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AI企業を買収したホテルチェーンから見る「ホテルビジネス」のいま

7/21(金) 11:25配信

ITmedia ビジネスオンライン

 近年、インターネットの旅行サイトなどが広く普及するなか、旅行がどんどん手軽になっている。

【ホテル業界の切り札】

 日本でも、外国人旅行客をよく見かけるようになったのではないだろうか。実際のところ、訪日外国人の数は増加しており、2017年4月には単月で過去最高となる、257万9000人が日本を訪れたという。

 それでも、世界的にみると日本は、外国人訪問者数で世界1位のフランスに並ぶどころか、トップ10にも入っていないのが現状だ。

 とはいえ、日本は2020年に東京オリンピックの開催を控えており、観光ビジネスは今後さらに活性化すると見込まれている。そこで気になるのは、ホテル業界の動向だ。全世界で、旅行客が宿泊施設に支払う金額は、年間7000億ドルともいわれ、巨大なビジネスになっている。

 その魅力的なビジネスを狙って、最近では「民泊」が勢いを増している。背景には、宿泊料金の安さだけではなく、旅行客がユニークな体験を望んでいることがある。

 そのため、旅行客が多く利用する宿泊施設としては、まだまだホテルが圧倒的なシェアを占めているが、民泊などの登場によって、ホテル業界はAI導入など改革を迫られている。インターネットと民泊の時代に、ホテル業界で厳しい競争に勝ち抜くために必要な戦略とは何かを探ってみたい。

●ラグジュアリーホテルが拡大する3つの背景

 宿泊施設の競争が激化する中、積極的に改革に乗り出している興味深いホテルチェーンがある。世界第6位の規模を誇るアコーホテルズだ。ノボテル、メルキュール、ソフィテル、イビスなど20ブランド以上を展開する一大ホテルグループだ。

 フランスに本社を構えるアコーホテルズの歴史は、1967年にさかのぼる。フランス北部の都市リールに、最初のノボテルホテルをオープンさせたのが始まりで、現在では世界95カ国で4100以上ものホテルを展開している。2017年に創業50周年を迎えるアコーズホテルズは、前年に次々と大型買収を行い、大胆な改革を進めてきた。

 いまホテル業界でカギを握っていると言われるのが、「ラグジュアリーホテル」の強化だ。ラグジュアリーホテルは、成長が見込める市場として期待されているためだ。アコーホテルズも、2016年にラッフルズ、フェアモント、スイステルホテルを保有するFRHIホールディングス社を買収し、このセグメントを強化している。ラグジュアリーホテルだけでみると、世界第2位の規模にまで拡大している。

 背景には、3つのトレンドが影響している。1つ目は、アジア諸国の富裕層が旅行に積極的になっていること。2つ目に、ベビーブーム世代が、時間に余裕ができ、宿泊場所としてラグジュアリーホテルを選ぶようになっていること。

 3つ目は、ジェネレーションY(1978年から1990年代半ば生まれ)や、ジェネレーションZ(1990年代後半以降生まれ)の世代が、ラグジュアリーホテルに興味を持っていることだ。彼らは、ネットや携帯など、デジタル環境の中で育った世代で、高級なブランド品などを買うことよりも、ラグジュアリーな「体験」に価値を見出している。そのため、この層の取り込みはホテル業界にとって、非常に重要なポイントとなっている。

 ラグジュアリーホテル以外にも、ホテル業界で注目されているカテゴリーがある。ブティックホテルの進化系として登場した、若い世代を狙った新しいカテゴリーの「ライフスタイル・ホテル」だ。

 近年、ライフスタイル・ホテルは、ニューヨークやロサンゼルス、マイアミ、ロンドンにぞくぞくとオープンしており、流行の先端を行っている。スタイリッシュで斬新な(奇抜な)建築デザインとIT環境を備えていて、ロビーはリビングのように、他のゲストやローカルたちと交流しやすいようなオープンな造りになっているのが特徴だ。

 トレンディで個性的なバーを備えていたり、フードやドリンクもヘルシーさを意識したり趣向を凝らしている。またアートやファッション、音楽や映画などのさまざまなイベントを開催するなど、単に寝るだけの場所というホテルの位置付けから、がらりと変化してきている。

●ホテル業界の切り札「バケーションレンタル」

 アコーホテルズは、すでにこうしたライフスタイル・ホテルを各地で展開しているが、2016年に「JO&JOE」という新しいブランドを立ち上げた。また、斬新なデザインが特徴の「25hours Hotels」と提携を結び、宿泊者のライフスタイルやテイストに合わせたサービスを提供している。

 そして、究極のラグジュアリーを追求する「バケーションレンタル」というジャンルもホテル業界の切り札となっている。バケーションレンタルを簡単に説明すると、貸別荘にコンシェルジュサービスが付いた宿泊スタイルのことだ。

 アコーホテルズは、人気急上昇中のバケーションレンタルで世界的シェアを獲得するため、米英などの企業の株式を取得するなど積極的に動いている。ただバケーションレンタルは、まだ展開している都市が限られていることもあり、今後さらに拡大する余地が十分にある。個人が提供する民泊とは違い、専任のスタッフが管理しているので、サービスを重視する宿泊客には新たな選択肢として成長が期待される。

 このように、さまざまなスタイルの宿泊施設が増えるなか、ホテル業界でいま改めて必要とされているのが、顧客の満足度をいかに高めることができるか、だ。その方法は企業によって異なるが、アコーホテルズはコンシェルジュサービスの大手ブランド、「John Paul」を買収して勝負に出ている。

 John Paulは、コンシェルジュ業界では初となるAI(人工知能)を導入したサービスを提供していることで知られている。その方法とは、顧客のデータベースを基に、行動プロファイリングを行い、行動のパターンや好みなどからAIを使って分析し、ほぼ正確に顧客の欲求や願望を予測できるという。

 そのシステムを使い、「ロイヤリティプログラム」を構築しているのだが、顧客の求めているものを正確に分析できればそれだけ質の高いサービスを提供することが可能になる。

 また、顧客目線で言えば、タイミングよく自分の好みに近い、より魅力的なホテルの宿泊オプションやサービスを勧められれば、思わずアップグレードをしてしまうだろう。ホテルにとっては、顧客が滞在中に使う金額が増えれば、それだけ大きな利益を得られる。

 ロイヤリティプログラムの会員は、ホテルのオフィシャルサイトからダイレクトにホテル予約をする傾向がある。エクスペディアやプライスラインなどのOTA(オンラインのみで旅行商品を扱う旅行会社)を仲介しないため、ホテルは手数料を支払う必要がなく、より収益性が見込める利点がある。

●ホテル業界、ビジネスモデルを見直す必要

 テクノロジーの進化によって、オンラインのホテル予約サイトでは瞬時に価格やサービスを比較できたり、民泊で宿泊施設の選択肢が広がるなど、旅行客にとって便利な世の中になった。

 ホテル業界は、そのような変化に立ち向かうため、ビジネスモデルを見直す必要が出てきているのである。アコーホテルズのように、ホテルグループ全体で幅広いセレクションを提供したり、AIを使った顧客とよりパーソナルな関係を構築するなど、今後さらなる変革が見られそうだ。利用者としては、素晴らしいことではないだろか。

 ただし、あまりにも頻繁にプロモーションのメールが届くのは、何とかしてもらいたいものだが。

(藤井薫)