ここから本文です

差別へ不安、敏感に反応 不二越会長発言から2週間、全国で波紋

7/23(日) 0:23配信

北日本新聞

 「富山で生まれて地方の大学に行ったとしても、私は極力採らない」「偏見かもしれないが、(富山の人は)閉鎖的な考えが強いです」

 総合機械メーカーの不二越(富山市不二越本町1丁目)の本間博夫会長(71)が5日の会見で展開した持論が、2週間以上たっても波紋を広げている。

■コメント5000件超
 北日本新聞が13日に発言を報じると、インターネットサイト「ヤフーニュース」がトップニュースに本紙の記事を掲載。5千件を超えるコメントが寄せられ、「言っている本人が最も閉鎖的」という書き込みには、2万6千を超える人が「そう思う」にクリックした。

 北日本新聞社のニュースサイト「webun」のアクセス数も急上昇。本社には電話やメール、手紙で批判や意見が続々と寄せられた。県内の政治、経済、教育関係者からも非難が相次いだ。石井隆一知事は「『閉鎖的』というのは事実と全く異なる」と強調。厚生労働省も「公正な採用選考の観点から見て不適切」と警告した。

 同社経営企画部は「分け隔てなく、人物本位で採用している」との方針を公表して火消しに努めているが、テレビのニュースや情報番組、週刊誌でも発言が取り上げられ、尾を引いている。

■「ショックだ」
 本間氏の発言の何が「炎上現象」をもたらしたのか。

 佐藤裕富山大人文学部教授(社会学)は「富山を代表する企業のトップが県人を『採らない』と発言したことが衝撃的であり、多くの県民の怒りを買った」とみる。

 不二越は1928(昭和3)年、故井村荒喜氏が機械工具の国産化を目指して創業。県内経済をけん引し、不二越工業高校や不二越病院(現県立中央病院)を設立するなど地域社会にも貢献してきた。富山市に住む不二越OBの70代男性は「会社は先人が大変な思いをしながら地域と共に成長してきた。ショックだ」と声を落とす。会社を担っていく若手や関連企業への影響を心配し、「若い人が希望する会社でなくなってしまう。会長はきちんと謝罪してほしい」と訴える。

 「富山の人は閉鎖的」という発言について、佐藤教授は東京出身の本間氏が社内の人間関係で壁を感じた経験があって出た言葉ではないかと推測。その上で「もし壁を感じた経験があるなら、新たな壁をつくるのではなく、取り払うべき。『グローバルな人材を求め、出身にこだわらず採用する』と言うにとどめればよかった」とした。

■偏見と闘う必要
 「ヤフーニュース」に専門家の立場でコメントした新潟青陵大の碓井真史教授(社会心理学)は「あるグループに属しているだけでその人に対して持つマイナスのイメージを偏見と言う。今回はその典型的な例」と言う。

 ネット上で膨大なコメントが寄せられた背景について「多くの人が社会に抱いている不安や不信があるのでは」と分析。採用の場に偏見や差別があるとは誰も言わない。ただ、「本当はあるかもしれない」と心の中で思っていた人々が、今回の会社トップの発言に触れ「ほらみたことか」と敏感に反応したという見立てだ。碓井教授は「人は経験や知識があったとしても偏見から自由にはなれない。だからこそ、そのことを自覚し、偏見と闘っていく必要がある」と指摘した。

北日本新聞社

最終更新:7/23(日) 18:30
北日本新聞