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傷深くとも地道に歩む 「一人一人を大切に」これからも 入倉かおる園長

7/22(土) 12:42配信

カナロコ by 神奈川新聞

 県立障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)で入所者19人が刺殺された事件は、26日で発生から1年を迎える。障害者の尊厳を踏みにじり、国内外を震撼(しんかん)させた凶行は、当事者に何をもたらし、社会にどんな波紋を広げたのか。入倉かおる園長(60)は「今も客観的な立場ではない場所にいる自分に整理がつかない」と吐露。植松聖被告(27)への思いは「裁判もあり、私から伝えるのは難しい」としながらも、想像を絶する苦悩に向き合い続けた心境を打ち明けた。 

 身近な人が何人も殺害され、私たちにとって戦争に匹敵するほど心に深い傷を負う出来事でした。

 夜中に目が覚めると何度も思い出し、頭の中をぐるぐる回ってしまう。これはうそだった、昨日までのことは夢だった、と思いたいことも何度もありました。でも、その一瞬だけで、まずは自分が厳しい現実を受け止めなければいけないと言い聞かせてきました。

 あの時のことは、まるで昨日のことのように思い出します。夜明け前に電話を受けて車に飛び乗り、救護テントでの消防隊とのやりとりも、電話でご家族が話された不安の声も全部覚えています。絵や写真のように、それぞれの場面が鮮明に残っていますが、とても言葉にできる状況ではありませんでした。

 19人が亡くなったことは本当に大変なことで残念でなりません。さらに言うと、命を落とされた方がいると初めて知った時のショックと驚きが大きかったことを覚えています。守ってあげられなかったと、おわびしたい思いがずっとあります。体育館での支援に追われ、すべての方の葬儀に参列できず、最期のお別れができなかったことも本当に申し訳なく、心残りです。

 「障害者は役に立たない」といった言葉には、とても深く傷ついています。そういう言葉を発した元職員が事件を起こし、ご家族もどれほど不安になったかと思いますが、決してあのような言葉があちこちに落ちているわけではありません。かけがえのない一人の命として丁寧に支援していることを本人にも家族にも分かってもらいたい。発言を否定することは言うまでもないので、あえて反応するより、日々の地道な仕事に打ち込むことで「障害がある、ないではなく、一人一人を大切にしていくことはこういうこと」と示していきたいと思います。

 事件が施設の批判につながっていることも本当に残念です。個別支援をテーマに一人一人の気持ちに寄り添い、ご希望に沿って地域移行も展開しています。ただ、今の暮らしが落ち着かない状況で「先のことを考えましょう」と言われても難しいのです。施設での安心した暮らしがあるからこそ、地域に移れるのだと思います。

 これまで大勢の方に心配いただきました。お悔やみやお見舞い、励ましは本当にありがたかった。献花台には海外からも花や手紙が届き、今も毎月26日の悼む時間に飾って大切にさせてもらっています。事件を乗り越えるのは並大抵のことではなく、何年もかかると思いますが、私たちにできるのは目の前の人の支援を地道に続けていくこと。それに尽きると思います。事件の前日までと同じように。

 いりくら・かおる 1957年生まれ。社会福祉士。94年にかながわ共同会に入職。2009年に津久井やまゆり園配属となり、16年4月から園長を務める。