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社説[識名トンネル訴訟]違法契約の認定は重い

7/21(金) 7:30配信

沖縄タイムス

 県発注の識名トンネルの建設工事を巡り、国の補助金を不正受給して県に損害を与えたとして、住民が県に対し、不正に関わった当時の知事や県幹部らに損害を賠償するよう求めた訴訟の判決が出た。

 那覇地裁は、損害額約7178万円を、当時の県土木建築部長と県南部土木事務所長の2人に求めるよう県に命じた。前知事や工事を受注した業者らへの請求は退けたが、損害賠償は満額認められており、住民側の勝訴である。

 2006年から09年にかけて国の高率補助で建設された識名トンネルの工事は、工法を変更するなどして費用がかさんだため、県の職員が工期を偽った工事契約書を作成、国から補助金約5億円を不正に受給した。

 トンネルは10年に開通したが、11年に会計検査院の調査で発覚し、県は12年3月に補助金全額と利息の計約5億8千万円を国に返還した。県監査委員は、利息分約7178万円が県の損害と認定し、住民側が当時の関係者に損害の補填(ほてん)を求めて提訴していた。

 裁判だけではない。県監査委員も、虚偽契約による公金支出は違法だと指摘し、県が被った損害の補填について関係者に負担させることを検討するよう県に勧告していた。県議会が設置した調査特別委員会(百条委員会)も、報告書で「談合と指摘されてもやむを得ない著しく不適切な対応」と、県を断じていた。

 裁判でみたび、違法行為が指弾された事実は極めて重い。県は法令順守を組織内で徹底し、再発防止策をとらねばならない。

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 県もこれまで、第三者委員会などで事実の解明に一定程度取り組んだ。法令順守意識の乏しさ、組織的な緩みがあったなどと結論づけたが、虚偽契約の経緯や動機をはじめ、根幹部分については県民が納得できる説明を尽くしてきたとはいえない。

 監査委員の勧告に県は取り合わず、住民が12年12月に提訴すると、「裁判所の判断を踏まえて対応する」などと、説明を避けてきた。

 本来なら住民訴訟がなくとも、県が率先して不正の解明に取り組み、税金を払っている住民の側に立って組織のうみを出し切り、損害を早期に回復するべきであった。

 行政は継続性を重視しなければならないとはいえ、不正の事後対応で、判決を待つという姿勢を続けてきたことは、本来の住民本位の行政とは言いがたい。住民の損失を漫然と放置してきたと指摘されても仕方ない。

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 裁判所が、公共事業の問題で、県職員個人に賠償を負わせたことには異論も出ている。一方、住民から見れば、職員の重過失を認定するなど、公共事業の適切な手続きや執行に裁判所のチェックが機能しており、司法の役割を果たしたといえる。

 公共事業は、国民の税金でまかなわれ、厳格かつ適正に執行されなければならない。だが、厳格・適正さを確保するためのシステムは十分とはいえない。住民の立場から、公共事業の透明性、公正性をどう担保していくかは、行政の大きな課題である。

最終更新:7/21(金) 7:30
沖縄タイムス