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“育ての親”へ恩返し忘れないナイスガイ 彼の「素敵な話」を聞けるのはまた来年

7/22(土) 16:45配信

東スポWeb

元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」

【クリス・アーチャー投手(レイズ)】「僕は知っていたよ、自分の境遇が人と違うって」

 2歳で母方の祖父母の養子になったレイズのクリス・アーチャー。自分の生い立ちを公にし、トレーニングや試合のかたわら、境遇の似た子供たちに会いに行ったり、自分が設立した「アーチーウェイ基金」の活動を精力的に行っている。

 インタビューで触れた彼の明るさ、人当たりの良さ、ちゃめっ気、寛容的な話し方、リーダー気質などに単純かもしれないが、「すてき」と素直な言葉が浮かぶ。何度でも話したくなるようなすてきな人だ。

「そもそもね、人にはそれぞれ皆違う生い立ちがあると思うんだ。複雑だったり、人と違ったり、あまり一般的でないものだったりすることもある。僕の生みの親は19歳という若さで僕を産み、まだ子供を育てるだけの責任感がなかった。それで、彼女の両親、僕の祖父母が引き取って育ててくれた。だから僕の(場合)は人と違う境遇ということになるけど、すべてはベストな方向に働いたと思っているよ。だって違う境遇で育っていたら、僕は今ここにいて君と話ができていないから、僕はハッピーだよ」

 自分が養子であることを知ったのはいつだったかと問うと、ニヤッといたずらな顔をし「かなりディープなことに食い込んでくるんだねぇ」と言ったあとで真顔になり「僕はずっと知っていたよ」。なぜなら、彼の父ロンさんも母ドナさんも白人でクリスは黒人とのハーフ。明らかに外見が違うのだ。

「でもさ、物心ついた6~8歳くらいって、肌の色なんて気にしないでしょう? 誰かに言われるまで」

 それを伝えたのは他でもない生みの親、ソンヤさんだったそうだ。

「自分が何歳だったか思い出せないんだけど、一時期、皆同じ家に暮らしていたのもあって生みの母といたんだ。細かいことは覚えてないけど…。彼女が僕の母親なんだって言ったんだ」

 ソンヤさんなりに親子関係を取り戻したい気持ちがあったと思う、としながらも「その瞬間、自分がどう感じたかは幼くて覚えていない」と言うクリス。その後も親子と呼べるほどの関係を築くことはなかった。

「今でもホリデーシーズンになれば彼女にも、彼女の子供2人にも会うけどね。僕の両親は当時も今も2人しかいないんだ。今は2人ともリタイアして、フロリダで僕の向かいの家に住んでいるけど、父も母も一生懸命真面目に仕事をする人たちで、質素で謙虚な生き方をしてきた。僕は彼らから愛と自分のことよりも人を思いやる無私無欲の心を学んだ。僕を迎えてくれたことは無私無欲だと思うから。彼らに少しでも恩返しをすることが今僕のやりたいこと」

 少し複雑になるので先述しなかったが、実はクリスの父ロンさんは、ドナさんの再婚相手であるため、全く血のつながりがない。それにもかかわらず、ロンさんとクリスの間には血のつながった親子以上の絆があり、クリスの行動の全ては“ロンさんを喜ばせたいという動機からくるのだ”とドナさんが話している記事を読んだことがあったので、ぜひともそのことを聞きたかったのだが、残念ながら練習時間が来てしまいタイムアップ――。

 悔しくも球団広報に促されて仕方なく渋々退散しようとしたら、後ろから「また話そう!」とクリスの声が追いかけてきた。東地区のチームに所属する彼がロスに遠征で来るのは年に一度きり。来年また会える機会がやって来るまで、テレビ越しで応援するとしよう。

 ☆クリス・アーチャー 1988年9月26日生まれ。28歳。米ノースカロライナ州ローリー出身。190センチ、86キロ。右投げ右打ち。2006年のドラフトで指名されたインディアンスへ入団。カブスを経て11年1月にレイズへトレード移籍。12年6月20日のナショナルズ戦でメジャーデビュー。13年に9勝をマークし、14、15年と2年連続で2桁勝利。昨季は打線の援護に恵まれず9勝19敗でリーグ最多敗戦投手となったが、リーグ2位タイとなる233奪三振、同2位の奪三振率10・4をマーク。3月に開催された第4回WBCでは米国代表として2次ラウンドまで名を連ね、チームの大会初制覇に貢献した。

最終更新:7/22(土) 16:45
東スポWeb

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