕事が奪われると恐れる人がいます。蒸気機関による機械化(第一次産業革命)、電力革命と大量生産(第二次)、コンピュータとインターネットによる情報革命(第三次)に続く第四次産業革命で、人間がすべき仕事の内容はどんどん変わっていきます。僕自身も、5年後にどんな仕事をしているか、まったく想像がつきません。でも、それを怖がっているわけではありません。むしろワクワクしています。

 こんな時代には、「自分の仕事がなくなる」ことを恐れるのではなく、むしろ「どうやったら自分の仕事をITに置き換えられるか」「どうすればもっと自動化、省力化できるか」を考えてほしいのです。

 自動車の「自動運転」が典型的ですが、人がやっていた仕事を機械で置き換えた人が勝つ状況になっています。空いた時間に自分の車を使ってタクシー業務ができるライドシェアの「Uber(ウーバー)」も、そのうち自動運転が主流になり、ドライバー自体が不要になるかもしれません。

 動画ストリーミングサービスの「Netflix(ネットフリックス)」も、かつては宅配レンタルDVD業者にすぎませんでした。DVDという物理的なモノをなくし、人手を介した宅配サービスをネットに置き換えたことで、一気に自動化が進みました。

 ほかにも、メディアを持たない世界最大のメディアカンパニー「Facebook」や、ベッドを1台も持たない世界最大のホテル事業者「Airbnb(エアビーエヌビー)」など、業界を破壊するような物事が次々と起こっています。

 同じことは、みなさん一人一人の仕事でも実現できます。積極的に自分の仕事をITに置き換えていけば、そこであなたは仕事を奪われる側ではなく、次の形を創造する側に立てるかもしれません。そこまでいかなくても、空いた時間で別のことをして、より成果を上げることができるでしょう。

 毎年同じことをしているだけだと、その仕事はきっと機械に取って代わられてしまうはずです。今みなさんに求められているのは、その時間で新しいことを始めることです。

 時代の変化より速く動けたら、事前に何が起こるのかが分かるようになったり、時代を先読みして、自分が変化を起こしていけるようになったりするかもしれません。自分が変化に踊らされるのではなく、自分が変化をコントロールするようなイメージです。

 そのためには、去年の1割増、2割増を目指すのではなく、いきなり10倍の飛躍を目指すGoogleの「10X」の考え方も、みなさんのヒントになるでしょう。10倍の成果を出そうと思ったら、従来の延長線上の発想ではとても間に合わないので、仕事の在り方そのものを根本から考え直さないといけないからです。

 世の中には、効率化やスピード化に関するさまざまな「ライフハック」が出回っています。けれども、例えばキーボードのショートカットをたくさん覚えて1分1秒短縮したからといって、劇的な変化は起きません。

 そもそもなぜ効率化するかといえば、仕事を1時間早く終わらせることがゴールではありません。時間を効率的に使うことで、より大きな仕事をし、より多くの人の役に立ち、その分利益も上げること。これが本来の目的です。そういう視点から考えれば、「1分1秒短縮する」ことの無意味さを感じてもらえるのではないでしょうか?

(ピョートル・フェリークス・グジバチ)

(ITmedia エグゼクティブ)