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車いすランナー鈴木朋樹、進み始めた「東京への道」 ~世界パラ陸上観戦記3~

7/22(土) 15:24配信

カンパラプレス

「これまでは口に出すことはできなかったけれど、今大会で『東京でメダルを目指す』というふうに言えるようになると思います」
 彼のその言葉を聞いて、私は改めて心の底から「ロンドンに来て良かった」と思った――。
「WORLD Para Athletics CHAMPIONSHIPS LONDON 2017」(世界パラ陸上競技選手権大会)競技8日目、800m決勝(T54)が行なわれ、鈴木朋樹(トヨタ自動車)は5位となった。「目標にしていた表彰台に上がることができなかった悔しさは大きい」と開口一番にそう言って、力不足を痛感したことへの反省を述べた鈴木だが、彼がこのロンドンの地で掴んだものもまた大きい。
「東京へのスタート」
 それは、これまで切ることができなかったものだった――。

【写真】パラアスリートたち

リオ後、「東京を目指す」とは言えなかった

 昨年9月に行なわれたリオデジャネイロパラリンピック。そこに鈴木の姿はなかった。選考期間の中で出場条件を満たすだけの成績を残すことができなかったのだ。「成長著しい彼は、きっとリオに出場するはず」と考え「世界最高峰の舞台」に立つ姿が見られることを非常に楽しみにしていた選手の一人だっただけに、私は残念でならなかった。

 だからこそ、開幕前からあることを心に決めていた。リオから帰国後、真っ先に鈴木を取材することだった。パラリンピック期間中、充実した取材の毎日を送れば送るほど、その気持ちは日に日に高まっていった。リオに出場できなかったことをどう受け止め、そしてどんなふうに東京に向けてのスタートを切ろうとしているのかを聞きたかったのだ。

 帰国後、彼の練習拠点を訪れ、インタビューをした。すると、彼はこう言った。
「リオに出ることができなかったことは残念でしたが、それでも自分がやってきたことに悔いはありません。やるべきことはすべてやってきた。それで出ることができなかったのなら仕方ないなと。ただ、リオに出られなかった自分には今、『東京を目指します』ということは言えないと思っています」
 予想以上に、鈴木はリオに出場することのできなかった自分に厳しかった。

 では、果たしていつ東京を目指すことを口に出せるようになるのか。その時の鈴木には、まだ見えていなかったように思えた。

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最終更新:7/24(月) 0:18
カンパラプレス