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辻沙絵、激走の末の銅メダル! ~世界パラ陸上観戦記5~

7/24(月) 17:01配信

カンパラプレス

 14日に開幕した「WORLD Para Athletics CHAMPIONSHIPS LONDON 2017」(世界パラ陸上競技選手権大会)」の最終日(23日)、400m(T47)決勝が行なわれ、辻沙絵(日体大)が銅メダルを獲得した。最後の100mで繰り広げられた米国選手とのデッドヒートを制し、3着でゴールした辻は、ぐったりとうなだれるように上半身を折り曲げた。それが何を意味していたのか、後にミックスゾーンで知った私は、ガッツポーズが出ると思っていた自分の浅はかさを思い知らされた気がした――。

【写真】パラアスリートたち

400mへ、期待がふくらんだ200mの走り

 現地時間午前11時半、辻はさっそうとロンドンスタジアムのトラックに現れた。スキップをするように軽快な足取りで、8レーンに向かっていく辻の姿はひと言で言って「かっこよかった」。しかし聞けば、招集所では緊張で監督の胸の中で涙が出たという。それでもトラックに一歩入った時には、もう辻の気持ちは揺らいではいなかった。
「やるしかない」
 それだけだった。

 8レーンに着くと、辻はグルリと首を回し、太腿を叩いた。トラックの向こう側では、走り幅跳びが行なわれており、イギリスの選手が優勝したことに大歓声と拍手が沸き起こっていた。
「この歓声を、辻はどんなふうに聞いているのだろうか……。それとも、集中していて聞こえていないのだろうか……」
 そんなことを思いながら、私は記者席で食い入るようにして、彼女の姿を見つめていた。

 私が彼女の走る姿を見るのは、実は昨年のリオデジャネイロパラリンピック以来だった。今シーズン、辻は多忙を極めたオフの日々が影響したのか、自らも「練習不足」と語り、ケガでスタートが出遅れた。そのため、6月の日本選手権が唯一の出場となったが、私は他競技の取材で日本を離れていて見ることができなかったのだ。

 そのため、彼女がこのロンドンでどんな走りをするのかは、まったく想像がつかなかった。もちろん、楽しみではあったが、正直に言えば、不思議と怖さのようなものもあったように思う。ケガの影響がどれほどなのか、どこまで調子を上げてくることができているのか、世界のトップランナーたちの中でどんなレースをするのか……何もかもが予測できなかった。

 しかし、そんな不思議な怖さに似た感情は、競技2日目にして吹き飛んでいた。その日行なわれた200m決勝で、彼女はシーズンベストを出した。タイム以上に注目したのは、彼女の走り自体にあった。予選よりもはるかに体が動いており、特に前半はストライドが伸び、ダイナミックさがうかがえた。レース後、本人に確認すると、やはりストライドを広めにとる走りを意識していたのだという。その走りを見て、私は400mに期待が膨らんだ。

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最終更新:7/24(月) 17:01
カンパラプレス