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整備新幹線に暗雲、「フリーゲージトレイン」開発自体が頓挫も

7/22(土) 9:36配信

ニュースイッチ

国交省、走行試験再開を見送り

 軌間可変電車(フリーゲージトレイン、FGT)の実用化に暗雲が垂れ込めている。国土交通省の技術評価委員会は14日、不具合が発生したため約2年半中断している耐久走行試験の今夏再開を見送る方針を示した。FGTによる2025年度の九州新幹線長崎ルート全面開業は事実上困難となり、開業計画の見直しは必至だ。採用計画が白紙となれば、FGTの開発自体も頓挫する可能性が生じる。

 FGTは新幹線と在来線の異なる線路幅を直通できるよう、車輪の左右間隔を変えられる電車。22年の量産先行車投入、25年の実用化を目指していた。

 鉄道・運輸機構が14年に投入した試験車両は、性能確認試験で新幹線区間の時速270キロメートル、在来線区間の同130キロメートルを達成した。

 不具合が発生したのは新幹線と軌間変換、在来線を繰り返して60万キロメートル走行する“3モード耐久走行試験”を始めた直後だ。走行距離約3万キロメートルで車軸とすべり軸受の接触部に摩耗が見つかった。

 約2年の休止を経て対策を講じ、16年12月から17年3月まで約3万キロメートルの検証走行試験を実施。その結果を見て技術評価委は「ただちに耐久走行試験に入れない」と判断した。

 車軸の摩耗量は対策前の約100分の1に抑制したが、目標の走行可能距離60万キロメートルに一部が達しなかった。改良と検証に「年単位の時間がかかる」(国交省)とし、メッキの厚膜化や、すべり軸受の加工精度向上などの追加対策が必要だ。

 一方、FGT導入の壁だった経済性は改善した。これまで新幹線の3・1倍とされてきたFGTの製造・保守コストは、1・9倍に抑えられる可能性がでてきた。

 コスト面が良化したものの開業時期は見通せない状況。九州新幹線の営業主体JR九州は「条件がそろった。早急に事業性を算定して見解を示したい」と話す。25日の与党整備新幹線プロジェクトチーム(PT)会合で意見を表明する。

 今回の結果について国交省は「相当程度の改善効果が得られた」との見解を示す。しかし、あらためてFGTの技術的なハードルが高いことも明らかになった。

 FGTはスペインで実用化済みだが、軌間の狭い日本では、より精密な技術が必要になる。97年から現在までに約500億円の開発費が投じられた。

 FGTは乗り換えなしに目的地に到達できる利便性が特徴だ。山形・秋田新幹線のように在来線のレール幅を変える“ミニ新幹線”も同様の利便性を実現するが“整備新幹線”の一つ九州新幹線とは性質が異なる。整備新幹線は、国と地元が建設費を負担し、JRは使用料を払う枠組みだ。

 整備新幹線の設計速度は時速260キロメートル。FGTの不具合は高速走行に起因するものだが、山陽新幹線乗り入れも見据え、速度の見直しなどは俎上(そじょう)に上がらない。長崎新幹線ではJR九州がFGTを採用できないという方針を固めている。全線フル規格の流れがが強まるだろう。FGTの今後は与党PTの政治判断に委ねられている。

最終更新:7/22(土) 9:36
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