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東海地震予知「できない」明記 政府調査部会、報告書案大筋了承

7/22(土) 7:15配信

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS

 南海トラフ沿いで起きる大規模地震の予測可能性を整理していた政府の中央防災会議の調査部会は21日、大規模地震対策特別措置法(大震法)に基づく現行の東海地震の予知体制が前提としている確度の高い地震予測について「(現時点では)できない」と明記した報告書案を大筋で了承した。親会議の「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキンググループ(作業部会)」の会合で報告する。

 現行の東海地震の予知体制が前提にしているのは「2~3時間から2~3日以内に東海地震が起きる可能性がある」と発表する直前予知。直前予知が出されると、首相から警戒宣言が発令され、鉄道を止めたり、店舗や工場、学校などを休業したりする「地震防災応急対策」が強化地域8都県157市町村で一斉に実施される。

 報告書案はこうした直前予知を念頭に「大震法に基づく警戒宣言後に実施される現行の地震防災応急対策が前提としている確度の高い地震の予測はできないのが実情である」と盛り込んだ。現行の東海地震対策が前提としてきた直前予知の可能性が事実上、初めて公的に否定された形だ。

 2016年11月に作業部会に報告した骨子案に肉付けをし、報告書案をとりまとめた。報告書は今後、地震予測についての国の公式見解になる見込み。

 作業部会委員も務める調査部会座長の山岡耕春名古屋大大学院教授は「地震予測は難しいと言い切り、予知ができる、できないという国民の役に立たない議論を脱したことは大きい」と意義を話した。その上で、「地震学者は予測の確度を高める努力をする一方、社会は使えるものから防災に役立てていけばよいという、より建設的な議論ができるようになるのでは」と期待した。



 ■「直前予知」明確否定 現実的対策、議論求める

 2016年9月から会合を重ね、21日に南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性についての報告書案を大筋で了承した中央防災会議の調査部会。中間報告などで示していた「確度の高い地震の予測は難しい」との見解からさらに踏み込み、大規模地震対策特別措置法(大震法)に基づく防災対応の前提となっている「直前予知」の可能性を明確に否定した。委員らは科学の実力に合った現実的な対策に向け、議論の進展を求めた。

 堀高峰委員=海洋研究開発機構(JAMSTEC)地震津波予測研究グループリーダー=は「確度の高いこと(予知)ができないとしっかり書くのが重要だった。だからこそ対策の方も変えなければならない」と指摘。現状の地震予測に不確実性が伴うことも踏まえながら、「さまざまなレベルで普段から何ができるかを考えていくのが大切」と述べた。

 長尾年恭委員=東海大海洋研究所長=は今後、「科学的にどういうことが起こり得るかということと、自分の住んでいる地域にはどういう危険があるかということを理解してもらわなければならない」とした。一方、「確かに現時点で確度の高い予測はできないが、科学としての予知研究の芽を摘んではいけない」とも訴えた。

 報告書案では、地震発生予測の確度を高めていくために、観測体制を強化・充実させていく必要性なども盛り込まれた。ただ、橋本学委員=京都大防災研究所教授=は会合の中で、「今あるDONET(海域観測網)などの性能を評価した上で、次の展開を考えていくべき」と主張。まずは既存技術の十分な検証が不可欠だとくぎを刺した。

静岡新聞社